ミイレとレイラ
他作品と同時進行のため、投稿ペースは下がっていく予想…
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「なんか嬉しそうだね」
殿下がそう声をかけてきた。今はホームルーム前の空き時間。することもないので少しボーッとしていた。
「少しいいことがありまして」
お兄ちゃんはあの後、また同じ曜日-火曜日の午後ならクリシェに乗りに来ていいと言った。いつもあの庭園らへんに居るからと。
お兄ちゃんたちのクラスは家を継がない人向けの授業を火曜日の午後にするようで、私の魔法の授業とかぶっていた。
「へえ、珍しいね」
「何がですか?」
もう定番となりつつある、隣の席に座る殿下を見る。先生方も一応首席と次席ということで隣席であるのは勉強のさいに好都合だと考えているらしい。
「君がレイラの事以外で、そんな締まらない顔していることってないだろ?」
だろ?って…。私に言われても。何やら少し含みを感じる。
それに、気づかれてたのか…確かに私自身締まらない顔をしていた自覚はある。
「否定できないのが悔しいですね」
「で、何があったの?」
「秘密です…」
お兄ちゃんは秘密だと言っていたからね…って、
あれ?そんな毎週毎週乗っていたら、いつかバレるんじゃないだろうか。
どういった意味で秘密と言ったかにもよるが…今度聞いてみよう。
「秘密、ね」
少し思考を遠い所に飛ばしていたら、殿下がそう呟いた。なぜだろう…嫌な予感がするなぁ。
まあ、いい。放っておこう。わざわざヤブをつつく必要なぞない。
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「ミイレさん、一緒にランチしてもよろしいですか?」
昼休みそうレイラに声かけられた。
「ええ!もちろんです。隣へどうぞ」
レイラはご飯を一人で食べたい派だと思っていた。いつも複数人に纏わりつかれることの多いレイラだが、ご飯時はいつも一人で食べている。
かくいう私も、時々やって来る殿下以外一緒に食べる人はおらず毎日色々な所を転々としながらボッチ飯をしていた。
(私は気分によりけりだけど…レイラは一人がいいのかと思って今まで誘わなかったんだよね)
それがなんの因果か、こうして私が誘われることで実現しているのである。
私が勧めた隣-もといベンチにレイラが座る。
ここはお気に入りの庭園だ。
人気が少なく、空気がとても美味しく感じられる所。もう少しで紫陽花が見頃になると思う。
私もレイラもサンドイッチだ。
片手で食べつつ風景を楽しむ。
「ミイレさんは将来の夢がありますか?」
レイラが訊ねてきた。
青い空にレイラの金髪がよく映えている。
「夢ですか…」
目標ならある。けれど夢と言われたらありきたりなものしか思いつかない。
「私は世界を見て回りたいですね」
「旅ですか?」
「旅もいいですし、移住していくのもアリですね」
「…いい夢ですね」
ふんわりときれいに微笑んだレイラについ見惚れてしまう。同じ顔のはずなのに受ける印象がこうも違うなんて。
「ルミレイラさんは何か夢はありますか?」
「私は…私は家族に誇れる人になりたい…」
思いがけない言葉だった。少し不安そうにも見える表情や微かに揺れる瞳に思わず言葉がついで出そうになった。
ーレイラは自慢の家族だよ。と
「…ルミレイラさんは私の憧れです」
「えっ…?」
「いつも凛としていて、優雅で…そして何より信念を持って行動している…」
私は真っ直ぐレイラの瞳を見る。
「そんな強い人に私もなりたいんです」
レイラが驚いたように目を見開く。キラキラと光を受けて輝く瞳には先程の儚さは消えていた。
「強い人…私は強い人ですか…」
「はい。だって、いつも私のこと助けてくれますし…分け隔てなく接してくれますから」
一段と嬉しそうにレイラが微笑んだ。それにつられて私もより一層笑みを深める。
「ありがとうございます…、おかげで気が晴れました」
「いえ、またいつでも話し相手になります」
「ありがとう…あの、提案なのだけれど」
一体なんだろうか。少し間を開けたレイラを見る。
「私のことは、レイラと呼んでくれないかしら」
「…!呼び捨てじゃ失礼じゃないですか?」
「いえ、私が呼んでほしいの…私もミイレと呼ぶわ」
少しはにかんだ笑みも可愛らしく思わず抱きしめたい衝動に駆られる。
嬉しい。とても嬉しい。すごく距離が縮まった気がする。
「ミイレ、これからも仲良くしてくださいね」
「…こちらこそ!よろしくお願いします…レイラ!」
私たちはそろって微笑んだ。




