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16話 シーカ使いの女闘士

「ライカー!結婚してくれー!」

「俺が今晩面倒見てやる!こっちを向いてくれー」


ライカが素顔を見せると男性客は総立ちで下卑た声援を投げかける。

彼女はふわりとした微笑みを一瞬覗かせると、兜で顔を隠した。


二刀闘士ライカは両手の剣をカチカチと打ち合わせ、息をつく間もなく剣を後ろ手に低い姿勢で突っ込んで来る。


「シッ!」と呼吸音とも風切音ともつかぬ音を立て、ファルカタ下段の薙ぎ!


(パルマ)を反射的に下に構えて対応、一歩下がる。


おいおい、こっちはまだ女相手にどう戦うか、そもそも戦っていいのかすら迷ってる段階だっていうのに…


そんな迷いが脳裏をよぎった時には既に、ライカが左手に握った短剣(シーカ)を振り上げて飛びかかってきていた!


「ハアァァァッ!」ガッ!


盾を下向きに構えた状態のまま、右手に持ったファルカタを上に向けて根本で受ける。

ファルカタは幅広の剣だ。

多少打ち合ったところでびくともしないだろう。


シーカもまた、湾曲した短剣だ。

彼女は打ち合わせたシーカを支点にして、驚くべき事に飛んだまま蹴りを放った!


ドガッ!「ぐべぇっ!」ごろごろごろ…


痛っでえぇ…胸を思いっきり蹴り飛ばされた。

数回転、転がされた後なんとか立ち上がる。ライカはどこだ?見失ってしまった!柱の影にでも隠れたのか?



どの柱から出てこられてもいいように盾を引き付けておく。松明の揺らめきが視界に入り、気を散らす。


フッ…と風を感じた。


う、上?まさかなと思い視界を上げた時、柱の上から飛びかかってくるライカが眼前に迫っていた!


頭上にシーカが振り下ろされる!

慌てて盾を上にして防御姿勢…怖っ!ギリギリで間に合った!


ガインッ!


正真正銘の体重を乗せた一撃。衝撃こそかなりのものだったが受けきった!ここから反撃開始だ!

俺がいきり立った瞬間、今度は盾の内側にファルカタが現れ、盾を構えている左腕の肘を斬り裂いた!


「なっ?!っつぅ…」

そうか、盾で受けたのはシーカ、奴の左手武器。今度はシーカを支点にして盾の上に乗ったまま、右手のファルカタを盾の内側に差し込んできた訳か…

しかも小手と分銅鎖の隙間の肘をピンポイントで狙うとは。


骨、動脈共なんとか無事そうだが、なんちゅうアクロバティックな連続攻撃!猿の相手をしているみたいだ。


だが数合打ち合って(と、言っても一方的にやられてるだけだが)冷静になれば光明が見えた気がする。

ライカの攻撃は軽い。

これなら致命傷を避けつつ隙を伺い、強烈な一撃で逆転を狙えば勝機はある。



ライカはまたも両手の剣をカチカチと打ち合わせる。来るのか?今度はカウンターで決めてやる!


こちらに来るのかと思ったら柱の影に走り込み、隠れてしまった。右か?左か?上か?下か?柱をうかがいながら右回りに、じりじりと回り込む。


ヒュッ!

聞こえたぞ!左からファルカタが飛び出してきた!

痛みをこらえて盾でがっしと受け止め、反射的にカウンターを繰り出す!

ガッ!…って、柱に切りつけてどうするよ俺…気持ちが先走りすぎた。

落ち着け、落ち着け。


柱の前で気持ちを鎮めようとする俺をよそに、今度は柱の右からシーカが飛び出してくる!


ブシュッ!「うがあぁっ!」


右のふくらはぎを切られた!だあぁっ、ちまちまとめんどくさいっ!

剣を放り、シーカを握るライカの右腕を掴む。そしてそのまま全力で放り投げてやる。


ヘリオンの鍛え上げられた肉体を十全に使いこなせば、闘士とはいえ女を数メートル投げ飛ばすなんて簡単な事。

俺はファルカタを拾い上げて猛然と、彼女の落下地点へと走り出した。


地面に叩きつけられたライカに向かって飛び上がり、ファルカタを振り上げる。

この加速と遠心力、ファルカタの重量があれば致命傷間違いなしだろう。


ライカは土埃にまみれ倒れ込んだまま、両の剣をクロスさせて防御態勢を取るが、俺は構わず全力で打ち下ろす!


バギンッ!ブシュッ!

「ぐうおぉぉっ!ぎっ!かはっ、、」

ヘリオンの全力の一撃をそうやすやすと防げるはずもなく、ライカの二本の剣はクロスしたまま押し込まれ、振り下ろされたファルカタはライカの左鎖骨から乳房までを深々と斬り裂いてみせる。


溢れ出る鮮血。兜から覗く、青い目はどんよりと濁っている。間違いなく致命傷だろう。


正直に言うが、彼女が兜で顔を隠していて本当によかった。

男女平等だなんだと言われても、殺し合いですら女性に剣を向けるのはかなり抵抗がある。

せめて苦しまないよう介錯をしてやらないと…


夕陽はすでに沈み、辺りはすっかり薄闇に包まれている。

闘技場を囲むようにして松明がゆらゆらと揺れ、月明かりが凄惨な殺し合いを青白く照らしていた。

お読み頂きありがとうございます。

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