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今ごろになって異世界に転生した話  作者: 大沙かんな
#1-1 異世界に転生しよう

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3/15

03.絶対にチートスキルを手に入れるしか!

 ふう……。


 気が付いたら、俺の目の前では女神様とお姉さまの二人が、白い大理石のテーブルについていて、優雅にお茶を飲んでいるところだった。


「あら、やっと目が覚めたようですね~。」

「貴方、下界から来た転生者だったのね。まさか今時、まだ転生者がいるなんて思わないから、どこぞの下級神が紛れ込んでいたのかと勘違いしたわ。」

「ああ、はい、俺は大宅タカシ、高校生です……、いや、でした?」


 状況が良くわからないので、とりあえず名乗っておく。


「貴方はお姉さまに直接触られて、パァンってなっちゃいました~。」


 ちょっと待って! パァンってなったら、魂が消えて無くなって、もう転生できないってことだったのでは。だとしたら、俺はなぜここにいるんだろうか。


「うん、つい手が出ちゃったのは失敗だったわね。仕方ないから、貴方の持っていたタワシに色々盛りつけて、魂っぽく修理というか作り直したのよ。どうやら違和感も無いようだし成功のようね。」

「ええええ~、それってつまり、俺、タワシになっちゃったんですか?」

「そうね。貴方の魂はタワシね。でも安心して。タワシ二個分だから、二倍の威力よ?」


 二倍の威力ってことは、頑固な汚れでも二倍の速さで綺麗になるとか、そういうことなのだろうか。


「あと、今回のことは、貴方の破廉恥行為のせいだけれど、私が原因みたいな所も無いわけじゃないから、特別に超絶スキルセットを最大三つまでつけてあげるわ。」

「なんだかどこかで聞いたような話ですね。」

「そう? それじゃあルーレットを出すから、その三本のダーツを投げてね。ダーツが刺さったところのスキルが貴方の物よ。」

「やっぱり、どこかで聞いたような話ですね……。」


 そして女神のお姉さまが超高速でルーレットを回し、その威力で嵐が吹き荒れ、俺の投げたダーツの矢は一度は刺さったものの、ルーレットを止めた時の勢いで吹き飛んでしまい、予想通り俺はタワシを一個手に入れた。


「あら、残念。ダーツは吸盤じゃないと駄目みたい。」

「なんだか、次の展開もだいたいわかる気がします……。」


 もちろん予想通り、吸盤のついた矢は回転するルーレットに当たって貼りついたものの、止めた時の勢いでルーレットの一部をもぎ取りながら吹き飛んでしまい、俺はタワシをもう一個手に入れることになった。



「…………貴方、タワシが大好きなの?」

「いや、別に好きってことは無いんですが……。」


 こうなったらもう、大宅タカシから、大宅タワシに改名してしまおうか。


 このまま三つ目の矢を投げると、また女神様のたわわに当たってしまう気がする。いや、間違いなく当たるだろう。それだけは何としても避けて、ちゃんとしたスキルを手に入れたいところだ。


「すみません女神様、ルーレットから少し離れていただけませんか?」

「そうね~。また私に当たったりしたら困っちゃうものね~。」


 女神様はあっさりと頷いて、ルーレットから大きく離れ、俺の後ろに移動してくれた。よし、これなら女神様に当たることはないだろう。


 俺は良く狙いをつけて、ゆっくり回転しているルーレット目掛けて、思いっきりダーツの矢を投げつけた。


「とうっ!」


 へろへろへろ~~~ん ぽよんっ!


 ダーツの矢は、一度ルーレットに当たったものの、うまく貼りつかずに跳ね返ってしまった。


 ぴたんっ!


「いやんっ!」


 そして跳ね返ったダーツの矢は、俺の後ろに立っていた女神様の、空いていたほうの胸の先っぽにぴったりと貼りついてしまった。



「もう、駄目ですよ、こんなイタズラしたら~。ぷんすかです~。」


 女神様が少し体を動かすたびに、双丘に貼りついた二本のダーツの矢がぷるんぷるんと揺れている。


「服を渡そうにもこれ一着しかないし、困ってしまいましたね~。」

「そうですか、それは困りましたね……。」


 神様には神様のルールがあるらしく、言ったことは取り消しが出来ないのだそうだ。ダーツの矢がくっついたものをあげると言ってしまった以上、それを実行しないと神格を失ってしまうのだ。


 俺と女神様が二人で困っていると、お姉さまが裏技的な解決方法を提案してくれた。


「それなら、貴女がダーツを二本投げて、当たったところのスキルを彼にあげたらいいんじゃないの?」

「ああ、その手がありました。さすがはお姉さまです~。」


 お姉さまが言うには、当たったところ、つまりプルンプルンにはスキルが書いてないため、スキルがあげられない。だからこれは緊急回避として許される、そういう理屈になるんだとか。


 俺には全く意味がわからないけど、そういうものなんだろう。



「それじゃあ、私が投げますね~。」


 女神様は双丘の先にぶら下がっていたダーツの矢を、すっぽんすっぽんと取り外した。


「えええ~~、それって神器だから、一週間ぐらいは外れないって設定だったんじゃ……」

「私は女神ですから~。」


 それもそうか。それに一週間もの間、ずっと胸の先でぷらんぷらんさせている訳にもいかないだろう。


「じゃあ、回すのは私ね。」


 お姉さまがルーレットを力いっぱい回す。


 グワオオオオオオオオオオオ~~~~~~ッ!


 その回転の力で竜巻がいくつも発生し、巻き込まれて飛ばされそうになるが、俺はなんとか頑張って耐えた。


「投げま~す、え~~いっ!」


 ドゴオオオオオ~~~~ンッ!


 さすがは女神パワー、ふわっと投げたように見えたのにその威力は絶大で、ルーレットは跡形も無く吹き飛んでしまった。もちろんダーツの矢もどこにいったのか、欠片一つ残っていない。


「残念、ハズレです~。残念賞のタワシをプレゼント~。でもルーレットが壊れてしまいましたね。あと矢が一本残っているんですが、どうしましょう~?」

「貴女のルーレットは壊れてしまったけど、代わりに私が持ってきたルーレットがあるから、何も問題ないわ。」


 そしてお姉さまはまた、強烈な威力でルーレットを回転させた。やはりものすごい回転力で嵐が吹き荒れることになったが、俺はなんとか気合で耐え忍ぶ。


「それじゃあ、投げますよ~、え~いっ!」


 ズバンッ!


 おお、今度はルーレットが壊れることはなく、しっかり形を保っている! お姉さまのルーレットはかなり頑丈な作りのようだ。


「じゃあ、止めるわね。」


 ギュギュギュギュッ ガガガガガガーーッ!


 急ブレーキのせいで煙が盛大に上がり、視界が真っ白に遮られた。濃い煙の向こうに、なんだか赤いものがチラチラと動いているように見える。さらにパチパチという何かが弾けるような音も響いてきた。


「えっと、良く見えないんですが、どうなったんですか?」


 パチパチと弾ける音はだんだん大きくなり、白かった煙もだんだん黒く変色し、チラチラしていた赤いものも大きくなって、ゴウゴウと音を立て始めた。


「え? 燃えてる? ルーレットが燃えちゃう! 早く火を消さないと!」


 とても焦ったが、俺には火を消す手段が何もない。このままではルーレットが燃え尽きてしまい、どこに当たったのかわからなくなってしまう。


「そんなに焦らなくても良いわよ? ほら。」


 お姉さまが指をパチンと鳴らすと、燃え盛り始めていた炎はピタっと消えて、後には焼け焦げたルーレットが残っていた。


「ほらね? ちゃんと燃えずに残っているから大丈夫よ。」

「ああ、お姉さま、ありがとうございます!」


 これで何とか、タワシ以外のちゃんとしたチートスキルを貰うことが出来そうだ。



 完全に止まっているルーレットを見てみると、女神様の投げた矢はしっかりとルーレットに突き刺さり、完全にめり込んでいた。先っぽは吸盤だったはずなんだけど……まあ、それはどうでもいいか。ちゃんと刺さっていることが大事なのだ。


 ルーレット本体はというと、かなり焼け焦げてはいるものの、それは矢の刺さっているのと反対側ばかりで、矢の周辺は綺麗に燃え残っている。


「これなら問題なく読み取れますね……えっと、どれどれ? スカ! 残念~、貴方にはタワシをプレゼントで~す!」

「ええええ~~~! なんでスカがあるんですか! ハズレなしだったはずなのに!」

「あら、私はそんなことを言った覚えは無いわよ?」

「ハズレ無しは私のルーレットですね~。お姉さまのルーレットとは違いますよ~。」


 なんてことだ、完全に騙された!


 こうして俺の手元には、四つのタワシが残されることに決まったのだった。



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