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第91話 『ここを通りたかったら、ボクを倒してくれ⁉』

 トロルが棍棒を打ち下ろし、アルマが木剣を振りあげる。

「どぅおぅうりゃぁぁぁぁぁあああっ‼」

 ふたつの武器がぶつかりあった瞬間、暗闇に火花が散った。


 なにかが割れる音がして、自分の木剣を見たアルマは、それが根本から折れているのに気づき、

「ありがとね……」と声をかけた。


 同時に空からバラバラと木片が降ってくる。

 トロルの持つ棍棒も、中ほどまでが砕けて粉々になっていた。

 攻撃をやめたトロルが、真ん中からなくなった棍棒をじっと見る。


「うーん……」

 とアルマはつぶやいた。

「狙い通り、向こうの武器は壊せたけど、こっちも壊れちゃった……。これじゃ、成功半分、失敗半分ってところかしら」


 ガランガランという音がして。トロルが折れた棍棒をなげ捨てた。


「あ、あのぉ……これで終わりーなんて事には……ならない、ですよね?」


 恐る恐る訊くアルマに向かって、トロルは嬉しそうに上体を左右へゆらし、ガラガラと首飾りを鳴らした。

 にぎった両の拳が、胸の前で打ちあわされる。


「やっ……うそでしょ?」

 アルマがひきつった笑いを浮かべる。

「わたしっ……、殴り合いとか野蛮なのは……無理だからっ!」


 だがトロルは、顔の高さに拳を構え、リズムに乗ったステップを踏み始める。

「いやーっ‼ 話を聞いてーっ!」

 アルマが叫んだ。



 その時――

 後ろから火の玉がひとつトロルに向けて飛んだ。

 拳を構えたままトロルがうしろに飛びのく。



「アルマ!」

 振り向いたアルマにスペスが走り寄ってくる。


「もう大丈夫なの?」アルマが訊いた。

「アルマのおかげで、少しは休めたからね」


 そう告げるスペスの顔色は悪い。

「えいっ!」とアルマは、スペスの胸を小突いた。


「痛ったたたた……」

 スペスがわき腹を押さえて身をよじる。

「……ウソつき」

 アルマは非難の目をむけた。


「そ、そうだよ……いま痛いって言ったの……ウソだからね――」

 強がるスペスを見ながら、アルマはため息をついた。


「まぁいいわ……。それで? こんな状況なんだけど、どうするの?」

 アルマが視線を向けると、トロルは拳をおろして、じっとこちら見ていた。


「イオキアさんたちが危ないよ、いますぐ逃げよう」

「それはいいんだけど……見逃してくれるかしら?」


「ボクが残って、ひきつける」

「それならわたしが残るから」とアルマは言った。


「ボクはふたりも担いで走れないし、傷だって治せないよ。行くならアルマだ」


 それは、まったく正しい意見だった――スペスが危険にさらされることを除けば。

 言いたいことを飲み込んで、アルマがただ見つめると、スペスはうなずいてみせた。


「そうよね……わかった」

 アルマは、またため息をついてしゃがみ込み、イオキアと隊長を肩に担ぐ。

 だが、トロルが、それを見てすぐに動いた。

「……で? どうやってアレを止めるつもり?」

 アルマが訊いた。



「こうやってさ」

 スペスはそう言うと、腰からほどいたムチの先を地面に落とし、ポケットからとり出した小瓶の汁を全部ふりかける。


「《点火》!」

 スペスが火をつけると、ムチが燃えあがった。

 そのままスペスがムチを振ると、一直線になった炎が蛇のように飛びかかり、近づいてきたトロルは、おおきく後ろへ避けた。


「まったくもう、無茶ばっかり……」

 アルマは担いでいたふたりをそっと下ろすと、トロルに目をくばるスペスを後ろから抱きしめた。


「痛いっ! けど嬉しい!」

「バカ……」と言って、アルマは目を閉じた。


「たぶん骨が折れてると思うけど、すぐには治せないから、《痛み止め》だけかけておくわ。

 それと《強化》だけど、だいぶ慣れたから、少しだけならスペスにもかけられると思う。もしかしたら、あとで全身が痛くなるかもしれないけど、いいよね?」

「やってくれ!」


 ビシッという音がして、スペスのムチが、近寄ろうとしたトロルをまた牽制した。

 そのあいだにアルマは、抱きしめたまま魔法をかけ終える。



「じゃあ、行っちゃうけど……いい?」

「戻ってきてくれるんでしょ?」

「いつになるか、わからないわよ?」

「いいさ」とスペスがうなずく。


「それで、戻ってきたら()()をやろうよ」


「アレ?」とアルマは目を開けたが、すぐにまた閉じた。

「わかった……アレね」

「よろしく!」


「はいはい……」と言いながら、アルマはスペスの背中に頬をつけた。

「必ず戻ってくるから。それまで……死なないでよ」

「わかった!」

「よし!」


 スペスの背中から離れたアルマは、うしろのイオキアと隊長を担ぎなおす。


「じゃあね!」とアルマが言った。

「またね!」とスペスが言った。



 背中合わせのまま、アルマはふり返ることなく走りだす。

 逃すまいと動いたトロルの行く先を、スペスの炎のムチが塞いだ。


「ダメだよ。ここを通りたかったら――ボクを、倒してからにしてくれ!」

 そう言うスペスを見て、トロルが大きく咆えた。

★☆★☆★ お知らせ ★☆★☆★


拙作をお読みいただき、ありがとうございます!!


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☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


約束し再び分かれた、ふたりの運命は!


それでは次回、

第92話 『断れぬ頼み⁉』

で、お会いしましょう!

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