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今ごろになって異世界に転生した話  作者: 大沙かんな
#1-3 町を目指そう

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11.奴隷少女たち

 すったもんだはあったが、俺はなんとか精霊(シー)の二人を宿すことに成功したため、目的だった鎧や衣服の作り直しや、死体の処理をすすめることになった。


 それらはシルビアとグロリアの魔法でやることになっているのだが、二人が魔法を使うには、彼らの主である俺から魔力を吸い取って、その魔力を使う必要があるらしい。今はその魔力を吸収して溜めているところだ。


(うう~、なんだか体がだるい~。)

〈魔力というか、魔力や生命力の源の、精力を吸っているからね。〉

《しばらくすれば育ちますし、それに慣れますから、頑張ってくださいね~。》


 彼女たちによれば、精力は吸い取られて空になっても、時間が立てばちゃんと元通り回復するそうだ。そして精力を大量に使っては回復するのを繰り返していると、精力の最大値自体が増えるらしい。


 精力を吸われて空になってしまうと、体が非常にだるくなり、疲れ果てたように立ち上がる気もおきなくなるのだが、これも慣れてくればマシになるということだ。


 本当かどうかはわからないが、生命に関わることではないと言うし、とりあえずは信用するしかない。


《それにしても、ご主人様の精力は濃ゆいし粘り気もあって、とっても美味しいです~。》

〈本当に濃いわよね。かなり喉に引っかかる感じがするし、とっても新鮮で良いわ。〉

(あの~、会話中すみませ~ん。ご主人様呼びはやめてくださ~い。)

〈ええ? どうして? ご主人様はご主人様よ?〉


 いや、別に大した理由ではないのだけれど、ご主人様と呼ばれるとメイドが連想されるのを避けたいのだ。


 メイドが思い浮かんでしまうと、メイドからメイド服、そしてミニスカから溢れるムチムチ太もも、さらに太ももすりすりとか、ニーソなでなでとか、もうできないことが一杯思い浮かんで(つら)いのである。


(簡単に、(ぬし)、とかで良いんで。)

《それじゃあ、(ぬし)様、にしましょう~。》

〈そうね、様づけは必須だもの、主様が良さそうね。〉

(じゃあ、それでお願いします。)


 ちなみに俺は、今も心の中では『おっぱい』と叫び続けているのだが、彼女たちにお願いして、必要のないおっぱいは省略、または無視して貰うようにしているのだった。


 そうしておかないと、心の会話がすべて『おっぱい』で埋まってしまって、自分でも何を言っているのかわからなくなってしまう恐れがあるのだ。



 健康スキルやタワシ魂など、女神様の力で生きている俺の精力は、特上級の品質なのだそうだ。たぶん女神様の神力がそのまま流れ込んできて、それが俺の精力になるのだろう。


 今の所は絶対的な量が少ないのが難点だが、回復がびっくりするぐらいものすごく早い、というかほぼ一瞬なので、ほぼ空になるまで吸い取ってから満タンまで回復というのを、二人がかりで素早く繰り返して貰っている所だった。


《そろそろ魔法で片づけましょう~》

〈それじゃあ、私が死体を埋葬するから、衣服の方はシルビア、貴女に頼むわね。〉

《えええ~、服の方が面倒じゃないですか~。三人分だし、靴と鎧もあるし~。》

〈ごちゃごちゃ言わないで、サッサッと片付けるわよ?〉


 えっと、早く終わった方が、もう一方を手伝うって事でお願いします?


 そう言おうと思ったのだが、言ってる途中どころか言い始める前に、すごい速度で全てが片付いていた。


 大きな穴が空いて、その中に死体や馬の残骸をポイッ、上から土をばさぁ、これで瞬きする間もなく、死体の埋葬完了。


 衣服の方はもっと大変な作業で、頑固な汚れを分解して繊維に戻し、糸に紡いで布に織り、衣服として縫い上げる。もちろん下着やフード付きのマントも同時作成だ。


 靴も一部ばらばらにして別の型に合わせてから、また縫い上げる。鎧も似たような感じ。それが三人分同時進行して、こちらも瞬きする間もなく完成し、いつの間にか身につけていた。


(魔法って……)

《えへへへ~、すごいでしょう~?》

(着替えを覗く暇もないっ!)

〈主様のお陰で、良質な魔力を潤沢に使えるからね。〉

(しかも俺のせいだった!)


 これぞまさしく『(過ぎたるは)(なお)不及(及ばざるがごとし)』という奴か。



 俺の方も、そして怯えていた女の子たちの方も、これで身なりがしっかり整ったので、やっと普通に向かい合って話が出来るだろう。


 でも、俺のことを怖がっていて、その上に間違いなくめちゃくちゃ嫌っているだろう、そんな美少女たちにどうやって話を切り出したものか。コミュ障ってわけじゃないけど、俺にはかなりハードルが高い。


 よし、ここはまず笑顔で、そして普通に自己紹介からだね。


 おれはニコニコ微笑(ほほえ)みを浮かべながら、彼女たちに近づいた。するとなぜか彼女たちは、ますます俺に(おび)え、いやいやと首を横に振りながら、後ずさりしていく。


 なぜだ、こんなに微笑んでいるのに!


〈ニコニコっていうより、ニタニタって感じね。〉

《ニヤニヤ成分も入っています~。好感度ゼロですよ~、残念~!》


「あ~もう、俺のこと、恐がったり嫌ったりするのは禁止!」


 俺は彼女たちに命令するつもりなんてまったくなくて、それが命令になるという自覚もなくて、迂闊(うかつ)にも、ただ『禁止』っていう言葉を若干強い口調で使ってしまっただけだ。


 だけど、その効果は絶大だった。


 そしてその瞬間、空気がガラッと変わった。


 二人のそれまでの態度は急変して、俺のことを怯えることも、俺を見て顔をしかめることもなくなって、俺に対して普通の態度を取るようになったのだ。


 禁止という言葉が命令として二人を縛り、俺のことを怖がらない、嫌わないように彼女たちの感情が制御されてしまったのである。


「えええ~、 今のが命令になっちゃうの?」


〈そりゃあそうでしょ。〉

定型句(キーワード)を設定して置かないと、勝手に命令になっちゃいますよ~。》


「さっきの命令は取り消し! それと以降は、『命令!』って言った時以外は、命令にならないことにするよ!」


 なんとか命令の取り消しと定型句の設定が出来たけれど、奴隷の呪い、ヤバすぎるだろ、これ。二人のあまりの豹変ぶりに、俺は少々恐くなってしまった。



 その後、少し時間をかけて、怯える二人を頑張ってなだめすかして、やっと何とか会話ができる状態になった。


「それじゃ二人とも自己紹介してね。名前と、奴隷になる前に何をしていたか、あとは得意なこととか適当に。それじゃ、まずは俺から。その次はそっちの子ね。」


 命令してしまったことで余計に嫌悪感が強くなってしまっただろうけど、やってしまったものはしょうがない。その事についてはもうあまり気にしないと決めて、一気に勢いで乗り切ってしまうと決めた。


「俺はタカシ、十六歳。(ぬし)様とでも呼んでね。ずっと遠くの国で暮らしていて、魔法の事故で最近この辺りに飛ばされてきたんだ。素っ裸だったのはそのせいだね。この辺りの地理とか風習とかには疎いから、いろいろ教えて欲しいし助けて欲しい。それじゃ次。」


《野蛮人じゃなかったの~?》

(違うって。一応、これでも文明人だから!)


「ホムラ、十五歳。騎士見習でしたが、国が滅ぼされて奴隷にされました。一応ですけど、剣と弓が使えます。」


 ホムラは美人顔で、赤くて長髪を後ろでくくってポニーテールにしている。結構の長身でスリムなので、宝塚系というかカッコイイ系だ。胸もかなり立派な物をお持ちみたいだな。


 騎士見習なら俺とは違ってしっかりと剣術の基礎を身に着けているだろうから、戦力としても期待できそうだ。


《ホムラはEカップよ~。》


 いつどうやって調べたん……。って、そう言えば魔法で服作りをして貰ったんだった。


「えっと……マヤです、十四歳です。農場で育って……動物とか好きで、それと、料理も好きです。」


 マヤはホムラと正反対というか、背が低くて可愛い系だな。栗色の巻き毛なのも可愛い感じで似合っている。丸顔でとても立派なものをお持ちだが、別に太っているわけじゃないみたいだ。料理好きなら、全部任せてしまおう。


〈マヤはGカップね。形もいいし、桜色よ。〉


 それって何の色やねん……。



「二人ともありがとう、よろしくね! それじゃあ、二人とも、武器を選んでくれるかな? マヤは良くわからないかもだから、ホムラが選ぶのを助けてあげてね。」

「武器ってことは、私たちは戦うことになるんですか?」

「戦い、ちょっと怖い……。」

「旅をするにも、何をするんでも、自分の身は守れる方が良いからね。無理をして自分から戦いを挑む必要はないよ。」


 俺の言葉に、二人はそれぞれ自分の体格に見合った剣と短剣を選ぶ。それと、マヤは料理が好きということなので、食材入りの魔法の袋に調理道具を詰めこんで渡しておく。



「ホムラは剣術隊長、みんなに剣の使い方を教えるのが仕事ね。それとマヤは料理隊長、食事の準備とか、食材の管理とか、そういうのをお願いね。あとは……そうだなぁ、分からない事があったら聞いてほしい、かな。」


 俺は二人に適当に仕事を割り当てておく。まったく適当な思い付きだけど、仕事の分担がある程度決まっていた方が、二人の心理的に楽な気がしたのだ。



「えっと、主様。ちょっと聞きたいことがあります。」

「何?」

「精霊様たちってどこにいったんですか? もしかして、主様が食べちゃった、なんてことは……。」


 ええええ~~~、ホムラ、お前いったい何を言い出すんだ。


〈きゃー、食べられちゃう。〉

《いや~ん、食べないで~。》


 こいつらも何を言ってるんだか。それに何だか別のニュアンスが含まれている気がするぞ。


「食べないよ! あの二人は精霊として俺に宿ったの! ちゃんといるよ。」


 ホムラはどうも俺の言葉を信じていないようだ。その横ではマヤも死んだような眼をして固まっている。


(ちょっと、二人とも! 一度、表に出てきて!)

《嫌ですよ~、面倒くさいし~。》

〈別にいいじゃないの、ちょっとぐらい勘違いされたって。〉


 精霊たちはぐうたらで、引きこもり体質だった。駄目だ、こいつら……


 俺はそれでも何とか二人をなだめすかして。やっとこさ顔を出してホムラたちに自分の口から説明することを了承して貰った。


「大丈夫よ、私たちはちゃんと生きてるわ~。」

「私たちは精霊(シー)だから、主様のような強い生命力を持つ者に、こうして宿るのよ。」


 精霊の二人は俺の肩からにゅっと頭だけ出している。確かに顔を出して説明してくれてるけど、ずぼら過ぎるぞ……。


「うわぁ、な、生首……!」

「きゅう~~~~。」


 ホムラとマヤは、そんな顔だけになってしまった二人を見て、何を勘違いしたのか白眼を剥いて気を失ってしまったのだった。



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