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第88話 『トロルを攻略する⁉』

 アルマが木剣をかまえてトロルに相対(あいたい)し、その後ろにスペスが立つ。イオキアと隊長は背後にまわった。


「待たせたねっ!」

 言うなり、スペスはスリングにつめた石を飛ばした。巨人は横に大きく動き、石をよける。


 体勢をくずしたトロルにアルマがかけ寄ろうとしたが、すぐにトロルが姿勢を戻したので、あわててまた距離をとった。


 うしろからは、イオキアと隊長から矢と、風の魔法が飛ぶが、トロルは意にも介さず、そのままアルマにむかって棍棒を叩きつけた。


 轟音と土煙があがり、一瞬アルマの姿が見えなくなる。

「アルマ!」スペスが叫んだ。


「へいき!」と言う声とともに、すぐにアルマの姿が見える。


 アルマはそのまま、棍棒の届くぎりぎりを、出たり入ったりしながら動きつづけた。スペスもスリングにセットした次の石を、巨人の頭めがけて飛ばす。


 だがトロルはこれも素早く身体をかがめてかわした。トロルがかなりの勢いで避けたので、首にかけている首飾りが、カチャーンと高く鳴る。



――おかしいな。

 戦いながら、トロルの動きを観察していたスペスは思った。


 この暗いなかで、飛んでくる石を避けるトロルの視力と反応速度には驚いたが、そもそも石が当たったくらいでは、トロルは怪我をしない。

 事実トロルは、イオキア達の弓や魔法を、避けようともしなかった。


――それなのに、ボクの投げる石は、体勢がくずれるほど大きく避けた。

  もしかして……。


 頭にうかんだものを検証するために、スペスはスリングに石をセットすると、さらにもうひとつの石を、手に持った。


 タイミングを図りながらスリングをクルクル回すと、トロルが避けやすいように、わざと横を狙って投げる。

 さらに、すぐまた石をセットし、トロルが避けそうな方向へ、連続で二投目を放った。


 果たして、アルマを攻撃しようとしていたトロルは、それをやめて最初の石をよけた。だが、よけた先にも次の石が飛んでいる。

 それを避けられなかったトロルは、片手で、石をたたき落とした。


――やっぱりトロルは、ボクの投げる石を嫌がっている。


 スペスは理由を考える。


――長老さんを助けるときに使った火焔草が原因なのは間違いない……。だけど怪我が治るトロルが顔ならともかく、それ以外のところまであんなふうにして避けるのは何故だろう?


 疑問を感じたスペスは、トロルを見上げた。

 夜空の星々を背景に、頭の形くらいはわかるが、暗い上に高さがあるので、細かいところまではよく見えない。



「聞いてくれ、アルマ!」スペスは言った。

「なによ! 忙しいんっ……だけどっ!」

 アルマがトロルの攻撃をかわしながら答える。


「あいつの〝頭〟をよく見たいんだ! なにかに《灯り》の魔法をかけて、頭の高さまで投げてくれ。

 時間は短くていいから、光の量を多くして! あと目が明かるさに慣れちゃうから、光は見ないように!」


「注文がっ……多いわ、ねっ!」

 動きながら、何かないかとポケットを探ったアルマは、たまたま手が触れた飴玉に《灯り》をかけて、そのまま空へ放り投げる。


 強く光りながら昇る飴玉に照らされて、灰暗色に見えていた集落が、わずかの間だけ、色をとり戻した。

 光源を見ないように手をかざして、スペスはトロルの頭を観察する。


 まぶしそうに目を細めているトロルの顔や頭は、焼け焦げて、(ただ)れていた。腕の一部の毛もなくなっていて、火傷の痕が見える。


 飴玉にかけられた光は、トロルの頭を飛び越えたあと、沈む太陽のように落ちる途中で消えた。

 あたりが暗闇にもどると、スペスが叫ぶ。


「火だ‼︎」


 スペスは、イオキアのほうへ叫ぶ。

「イオキアさん! こいつは火の傷が治りにくいみたいだ! なにか火で攻撃をしてくれ!」


 すかさずイオキアからひとつ、隊長からふたつの炎の矢が飛ぶ。

 トロルはふたつは避けたが、ひとつが腕に当たり、長い体毛の焦げる嫌なにおいがした。


 トロルの反応からして効果はあるようだったが〝弱い〟とスペスは思った。

「もっと強い魔法はないの!」。


「残念ながらありません!」

 イオキアが悔しそうに叫ぶ。

「もともとわれわれは、火の魔法をあまり好まないんです!」


「アルマは!」

「ごめんっ、わたしもできないっ!」

「くそっ!」とスペスは唸った。


 せっかく弱点がわかっても、有効な手段がなかった。火焔草の小瓶がポケットにはまだふたつあったが、強く警戒するトロルに確実に当てる方法がなかった。

 効果が大きいだけに、これだけは絶対に外したくなかった。


――やっぱり、倒して頭を狙うしかないのか……。


 スペスはすぐに次の策を考える。

「わかった! イオキアさんたちは魔法で牽制しつづけて! それと、しばらくのあいだ、あんまりこっちを見ないようにしてくれ!」


「わかりました!」とイオキアが答えた。


「アルマ! 五つあとに、()()()()()()()()で頼む!」

「ええっ⁉ なにっ?」


「五つあとに、時間最短で光量最大! ()()()()だっ! 数えてくれ!」

「わ、わかった……っ!」


 アルマはポケットの飴玉を握ると、遅延させた|《灯り》をかける。同時に大声で数をかぞえはじめた。


「5、4!」

 イオキアたちから炎の矢がとび、トロルを牽制する。


「3、2!」

 スペスもスリングをとばしてアルマを援護した。


「1!」

 アルマが飴玉を真上に投げた。


 飴玉はわずかな光を放ちながら上がっていき、そこにトロルの目が吸い寄せられる。


 瞬間、アルマの真上で音のない光の爆発が起きた。

★☆★☆★ お知らせ ★☆★☆★


拙作をお読みいただき、ありがとうございます!!


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☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




スペスの策の結果はいかに⁉


次回、

第89話 『倒れろぉぉぉっ⁉』

で、お会いしましょう!

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