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今ごろになって異世界に転生した話  作者: 大沙かんな
#2-6 孤児院をもっと改善しよう

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65.グループの新生

 お昼まで子供たちと遊んだり、一緒に畑仕事をしたりした後、俺たちは孤児院を出て探索者協会へと向かった。


 受付嬢のミハルさんは二日か三日待つように言っていたので、昇格試験の話をするのは今日ではなく、明日の夕方かそれ以降になる。今日は直接その話をするのではなく、グループ名をつけるためだ。


 俺たちは探索者協会に到着すると二階の待合に陣取り、グループ名を決める話し合いを始めた。


「で、グループ名はどうする?」


 俺が切り出すと、サキとハヤトがさっそくアイデアを出してきた。


「タカシがいるんだし、やっぱり賢者って言葉は入れたいわね。」

「盗賊狩りも入れたいな‥…そうだ、二つ合わせて『賢者狩り』っていうのはどうだ?」

「なんだか俺が狩られるみたいな名前なんだけど……。」


「私とマヤが奴隷で、ハヤトとサキは町人、主様が賢者で、ウテナが神官なので、それぞれの一文字目を組み合わせてみるのはどう?」

「組み合わせると、『超ド真剣』?」


「シロ(迷子)はどこ行ったんだよ!」

「タカシ様、それでは『超真剣メイド』ではどうですか?」


「それなら『超メイド神拳』の方が良いんじゃないか?」

「私は『メイド長検診』で。」


 駄目だこいつら……名前を付けるセンスが全く無いぞ。よし、ここはシロに聞いてみよう。


「シロは何がいい?」

「おにく!」

「……うん、後でお肉、食べようね。」


 シロはご機嫌になったが、俺たちの問題は何も解決していない。



 いや、待てよ。


 賢者狩り、超真剣メイド、超メイド神拳、メイド長検診、おにく……。


 このままだと、『おにく』が一番ましな名前ってことにならないか?


 このままでは(まず)いぞ。何か良い対案を出さなくては。


 なんというか、こう、正義の味方みたいな感じで、白はシロとかぶるからなぁ、そうだ、光がいい。例えば希望の光みたいな。


 いや、それよりも、子供の味方みたいな、優しい名前が良いかもしれない。たとえば、そうだな……タンポポ組みたいな? 合わせると光のタンポポ? いや、そうじゃない、この方向性はちょっと違う。


 光そのものよりも、輝きにしたらどうだろうか。輝きのタンポポ、いや違う、タンポポから離れなくては。


 光から離れて、愛とか夢とかも良いかもな……。


 ……………………。


 …………。


「それじゃ、それで決まりだな。」

「タカシもそれで良いわよね?」


 ん? 何? ちょっと考え込んでいて、何も聞いていなかったぞ?


「主様、大丈夫? ちゃんと聞いていた?」

「いや、ごめん、ホムラ。完全に聞き逃してた。」


「グループの名前の話よ? 大事な話なんだから、真面目にやってよね、リーダーでしょ?」

「ああ、サキ、ほんとごめん、で、どうなったの?」


「賛成多数で『地獄の賢者』に決まったぞ。俺は『暗黒の一撃』が良いかと思ったんだけどな。」

「え? 『地獄の賢者』だって? もっと他に良いのが……。」


「他にあるならさっさと出せよ。一応、聞いてやるから。」


 他? 他と言えば、光の……いや、違った、たしか『愛』だ。


「……愛の……タンポポ?」


「……却下で。」

「無いわね。」

「あり得ない。主様が言うと、なんかえっちな響きに聞こえるわ……。」


 ウテナさん、肩をぽんぽんするのやめてください……俺もさすがにこれは無いと思ってるから。


 こうして俺たちのグループ名は『地獄の賢者』に決まり、探索者協会に正式に届けられることになったのだ。


 この名前には色々と思うことはあるけど、『愛のタンポポ』にならなかっただけ、マシだと思うことにしよう。



 受付でグループ名の届け出を行い、シロのおやつのお肉を焼くために訓練場に行ってみると、そこには実地研修で一緒だったダイキがいた。


 なんだか一人でポツンと寂しそうにしているが、何かあったのだろうか。


「お、ダイキじゃないか、元気無さそうだけど、どうしたんだ?」

「一緒にグループ組む子たちに振られでもしたの?」

「ああ、賢者たちか。ああ、まあその通りなんだが……。」


 ダイキはたしか、先に講習に合格した仲間たちのグループがあって、そこに合流するってことになっていたんだよな。


「俺が合流するはずだったグループな、俺がいない間に可愛い女の子のグループと合流して八人になっててさ、俺が入る余地が無くなってたんだわ。」


 ああ、そういえば講習で習ったぞ。探索者のグループは八人が上限で、それを越えたら正式なグループとしては組めないとかなんとか、そんな話だったはずだ。


「……ってことは、グループなしのソロになっちゃったの?」

「まあ、そういうこった。で、話はそれだけじゃなくてだな……」


 ダイキが続きを話そうとしたところで、もう一人、乱入者が現れた。


 あらら、今度はチヅルじゃないか。彼女もまた、ダイキと同じように暗い顔をして、まったく元気がない。


「チヅルじゃないの、貴女も元気ないわね。もしかしたら、組む予定だったグループからはじき出されでもしたの?」

「なんだ、サキたちか。そうよ、あの娘たち私をほったらかしにして、男の子たちのグループと合流して八人になっててさ、私はお払い箱になったわよ。」


 おいおい、どっかで聞いた話どころか、たった今、似たような話を聞いたところだけど……。


「もしかして、お前らが合流しようとしていたグループ同士が合併したとか?」

「ああ、そういうことだ。」

「まあね、それだけだったら良かったんだけどね。いや良くないか、でも結果としては良いのかも知れないけど。」


 直接聞いてみると、やっぱり二つの話は同じものだったみたいだ。


 それはそれとして、チヅルが何を言っているのか良く分からない。いったい何が起こったんだ?


「俺たちを置いて合併したグループな、さっき掲示板を見たら、盗賊に狩られて全滅したそうだわ。」

「私たちも合流してたら、一緒にやられてたのか、それとも助かったのか。ちょっと何とも言えなくてね。」


 うわあ、これはちょっと言葉に出来ないぞ……。


 あれか、俺たちが狩った盗賊ども、その犠牲者は新米探索者ってことだったけど、それがこの二人の仲間だったってことか。



「お前らが仇敵(かたき)を討ってくれたんだってな。礼を言っておく、ありがとう。」

「そうね、私からも。ありがとね。」


 かなりボソボソした声で二人はお礼を言ってくれたが、やっぱりどうにも声に力が無い。


「ねえ、二人とも。この後どうするの? どこか入るグループはある? それとも探索者は諦めるの?」


 サキが二人に投げかけた言葉は、俺自身が言いたかったことでもあった。


 この二人、親しい友達の死ってことだけじゃなくて、自分も死ぬところだったって話でもある。


 そしてそこから逃れた罪悪感みたいなもの、助けられなかった後悔、今はいろんな感情がぐちゃぐちゃになっていて、誰かの手助けが必要なんじゃなかろうか。


 ただなぁ、うちのグループはウテナが入って、今は七人になっているんだよなぁ。


「ん~それなんだが、もしも良かったら、賢者の所に入れてもらえないか?」

「一度断っといてなんだけど、私も入れてもらいたいかな。」


「実はあれから一人増えて七人になっててさ、八人を超えるから二人とも入るのは無理なんだよね。」

「そうか……、ならチヅルだけでも頼めないか? 賢者のところは女が多いし、問題も起こりにくいだろ?」


「チヅル一人だと、あれだ。料理監督のダイキがいないと、死人が出る。」

「ああ、それがあったか。」

「えええ~! さすがに毒は作らないし、マミコさんだって何ともなかったよ!」


 いや、あれは間違いなく毒だったぞ?


「グループを二つに割るか、それとも特例で九人を認めてもらうか、どっちかしかないだろ? ちょっと受付で聞いてみようぜ。」



 ハヤトに促されてみんなで二階に上がると、ちょうどミハルさんの受付が空いていた。


「あら、みなさん、さっそくグループ名の変更ですか?」

「いや、そうじゃなくて……。」


 さっき『地獄の賢者』っていう名前を登録したとき、あんまり酷い名前だからと変更をお勧めされていたのだが、今回の要件はそっちじゃない。


 俺たちはダイキやチヅルの事情を説明して、なんとか特例が認められないかと交渉してみたのだが、受付のミハルさんの返事はかんばしいものではなかった。


「八人が上限というのは本部で決められていることなので、支部で勝手に特例を認めることは出来ないんですよ。」


 ミハルさんによれば、その昔、五十人とか、百人とか、大規模なグループを組んで、数人のグループ幹部が働かずに収入を得る、というようなヤクザ組織を作る者たちが多発したそうだ。


 それで九人以上の大人数グループは何があっても認めない、という絶対的な規則が生まれたらしい。


「二つのグループで連携する、つまり同盟(アライ)を組むことは出来るのですが、この支部では認められていません。ですからグループは二つにして、別行動をとるしかないですね。」

「えええ? 連携もダメなの?」


「はい、駄目です。こちらも同盟(アライ)を利用して、ヤクザ組織を作る者たちが多数いたので、この支部では禁止されています。例外はありません。」


 現在、町を牛耳っているヤクザ組の過半数が、元は探索者グループの同盟(アライ)が起源になっているそうだ。


 それでも協会に内緒で連携できなくはないだろうけど、バレたら罰金や降格、除名などの罰則もあるらしい。


 俺の眷属集団のゴミ一族だってかなり怪しいわけだし、ここであまり(ねば)るわけにもいかないかな。


 残念ながらダイキとチヅルには、スザクたちのグループに入れるように、紹介状を書いてやるぐらいしか、俺にできることはなさそうだ。



 俺たちが諦めて受付を離れようとしたとき、ゲンコツ支部長が階段を下りてきた。


「ああ? なんだ、『地獄の賢者』なんてグループ名をつけたバカどもじゃないか、いったいどうした?」


 丁度いいので、グループが九人になる問題について、支部長に聞いてみる。


「ああ、良いぞ。」


 え? いいの?


「支部長! さすがにそれは通りませんよ!」


 本部が決めた絶対規則を支部長が勝手に変更できないと、ミハルさんが抗議の声を上げる。


「こいつらの所には、チビが一人いるだろ? 誰がどう見ても一人前には見えないだろう、良くて半人前だ。つまり八人半にしかならんから、九人以上にはならないぞ。」

「なんて、こじつけを……。」


「こじつけって言うかだな、このチビを一人前の探索者扱いしていることの方が例外だ。他の支部や本部だと、チビは探索者としては認められないんだから、八人を超えることにはならん。」

「私は知りませんからね! 事務手続きは支部長ご自分でお願いしますよ!」


 なんだかミハルさんが怒っているが、俺が決めた事じゃないし、俺のせいじゃないので、その怒りは支部長のオッサンだけに向けて欲しい。


 そんなわけで良く分からないうちに、俺たち『地獄の賢者』は九人、いや八人半のグループとして、新たに活動を始めることになったのである。



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