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ゲーム世界は緩やかに生きるぞ!

まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします。

誤字脱字などあればご報告いただけるとありがたいです。

文章も書いた事があまりないので、見難い部分もあるかと思います。ある程度書いたら修正なども行うかもしれません。


「長い、長い旅路だった…。」


「幾つもの願いを聴き…幾つもの嘆きを祓い…幾つもの闘いを越えて…漸くキミは其処に立つ。」


「数多の出会いがあっただろう…幾多の別れがあっただろう…そしてそのどれもが…キミを強くする為の槌となっただろう…」


「そしてその鍛え上げた刃は終焉に抗う為にとうとうこの最果ての星まで辿り着いた!」


「…もう、私たちに言葉は要らないだろう?」


「此処で終わらせよう…キミの旅路を…そう、此処がキミの終着点だ!!」











最果ての地、星の彼方で黒き衣を纏いし騎士と対峙する。

騎士の持つ大剣はその一切を飲み込まんとする闇に溢れており、横薙ぎに一閃された刀身から放たれた光は絶望を纏って対峙する者を飲み込まんとしていた。

しかし、その一閃は対峙した白銀の鎧を纏った騎士の持つ両刃の片手剣による剣閃により弾かれる様に霧散する。

黒騎士を睨め付ける蒼き双眸はまだ終わらない、と強い意志を持ち胸のペンダントを握り締める。

其処から溢れ出た光が白騎士の周りに7つの陣を浮かび上がらせ、光の柱が立ち昇る。

陣より立ち昇る光の柱が消えた先には7人の戦士達が立っており、彼らは各々の武器を構える。


「そうだ…キミは…キミ達は幾つもの悲嘆を!辛苦を!絶望を!その輝きで乗り越えてきた!!ならばこの終焉すら乗り越えてみせろ!!」


「我は終焉を齎す者!我を破り…終焉の先を掴んでみせよ!!」












スターファンタジー


日本のゲームメーカー星詠社から発売されたMMORPGである。20年続いたこの作品はシリーズ累計4000万本売れ、様々な社会現象を巻き起こしたといわれる。

しかし、20年の月日も経つと徐々にユーザーも離れ、同社の新作ゲーム、スターファンタジーNEW GENERATIONSに移行していった。

しかし続作となるNEW GENERATIONSはバグにバグが重なり、まともに動作せず、前作とのシナリオの整合性の無さ、前作で売りにしていた自由度の高かった戦闘や生産のクオリティの低下などの原因により、売り上げが奮わなかった。

そして20年の節目を持ち、スターファンタジーはサービス終了の告知を行った。



そしてその、スターファンタジーを愛していた俺こと速水(はやみ) (そう)はサービス終了の間際までこの世界を楽しんでいた。

自身で立ち上げたギルドのメンバーと共に最高難易度の「神・終焉の星騎士討伐戦」を攻略していく、攻略サイトにも鬼畜難易度として有名なこの討伐戦、戦闘中の蘇生不可な上に後半戦から相手の行動がランダム化されており、かつてのトッププレイヤー達が何度も何度も立ち向かい、漸く倒せたボスである。

前半戦は攻略サイトより引用した手順を踏み、後半戦に突入すると同時にデスリスポーンしてリキャストタイムを戻し、ギミックを見ながら対応する、というのが定石となる。

しかし俺たちは最後の記念にクリア報告のないデスリスポーン無しでの攻略しようとプレイしていたのである。

既に攻略を始めて1週間、サービス終了まで残り1時間となったところで最後の挑戦を行った。


「絶対クリアしてやる…!」


「最後の最後だからね…頑張ろ!」


「おう!薬、飯、装備の修理は大丈夫か?ホントのラストだぞ!」


「へへへ…大丈夫大丈夫!まぁ、こんな土壇場まで鬼畜難易度の討伐戦を遊ぶなんざ俺たちぐらいよ…!」


「あーあ…これで終わりかぁ…まぁ、楽しかったよ!また別のゲームでもよろしくね!」


「気が早いな…まぁ、そうだな、別ゲーで会えたらまた一緒にやろうや!」


「まぁ、最後の打ち上げ花火みたいなものだよね!ポカしないでよ?」


各々今までの事を振り返りながら準備を進めていく、最後というのもあり、惜しむ事なく可能な限りの装備強化、バフ掛けを行う。

本当に良い奴らだと思う、サービス終了するゲームだと言うのにこんな事に付き合ってくれる最高のギルドメンバーだ。


「今までありがとう、皆!これが最後の…スターファンタジーでの討伐戦だ!準備は良いな?行くぞ!!」


そう檄を飛ばし、自身のアバターとなる白銀の聖騎士を操作する。

最後の討伐戦の始まりだ。


壮大なBGMを背景に、漆黒の星騎士は大剣を構える。


「先ずは小手調べ…容易く終わってくれるなよ?」


星騎士の台詞を皮切りにバトルがスタートする。

既に攻略サイトより出ていた前半戦での動きをなぞる。

盾役への強攻撃、全体ダメージ、指定位置への攻撃誘導など、今まで何度もクリアしてきた前半戦をクリアし、本番である後半戦へと突入する。

星騎士の見た目も神々しい物に変わり、戦闘BGMが更に激しい物になる。

羽根の様に広がった様々な武器はそれぞれが意志を持ったかの様に星騎士の周囲を飛び回り…こちらに襲いかかって来る。

ここから先は全ての動きがランダムとなる。

かつて解析しようと何度も何度も突撃したパーティもいたが、結果は完全ランダム、それ故にユーザーからはなんだこのクソゲーは!!と怒りの声が上がるほどの難易度となったのだ。

しかも運営が仕様です。の一言で一切修正しなかったので一時期引退するユーザーが増えたこともあった。そんな難易度の討伐戦である、後は自分たちの今までの経験を踏まえ、攻略するしかないのだ。

激戦であった、過去にこれほど集中した事があっただろうか?と言うほど集中していた。

HPが無くなる直前の僅かな隙間で回復を差し込み、盾役に対する連続強攻撃を重ねられるだけのバフを焚き耐え、隙を見ては出来る限りのバフを掛け殴り、それでもなお、味方が一人、また一人と倒れていく。

既にパーティは半壊、残るメンバーも4人であった。

その時、普段では見掛けないバフアイコンに気付いた倒れたメンバーが繋いでいたボイスチャットで声を上げる。


「何かバフ掛かってる!初めて見るバフだ!!」


ここに来て初めてのバフにテンションが上がる、しかし戦闘中のメンバーはそれどころではない、激しい攻撃に耐えつつメンバーが読み上げるバフ内容を確認する。


「終焉に抗う者、全ての終わりに抗う意志を持つ者、終焉が近付いてくる、しかしまだ終わりを告げるには早い、折れない心こそが未来を掴むのだ。…効果は味方一人倒れる毎に攻撃、防御、回復量50%アップのバフ!!何だこれ!?無茶苦茶じゃないか!!」


悲鳴のような叫び声を聞きながら徐々に削っていくHPゲージを見る。

強化バフのおかげで少し余裕が出来た、ギミックにも慣れ、周りを見る余裕も出来てきた。それを見計らった様に先程迄と動きが変わり、見た事もないギミックが飛んでくる。


「何!?これは見た事ねぇ!!おわっ!」


メンバーの一人が吹き飛ばし攻撃で場外へと飛ばされる。当パーティのダメージディーラーで一番火力を出していた戦士である。

一人倒れた事により、パーティにバフが掛かるがそれと同時に星騎士の動きも変わっていく。

今まで見せた事のない攻撃、まるでこちらの動きを学習している様に行動パターンがコロコロ変わる。


「あ、やべ!安置がな…ぐへぇ!」


そしてまた一人、攻撃に耐えられず沈んでいく。

戦闘時間も長引き、サービス終了まで残り15分まで来たところで…最後に立っていたのは創が操る白銀の聖騎士だけになっていた。

残り2%のHPを削る為に苛烈な攻撃を耐え凌ぎ、攻撃を当てていく。そして残り1%を切った瞬間、黒騎士の最後の攻撃が始まる。


「よくぞここまで!よくぞここまで迫った!!だが惜しいかな、人間!…終焉は誰にも止められないのだ!」


デスリスポーンした時とは違う台詞が聞こえる。

普段の攻略では「よくぞここまで来た!!これで終わりだ!」となるはずの台詞だったそして同時に最後の攻撃、ゲージが溜まりきるとコチラが全滅する必殺技が飛んでくるのだ。


ボイスチャットからはギルドメンバーの応援の声が届いて来る。

残り0.8%…出来る限りの攻撃を行う、強力なバフがある筈なのに僅かなHPが削りきれない、せめてあと1人いれば…諦めそうな自分を叱咤しつつ攻撃を続ける。

残り0.3%…敵の攻撃ゲージももうすぐ溜まりきる…ボイスチャットでは既に悲鳴みたいな声すら聞こえる。いける!やれ!諦めるな!声に押される様にひたすらに、攻撃を重ねる。リキャストした攻撃スキルを片っ端から使い、どうにかならないかと、終焉に足掻き続ける。

残り0.1%…


「これこそが創世の御業…終焉の一撃!(ラグナロク)…!」


星騎士が剣を振り上げた瞬間、HPゲージが削り切れる。

音楽が途切れ、画面が暗転し、切り替わると其処には膝を着いた星騎士の姿があった…


爆発したかの様に歓声が上がる。

中には泣いているのか嗚咽混じりの悲鳴さえ聞こえる。

創は達成感を感じると共に身体が脱力するのを感じた。

やった…やったのだ!最後の最後に、誰もなし得なかったノーデスリスポーンクリアを!


「本当に…よく成し遂げました…全く…キミはすごいなぁ…」


星騎士の台詞が流れる。ボロボロの鎧が砕け散り…その隠された素顔が暴かれる…。


「ふふふ…キミは成し遂げたのだ…これから訪れる未来へ進む為に…見事終焉を退けたのだ…」


特殊台詞なのだろう、星騎士は晒された美貌に優しい笑みを浮かべ、何かを差し出す。

創のアバターである聖騎士はそれを受け取り…


「…僕たちの旅は、これから始まるんだ」







その台詞を聞いた瞬間、創の意識が暗転した。



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