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今ごろになって異世界に転生した話  作者: 大沙かんな
#1-4 探索者になってみよう

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22.実地研修の行方

 俺たち両方の話を聞いて、受付のお姉さんはかなり困った顔をしている。こんな美人を困らせるなんて、こいつら悪い奴らだなぁ。


 こうなったら別の探索者に依頼を振り直した方が良いのだろうが、それだと今の依頼をキャンセルすることになり、協会の方が違約金を支払うことになる。それでは受付のお姉さんの査定が下がってしまうに違いない。


 だからと言って、俺たちだって後には引けない。いつ襲い掛かって来るかもわからない奴らとしばらく行動を共にするなんて、あまりに危険だ。


 いや、襲われてもグロリアかシルビアが首をチョキンって切るだけだから、そこには全く危険はないんだ。だけど揉め事の後で殺したとなると、俺の方が疑われてしまう危険があるからな。


 受付のお姉さんが俺の方をチラチラ見て来るが、そんな風に俺をチラチラ見られてもなぁ。美人のお姉さんなので助けてあげたいんだけど、どうしたもんかね。


「ブタオだっけ? 面倒だからここで俺たちに襲い掛かって、盗賊の現行犯になれよ。そうしたらお前らをぶち殺せるし、お姉さんの査定も守れて、みんなが幸せになれるぞ。」


 俺の煽りにブチ切れたブタオが剣を抜きかけたのだが、周囲の三人に抑えられてしまった。


 惜しい。もうちょっとだったのに。


「ちょっと私では判断がつきませんね。支部長に相談してきますから、ここでおとなしくしていてください。特にブタオさん、ここで剣を抜いたら処罰対象ですから気を付けて。タカシさんももう煽らないように。」

「俺はミチオだ、ブタオじゃねぇ!」


 ブタオが何か叫んでいたが、受付のお姉さんはそれに構わず、そのまま部屋を後にしていった。



 お姉さんが出て行ったあと、俺はブタオたちの方から顔をそむけるようにして、その辺りにあった椅子に腰をかけた。ブタオの方は何やらブツブツと文句を言っているようだが、さすがにこれ以上手を出すのは(まず)いとわかっているようで、俺に向けて話しかけては来ない。


 しばらくそうしてお互い黙り込んでいると、部屋の扉が開いて、協会支部長のイカついオッサンが入ってきた。先ほどの受付のお姉さんも一緒だ。


 オッサンは入ってくるなりいきなり、相手のリーダーのマサキに鋭い声を投げかけた。


「で、マサキよ。お前らこの落とし前、どうつけるつもりなんだ?」

「落とし前ったって、俺だってもう、どうして良いのか……。」

「あのなぁ、お前らに出来ることは二つしか無いだろうが、この依頼、そのまま続けるのか、諦めるのか。で、どっちにするんだ?」

「そりゃあ、続けたいのは山々だけど、この状態じゃあ厳しいというか……。」

「なら諦めろ。諦めたくないなら、自分たちで何とかしろ。このガキの態度がめちゃくちゃ悪いのは確かだが、それを何とかするのも含めて、実地研修の仕事だろうが。違うのか?」


 俺の態度がどうこうは置いておくとして、自分で何とかしろってのは同意だな。


「それはそうなんですけど……ちょっと考えさせて貰ってもいいですか?」

「構わんが急げよ? とっととしないと、依頼失敗にするからな?」



 四人のリーダーとの話が一段落ついたオッサンは、次に俺の方に向き直った。


「お前、盗賊化した探索者を狩ったそうだな。」

「どうやらそうみたいですね。わざわざ探索者かどうかなんて確認しないから、知りませんでしたけど。」

「なら、そいつらの探索者証を持ってるんじゃないか? 持ってるなら出せ。」


 俺は魔法の袋を漁って、盗賊たちから剥ぎ取った金属製の札を取り出した。


「違うかも知れないけど……、これのことで間違いない?」

「おい、お前、めちゃくちゃ沢山ため込んでるじゃないか!」


 取り出した金属の札は、銀の物、銅の物、合わせて五十枚ほどある。


「もっと早く出しとけよ……講習でやっただろ?」

「探索者証の話は聞いたけど、実物は見せて貰わなかったんで、これがそうだとは知らなかったんですよ……。」

「それぞれ、どういう状況で討伐したのか、説明できるか?」

「そんな無茶な。どの札がどうだったかなんて、覚えてませんって。どういう盗賊を殺したかだけなら説明できますけど。」

「ああ、それでいい。説明してみろ。」


 俺は馬車を襲っていた盗賊の話だけでなく、野営中に襲ってきた盗賊などの話を、シルビアたちの記憶を頼りに語って聞かせた。


 起きている時に襲ってきた奴らについては、しっかり警告してから討ち取っているので、特に問題はないはずだ。


 野営中の盗賊たちは警告なしに殺しているが、寝ている俺たちにナイフを突き刺そうとしたり、荷物の中に手を入れたり、ホムラやマヤの懐に手を入れようとしていたので、盗賊で間違いない。


「女の懐か……盗賊というより痴漢かも知れんが。そういや、その二人はお前の奴隷だったか。」

「ええ、だから盗賊で確定ですよ。」


 奴隷は物扱い、つまり彼女たちの懐に手を入れるのは、荷物の中に手を入れるのと同じ扱いになる。したがって盗賊確定なのだ。


「よし、わかった。どうやら嘘は無さそうだし、盗賊化した探索者の討伐として認定、報奨金と貢献ポイントを出そう。」

「支部長、それで処理しますが、これだけ盗賊を討伐すれば、見習は卒業して初級ですよ?」

「まあ、そういうことになるな。こいつらに報奨金、それと初級の探索者証を渡してやれ。」


 おお、実地研修なしで初級になれるのか、それはラッキーだね。支部長のオッサンに頭を下げておくことにしよう。


「支部長、そうなると、『不滅の壁』の皆さんへの依頼が宙に浮いてしまいますが、どうしましょう?」

「知らん!」


 えええええ~~~~!


 それはあまりにも酷くない?



「この生意気なガキどもが実地研修なしで初級に上がったのは確かだが、こいつらがまだ探索者としては初心者で、実地研修を受けていないことは何も変わらんからな。実地研修を受けなくて良くなったのは確かだが、受けちゃいけないなんて規則はないぞ?」


 いや、そうかも知れないけどさ……。


「まあ、揉め事起こした者同士だ。普通は受けないだろうけどな。」

「確かにこいつらと一緒に行動したくはないけど……それって、俺たちが実地研修を受けないって言ったら、こいつらの依頼はどうなるんですか?」

「ああ、残念ながら依頼は失敗ってことになる。もちろん罰金の上、貢献ポイントも減点だ。」


 支部長による厳しすぎる最低に、マサキたち四人の顔色が目に見えて悪くなった。


「えええ! ちょっと待ってくださいよ! それはあまりに酷いじゃないですか!」

「うるさいぞ、マサキ。元はと言えばお前らの素行が悪かったからだろうが! ちょっとは反省しやがれ。」


 マサキたちは抗議の声をあげたが、支部長にはまったく聞き入れては貰えないようだ。


 本当に運の無い奴らだね。



 これで一応解決したわけだが、俺たちは実地研修なしで探索者としてやっていくことになってしまった。研修なしでも不安はどこにもないけれど、後になってハヤトたちに話をするときに、なんだか詰まらないことになりそうだ。


「それじゃあ、俺たちはこれで失礼させてもらいますね。」

「ちょ、ちょっと! ちょっと待ってくれ!」

「待って! お願いだから、話をさせてよ!」


 話は終わったので部屋を出ようと思ったのだけど、マサキたちに呼び止められてしまった。


「いや、俺たちには話すことなんて何もないんだけど……。初級になったことだし、早く依頼を受けて仕事してみたいし。」

「依頼なら! 私たちも同行させて欲しいわ! お金なら出すから!」

「いや、信頼できない人たちと一緒に行動するのはちょっと困るというか……。」

「それなら! 金は払うから、同行したということにしてくれ! 頼む!」


 俺はそれでも良いんだけど、すぐそこに探索者協会の支部長のオッサンと、受付のお姉さんがいるんだよね。そんな不正が許されるのかなぁ。


「おい、お前ら。俺の目の前で堂々とインチキの相談か? なかなか勇気があるじゃないか。」

「あ、いや、これは……、話の都合というか、会話の流れというか、ほ、本気じゃないですよ?」


 ああやっぱり。そんな話が許されるはずはないよね。



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