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今ごろになって異世界に転生した話  作者: 大沙かんな
#2-2 実地研修で狩りをしよう

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42.初戦の反省会

 さて、回収と解体も無事終わったので、俺たちは休憩も兼ねた反省会を行っている。


 妖獣シバーを十四匹、それと探索者崩れの盗賊を十人狩っているので、一応これで実地研修のノルマを果たした状態だ。これでもう町に帰っても実地研修は無事に終了できるんだけど、みんな続行する気でいっぱいのようだった。


「いやあ、後から良く考えたら、俺ら二人めちゃくちゃ釣られて前に出てたわ。」

「戦ってる時は、なんか興奮しすぎて全然わかってなかったよな。」

「そんなに強くないはずなのに、あいつらすばしっこくて剣が当たらないし。」

「妖獣シバーは背が低いから、しっかり腰を落とさないと斬りにくかったでしょう?」

「それも事前に聞いてたよな、やってみるまでわかってなかったけど、賢者の言ってた通りだったぜ。」

「腰を落とすと、もう一匹にたかられるからなあ、思った以上に難しかったよな」


 前衛組は前衛組だけで反省会を開いているようだ。ハヤトやダイキも、戦闘中や終了直後にはあんなに(かたく)なだったのに、時間が経てば色々なことがわかってきて、自然と反省しているみたいだね。


 初心者だと戦いの最中は周囲が見えなくなるんだよね。そして終わってから冷静に戻ると、いろいろ思い出して恥ずかしくなっちゃう。そういうのも今だけの話だ。みんなが経験を積むにつれて減っていくんだろう。


 なんだか知らないけど、ホムラも少し元気が出てきたようだ。戦ったら元気になるとか、どんな戦闘民族だと思わないでもないけど、


 後衛組も後衛組だけで反省会をしている。


「最後の方、サキが興奮しすぎちゃって、止めるのが大変だったよ。」

「ああ、ほんと面目ないというか、ごめん……。」

「おかげで私なんか、シロちゃんに良いとこ全部取られちゃったんだよ?」

「経験は大切。」


 たしかにサキの暴走は後衛組最大の問題点だったけど、マヤ、それだと何が言いたいのか全然わからないぞ?


 そして俺はと言えば、シロを膝に乗せてステーキを焼いていた。


 いや、戦闘中に調子に乗って『肉』って口走っちゃったから、シロが食べる気満々になっちゃってたんだよね。まだお昼だからご飯は後だって言ったら()ねちゃったんで、仕方なくご褒美を用意しているのだ。


 反省会なんだし、俺もこうやってしっかり反省しないとね。


 実は反省会とは名ばかりで、シロのご機嫌取りの時間を貰っただけっていうのは、ここだけの秘密だ。



 そろそろ出発と言う時間になって、シロの頭を撫でている俺の所に、前衛組が連れ立てやって来た。


「なあ賢者、あれ、やっぱりやめた方がいいわ、俺が間違ってた。」

「あれって? なんのことだろう、肉無し芋煮のこと?」

「いや、確かに肉無し芋煮はやめた方がいいけど、そうじゃなくて、『異常なし』ってやつ。反省会でさ、あれはテンパってると勘違いするって話に落ち着いた。」

「あ、やっぱそうだった? じゃあみんなにも伝えて、やめることにしよう。」


 俺は前衛組だけでなく後衛組も呼んで、ルールの変更を伝える。


「そうよね、実際やってみて、私もそう思ったわ。」

「ちょっと(しゃく)だけど、タカシの言う通りだったわね。」

「ああ、俺たちはちょっとだけ魔獣シバー狩りの経験があったからね。」


 あんなものは経験があればすぐわかる。前後左右どころか上下も含めて、どこから魔獣が襲い掛かってくるのかわからない、その緊張感っていうのはちょっと半端じゃないのだ。


 そんないつどこから襲われるかわからない中で、「異常なし」なんて言葉が聞こえてきたら、その言葉に(すが)りたくなるに決まっている。


「そういえば、賢者は何かこう、グループとしての反省点みたいなものはないの?」

「グループの? そうだな、あると言えばあるな。」


 チヅルに聞かれて俺は少し考えると、それに答えた。


「俺たちはみんな、なんだかんだいって、まだ初心者だよね。もちろん俺も含めて。一人一人がこう、ちょっとづつでいいから、強くなれればいいかなって思った。」


 例えば二人で三匹の妖獣シバーを足止めする腕があるなら、さらに鍛えて一人で二匹の足止めを出来れば、もう一人は一対一でシバーを倒すことが出来るようになる。それなら二人で三匹のシバーを倒すのも余裕になるはずだ。


 そうやってみんなが少しづつ、個人技で今よりも強くなれば、グループとしてかなり強くなれるんじゃないかな。


「それはそうだな、俺もハヤトも、それにサキもだが、賢者よりは剣技の腕は上だと思うのに、結局一匹も妖獣を仕留められていないからな。」

「それで突っ走ったって結論だったろ? 自分で仕留めるより仲間に頼れ、って話に落ち着いたじゃないか。」

「いや、でもなあ、やっぱり自分で仕留めたいじゃないか。」

「それもそうなんだよな……。」


 もしも自分で仕留めたいのならば、か。まあそうだよね。


「やっぱり腕を上げるしかないかな。」

「ああ、やっぱりそこかぁ。」

「特訓だ! 特訓するぞ!」

「賢者は何か良い特訓方法を考えてね?」

「『カシコ』に続く、『ツヨイ』みたいな奴ね!」


 いや、無茶ぶりはやめて……。



 そうして反省会で気合を入れた俺たちだったが、午後はなかなか妖獣に出会うことができないでいた。


「見つからないわね。タカシ、本当にこの辺りなの?」

「ああ、精霊さんはそう言ってるんだけど、確かに妖獣の影も形も見当たらないね。」

「とっくに移動したんじゃねえの? いや、まて、これなんだ?」

「なんだ、ハヤト、どうした?」


 ハヤトが見つけたのは焦げ茶色になった血の跡だった。


「……妖獣の血かな、これ。」


 嗅いで見ると、少し鉄の匂いがする。間違いなく血の跡だ。どうやらここで妖獣が大怪我を負ったらしい。


「うわ、こっちにもあるぞ。」

「これって、血抜きした跡じゃない? まだ濡れてるし。」


 気を付けてよく見ると、辺り一面に血の跡が散らばっている。それに下草を踏み荒らした跡のようなものも見つかった。つまり少し前に、ここで妖獣の群れとの戦闘があったのだ。


「あ~あ、これって先に取られちゃったってことよね。」

「順番だから仕方ないけど、なんか残念だよな。」


(この辺りって、まだまだたくさん探索者のグループがいるのかな?)

《一日ぐらいの距離で先行しているのは、五組ほどいますね~。それ以上だともっと多いですよ~。》

(方向を変えたら空いてるなんてことはないよね?)

〈無いわね。どちらに行っても同じような感じね。〉

《これでもできるだけ空いている方を選んで進んでいるんですよ~。》


 そっか。他の探索者の姿は目に見えなくなったし、午前中に妖獣の群れと戦えたのでわからなかったけど、見えないだけで周囲にはまだ探索者がいるわけだ。


 言われてみれば、その通りだね。この森では一週間から二週間は狩りを続けるのが普通なのだ。森に入ってまだ二日しか経っていないのだから、グループとグループの間隔が開いただけで、まだまだ周囲には人が多いのだ。


「精霊さんに聞いてみたら、俺たちより先行している探索者が五組ほどいるそうだよ。」

「うわ~、まだ結構いるんだな。」

「そうなるとかなり厳しいか。」


 普段だと、狩りをする探索者と、戻って休暇をとる探索者が半々ぐらいなのだけど、今は草原の火事の影響で、ほとんどの探索者が狩りをしていると思われる。


 つまり通常の倍ほどの探索者が森で活動しているわけだ。しかもそのほとんどが、火事の影響の少ないところに集中して獲物を取り合っているのだ。そりゃ獲物にありつけないのも当然のことだった。


「まだ、もうちょっと頑張ってみるだろ?」


 あと数日はこの状況が続きそうだけど、みんなはどうしたいか、聞いてみることにした。こういうのって、しっかり意思を統一しておかないと、あとで揉め事になりそうだし。


「当然だな! 雪辱戦をしないと気が済まないからな。」

「おうよ! 次はしっかりグループを守って見せるぜ。」


 ハヤトとダイキはやる気に満ちているようだ。


「芋は増えたけど、まだ家へのお土産にするお肉が足りないのよ。」

「魔法の袋が貰えたので、売り上げは充分だけどね~。」


 サキとチヅルは、まだ稼ぎ足りないようだね。


「目的は達成してますけど、一週間ぐらいは粘りたいですね。」

「調味料はまだ十分あるよ。」


 ホムラとマヤも余裕がありそうだし、大丈夫かな。


 シロは……俺に肩車されてご機嫌だ。お前、肩車気に入りすぎだろ。



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