ソフィア・ブラトコヴィッチは妹サラと孤児院で暮らす仲良し姉妹、だが彼らの国では孤児院はけがれた存在だった。
冷たい風が校舎の前を通り抜ける、冬の日差しが長い影を作り出し、その影の中で小さな園児服の少女がじっと立ち続けていた、
彼女の名前はサラ、ソフィアの妹であり、校舎の前で姉を待つことが、彼女の日課となっていた、
「また来てるのか……あの子」
校舎の二階からそれを見下ろし、ミルコがつぶやいた、彼の隣ではブランカが腕を組み、不機嫌そうにサラを見つめている、
「なんでいつもあんな寒いところで待ってるの? お姉ちゃんが好きだからって限度があるでしょ」
「お前だって、あの子が可愛いくて仕方ないんだろ?」ミルコが軽口を叩く、
ブランカは顔をしかめた、
「……ソフィアが嫌いなのよ、でもサラは別」
「素直じゃないな」
「うるさい」
ブランカはそれ以上何も言わず、サラの姿から目をそらした、
サラは寒さに震えることもなく、ただじっと姉が出てくるのを待ち続けていた、その姿は校内でも有名で、「お姉ちゃん子の鑑」として生徒たちの間で話題になっていた、
◆
「サラちゃん、また待ってるのか?」
校長先生が柔らかな声で声をかける、
「うん」
サラはきっぱりと頷いた、
「お念ちゃんが来るまで、ここにいるの」
校長先生は眉をひそめたが、サラの意思が固いことはよく知っていた、真冬でも変わらず姉を迎えに来る彼女を無理に止めることはできなかった、
「じゃあ、せめて校舎の中で待ちなさい、寒いだろう?」
「ありがとうございます」
サラは手を引かれて、教室前で待つことになる、校舎の外で待つ姿が痛々しいと感じていた校長は、サラを教室の前で待たせることを許可したのだ。