黒騎士の丘
お久しぶりです(*^^*)
ずいぶん長い間空けてしまいました(´・ω・`)
変わらず不定期投稿ではありますがどうぞよろしくお願いします。
「黒騎士の丘の俗説は何が一番有力だと思う?」
「そうですね…」
レギュラス大聖堂を出て、街の喧騒から遠のいた小道を私たちは歩いていた。辺りは草木が鬱蒼と生い茂っている。
この小道が近道だそう…割と傾斜がキツイが私なら大丈夫だと判断したのか。まあ、実際に問題は無いけど。
黒騎士の丘の俗説といえば…
黒騎士は婚約者を助けるためにあの丘で魔王と対峙したというのが有名なんじゃなかろうか。
そのどれもがお伽噺ではあるけど…。
そもそも黒騎士というのはその時代の王に忠誠を誓った剣聖とされていて歴史書にも数話ほど実在していたとされる記述が残っている。
黒騎士の名前は分かっていないが、かの賢帝レギュラスから取られた名前だともされている。
「やっぱり、婚約者を救うために魔王と対峙したというのが有力なんじゃないでしょうか」
「うん、その話が一番多いよね」
エディが頷きながら返事をする。
「…でも、最近珍しい俗説を見つけたんだよ」
「へぇ~、そうなんですね…って」
邪気のなさそうな笑顔であるから思わず返事をしてしまったけれど…まさか、また禁書庫でとか言わないよね?
「…禁書庫で見つけたってオチですか?」
「そうだよ」
間髪入れずニッコリとした笑顔で言われた。
「気にならない…?」
「うっ…」
禁書庫は滅多なことがない限り王族意外は入ることができない。
エディのことだからきちんと線引きは行っているはず…。
…分かりきっているとでも言いたそうな笑顔は少し癪ではあるが好奇心には勝つことが出来ないのもまた事実。
「…聞かせてほしいです」
「ふふっ、もちろんだとも」
満面の笑みのままエディが続ける。
「さっき、聖女テリーゼの話をしただろう。興味が湧いて調べてみたらその婚約者が黒騎士なんじゃないかって文献があったんだ」
「思いもよらない繋がりですね」
もしそれが事実だとするのなら黒騎士は一度死んで蘇ったことになる。
「…黒騎士は確か、魔王が討伐されて間もなく放浪の旅に出たってされていますよね?」
「ああ、そうだね。各地の伝承を照らし合わせると何百年も生きたことになるから、大半は創作と言われてるけど…もしかしたらテリーゼの願いで、蘇っただけでなく長寿…もしくは不老不死にでもなったのかもね」
「そう、ですね」
…愛する人のために戦って勝利を得たのに、結果は自分の命と引換えに愛する人は死に、自分だけが悠久の時を生き永らえてしまう…そう考えるとなんとも切ない気持ちになってくる。
「もう少しで着きそうだね」
エディの言う通り周りの緑が減り、射す光の量が増えてきていた。
数分経った後ようやく開けた場所に出た。
「わあ…」
なだらかな丘陵には一面に桔梗の花が咲いていた。雲一つない蒼穹に、限りなく続く桔梗の花畑はとても幻想的で美しい。
「悠久の歳月尽くとも、我が身朽ち、国滅ぶとも、月再び昇るならば、この剣に誓う、必ずや再び相まみえん…」
エディが呟いた。これは『ノクチュアソルの誓い』という、この丘で見つけられた石碑に刻まれていた言葉だ。かつてこの地がノクチュアソルと呼ばれていたことから名付けられたらしい。
よく黒騎士と結びつけて考察され、王に誓ったものではないかとされているが真偽は定かではない。
「もし、これを黒騎士が誓ったと言うなら見方が変わってくるよね」
「一気に切なくなりますね」
幾度も繰り返されてきた魔王との戦いは多くの悲劇を産んだのだろう。
黒騎士は一体どんな思いを抱き死んでいったのか…それとももしかしたらまだこの世をさすらっているのかも…
ただ一つ私に分かることはこの景色がとても美しいもの、ということだけだ。




