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第32話 『切るに決まってる⁉』

 メイランの圧に負けて、言葉が尻すぼみになったスペスは、

〝お情けを〟とばかりに、持っていた枝をさし出した。


「なによ、それ?」

 メイランの後ろからアルマがのぞき込む。


「ふむ、スリングか」

 枝を手にしたメイランが言った。


「スリングって、なんです?」

「投石器だな。いくつか種類があるんだが、これは棒のさきの袋に石をいれる」

 足もとから適当な石を取ると、メイランは先端の袋に入れ、枝を握った。


「あとはこうして回して勢いをつけてから――」

 話しながらメイランは、石ごと枝をぐるぐる回しはじめる。

「そのまま投げるっ!」


 メイランが大きく腕をふると、枝はヒュンという音を立てて大きくしなり、一番速度に乗ったところで袋から石が飛びだした。


 そのまま一直線に飛んだ石は、立ててあった薪をこなごなに砕いて、後ろにあった木にめりこむ。


「すご~い!」

 見ていたアルマが、パチパチと拍手した。


「おい、小僧!」

「ふぁいっ!」とスペスが身を固くする。


「なかなか悪くないが、そうだな――もう少し布を小さくしろ、離れが良くなって石が当てやすくなる」


「あ……うん、わかった」とスペスはうなずいた。

「ボクにはもう少し短いと、振りやすくていいんだけどね――」


「あら……そんなの切ったらいいんじゃないの?」

 アルマが口をはさむ。


「それがさぁ……硬ったくて切れないんだよね、この木」

「そうなの?」

「そうそう、まるで鉄みたいだよ」とスペスはうなずいた。


「……こういうのってさ、魔法で切れないの? 例えば《水》を針みたいに細く出すとか、《火》を、ものすごく強くするとか」


「なに言ってるの? そんなのできるわけないじゃない」

 アルマが怪訝な顔をする。

「水で切れるわけがないし、火じゃ燃えちゃうでしょ。鉄を溶かすっていうならまだわかるけど……」


「いや、そうじゃなくて、もっと、もの凄い高温にして一気に焼き切るんだけど……そうかー、できないのかー。ハルマスは出来そうだって言ってるんだけどな――」


「ハルマス?」メイランが訊いた。

「ああ、気にしないでください。そういう〝病気〟なので」

 アルマが即答する。


「そうか……」と言ったメイランが、スペスに枝を放る。

「ちょっとこいつを持っていろ、もじゃもじゃ」


「だから、もじゃもじゃじゃなくてスペスだよ」

 そう言うスペスを無視して、メイランは小屋へ向かったが、入り口でふり返る。

「いいか、ちゃんと、()っていろよ」

「――えっ!」

 そのままメイランは中へ入っていった。


「これは、サボっていた罰かしらね――いままでお世話になったわね……スペス」

「いや、それ笑えないんだけど――」


「いままでぬろんぬお世話になったってありがぽひょろー?」

「いや、むりに笑わそうとしなくていいから……」


 メイランは、待つというほどの間もなく、手に大振りの曲刀を持って戻ってくる。

「待たせたな」

「あ、あのぅ……メイランさん、それは?」恐る恐るアルマがたずねる。


「アタシの愛刀、〝首切り包丁〟だ」

 メイランが構えてみせた曲刀は、大きく身厚で、見るからに重そうだった。


「なかなかの業物なんだぜ、獣をさばくのにも使えるし――首も、落とせる!」

 ひと振りブンッと音を立てて、メイランは得意気に笑った。


「おい、小僧――そいつを前に出してしっかりと持っておけ」

 メイランがスペスのスリングを指す。

「えっ……、い、いいけど、なにをするのかな?」


「決まってんだろ……切るんだよ」

「く、首をっ⁉」

「ばーか、その枝をだよ――短くしたいんだろ?」

「あ……うん」

「じゃあ、はやく出せ」

「こ、こう?」


 恐る恐る、スペスはスリングを前に差し出す。

「――どのくらいだ?」

「えっ?」

「どのくらい、切ればいい?」

「えっとこのくら――」

「フッ!」


 スペスがゆびで長さを示した瞬間にはもう、メイランは曲刀を振り終わっていた。

 枝の先がスパッと飛ばされ、一瞬おくれて届いた風圧が、スペスの顔をなでる。

「うひゃぁっ!」

 とスペスは尻もちをついていた。


「――どうだ?」

 メイランが訊いた。

「えっ……、ああ大丈夫、切れてないみたい……だよ」

 スペスは、首のあたりをペタペタとさわる。


「だから、ちげーよ」と、メイランは曲刀を肩にかついだ。

「――長さはどうだって訊いたんだ。必要ならもう少し切るぞ?」


「ああ……、えーっと」

 スペスは急いで枝を振ってみる。

「うん、ちょうどいいよ。これぐらいが良かったんだ」

「そうか」メイランが満足そうにうなずいた。


「――なら、飯にするぞ、手伝え」

「はーい」

「わかった」



 メイランについて小屋へ向かう途中――突然アルマが『ぷっ』と吹き出した。


「さっきのスペスってば、なに? 『うあひゃぁっ!』とか言ってたわよ。そんなに怖かったの~?」

 と、面白そうにスペスをのぞき込む。


「そりゃあ、怖かったよ。怖くて逃げ出したかった」

 ブスッとした顔で、スペスは答えた。

「絶対に斬られないって分かっていても、武器を持ったあの人の前には立ちたくないね――ウソだと思うなら、アルマもやってみればいいよ。絶対に『怖いっ。今すぐ、逃げ出したいっ』って思うからさ!」


「やーよ、そんなの」とアルマは笑って顔をそらす。

「あれは、サボってたスペスへの罰でしょ?」

「あんな罰は、ないと思うんだけど――」


「ん……? 罰?」

 前を歩いていたメイランが立ち止まった。

「そうか、そういえばサボっていた罰を与えていなかったな。薪を百本追加しておく、夕方までにきっちり終わらせておけ」


「げっ!」とスペスは言ったが、

「なんだ?」というメイランに、『わかりました……』とうつむいた。


「せっかく、ごまかせていたのに――」


 スペスは恨みがましい目をアルマに向けたが、当のアルマは必死に笑いをこらえていた。


★☆★☆★ お知らせ ★☆★☆★


拙作をお読みいただき、ありがとうございます!!


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ぜひ応援、よろしくお願いします!!


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


もじゃもじゃは『ごまかす』に失敗した!

薪が100本増えた!


それでは次回、

第33話 『おっふろだ、おっふろ⁉』

で、お会いしましょう!

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