ゲーム世界は緩やかに生きるぞ〜2〜
「……て、……ねぇ……が……」
心地よい揺れに創の意識がゆっくりと浮上する。
程よい強さで揺さぶられ…浮かんだ意識はまた沈みそうになる。感じる草の香りと砂埃…耳に途切れ途切れ聴こえる少女と思しき声…心地よい揺れに思わず身動ぎした瞬間…掌に触れた柔らかい感触にソレを揉みしだく。
布越しに感じるもっちりした感触にんー?と呻きながらふにょんふにょんと擬音が出そうなソレを揉む、それはもう遠慮なく豪快に。
「……き…き…きゃあああああああああっ!!!」
絹を裂いたと言える程の悲鳴と共に創の顔面に振り下ろされる無慈悲な拳。
ぐへぇあ!と悲鳴を上げて強制的に覚醒させられた創は揉みしだいているソレを知覚し…
「いってぇ……どぅわああああああああっ!!」
身体は正直なのだろう、少女の自己主張の激しい胸を揉みしだきながら悲鳴を上げた。
目の前の赤い顔をして創から胸を隠す様に身構えている少女を前に創は土下座をしていた。
不幸な行き違いが…と言いつつしっかりと揉んだ胸の感触は未だに未経験な創には刺激が強かったのか、咄嗟に土下座をするしかなかったのだ。
対する少女は未だに警戒をしながらも溜め息を吐き、一部の人からはご褒美と言われるジト目で創を睨み、ポカリ、と持っていた杖で創の頭を殴りつけた。
いて、と声を上げつつこの不思議な状況に漸く意識が向いた創は少女に質問する事にした。
「いてて…それで、ここは何処なんだ…?」
「…ここは王都アイラアムから八戦神都市に向かうため東に続く街道…アンタは其処の休憩所で倒れていたのよ、それで意識の確認しようと声を掛けたら…アンタが私のむ、胸を……っ!!」
そう答えて少女は顔を赤くしつつ手に持った杖で創をポカポカと殴りつける。
あれだけ立派なお餅を揉んだのだ、これぐらいの罰は受けて然るべきである。
痛い痛い、と声を上げつつ現状把握に努める。
どうやら自室から何処かに移動させられたらしい、夢にまで見た異世界転生か!とテンション上がりつつもあのクリアした討伐戦がどうなったか…それにどうやってここに来たのか全くもって分からない状況だ。
普通ならパニックになったりするのだろうが、先程彼の人生で最も衝撃的な出来事があったためか、一周回って冷静になっていたのだ。…いやぁ、あれほど柔らかいのか…と感慨に耽っていると少女から質問が飛んでくる。
「それで、アンタは何者なのよ?格好からして冒険者…と言うより騎士?何処かの没落貴族にでも仕えていたの?」
「騎士?いや、俺は…おや?」
少女の言葉に改めて自分の格好を見下ろす。
それは先程までプレイしていたゲーム、スターファンタジーの自分のアバターの最終装備そのままであった。
まさか…と思いつつ過去に読んだ異世界転生小説の主人公の様に脳内で色々と試す。
幾つか試したところ、脳内で『無限収納』や『マイキャラクター』などと浮かべたところ…
(あ、やべ…これ…スターファンタジーの自分のキャラのステータスとか装備とかアイテム引き継いでるわ…)
と何ともご都合的な事が起きていた。
「あー…まぁ、何と言うか…」
「…はぁ、まぁ人には言えない事もあるしね…無理に答えなくていいわ。あ、私はフィリス、見ての通り魔杖師よ。アンタは?」
「はは…助かるよ…俺は…ソウヤ…聖騎士をやってるよ」
「ふふふ、聖騎士?冗談が上手いわね…聖騎士は八戦神教に所属してる選りすぐりの騎士の事よ!あ、でもアンタは私の胸をあれだけ揉んだから性騎士というのも間違いないわね。…やっぱりもう一発殴ったこうかしら?」
「ははは…それは勘弁してくれ…」
本名ではなキャラネームを名乗ったのは特に理由はないが、何となくそうした方が良いだろうと判断した。
「さて、フィリス、相談なんだが…道がわからなくてね…次の町までご一緒しても良いかな?」
「…まぁ、悪い人じゃなさそうだし…うん、分かったわ…次の町までなら良いわよ、次胸揉んだら憲兵に突き出してやるからね。」
こうしてフィリスの先導の元、創、改めソウヤは異世界での第一歩を踏み出した。
これから彼の物語が始まる。




