表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

海でぐー/短編集

缶詰についての考察、ただしファンタジー要素有りで ~あなたなら、食べますか?~

作者: 海でぐー

考察沼へようこそ


 最近、ネット小説やWeb漫画などを読んでいて、幾度もこのような表記を目にする機会があった。



「〇百年後の世界。廃墟となった町で食べられる物といえば缶詰くらいしかない」



 登場人物は、その缶詰を持ち帰って食べるという展開。


 確かに文明が滅びた後の世界、あるいは人が住まなくなった廃墟の町なら最も簡単に食べられるのは缶詰かもしれない。

 自生している植物があったとしても食べられるかどうかなんて簡単には分からないのだから。



 ……だが、ちょっと待て。

 冷静に考えてみれば、その場面には違和感を覚えないか?


 私が率直に感じたのは「えっ⁉ 缶詰ってそこまで長持ちする⁉」だった。


 そこで、後学のために少し調べてみることにした。

 世界中の文献を調査……はコロナ禍で無理なので、グーグル先生の出番だ。決して手抜きではない。



 さてさて、早速凄いものを見つけた。

 缶詰協会(日本缶詰びん詰めレトルト食品協会)へのインタビュー記事の一文だ。


「1938年にイギリスで114年間保存されていた缶詰を開けて食べたという記録が残っています」


 調べてみると、これはイギリスから北極に来た観測隊の研究員が食べたとのことで、環境要因などの条件も関係していたため食べることができたのかなと考察される。


 缶詰とは、水分の多い食品を金属缶に詰めて密封した上で微生物による腐敗・変敗を防ぐため加熱・殺菌したもの(ウィキペディアより抜粋)である。

 理論上は缶詰内部の腐敗細菌などが死滅しているため、何百年でも大丈夫……らしいのだが、実際は容器の破損や錆び、内部で発生したガスによる変形・破裂によって数十年が限界のようだ。

 菌が残っていた場合などは腐敗によってガスが発生して変形するパターンもあるらしく、そういった缶詰は作って間もないものでも食べられないのだとか。


 環境を整えて実験したら、200年保存された缶詰を食べてみた……なんてユーチューバーも未来で誕生するかもしれないが、今現在で可能なのはやはり数十年モノが限度だろう。

 (調査中も十数年~数十年モノへの挑戦なら実際に目にできた)


 これすなわち、〇百年後の世界で食べられる缶詰がゴロゴロ見付かる展開は違和感を覚えて当然ということになる。


 さて、この話を友人にしてみたところ、とてもシンプルな答えがもらえた。




「こまけーよ」




 ……はい、すみませんでした(笑)


 まあ創作の世界なので、あまり細かいことを言い出すとキリが無いし、何より嫌がられそうだから止めておこう。

 代わりと言ってはなんだが、創作の世界という前提を付け加えた場合に缶詰はどのくらい長持ちするのかを考察してみようと思う。


 ここからは完全に私の妄想なので、付き合いきれない方はUターン願う。




・もしも魔法が存在していたら


 これは複数の可能性が考えられるが、最も手っ取り早いのは「保存魔法」か。

 対象に付与すれば魔法が消えるまで状態が保たれるわけだ。


 そうなると魔法の効果時間が鍵だが、担当制などで魔術師がかけ直せば半永久的に長持ちさせられそうだ。単発なら世界観にもよるし、チート有りならやはり半永久的だろう。


 仮に保存魔法が十年間有効だとしたら、そこで効果が切れてからがファンタジー的賞味期限だろうか。消費期限は缶詰には無いわけだから、あとは運次第で114年の記録を更新できる可能性はある。

 この辺は考え出すとキリが無いから、各々で妄想してほしい。



 次に考えられるのは「アイテムボックス」系統の魔法だ。あるいはマジックアイテムでもいい。

 これは、それこそアイテム自体の寿命や設定でバラバラな結果になりそうなものだが……そもそも時間停止効果があるマジックバッグなら缶詰にする必要が無さそうである。


 おや? それを言い出したら、ファンタジー世界なら缶詰じゃなくとも料理や食材に直接保存魔法をかけたり「永久凍結(エターナル・プリズン)」や「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)」で……という妄想沼が始まってしまうので、魔法の考察はこの辺で止めにしよう。




・もしも神の加護が充実していたら


 ならば逆転の発想。

 自分の体が食品の劣化をものともしない場合はどうだろう。


 つまり、数百年経っても原形さえ留めていれば食べても大丈夫。

 口に入れたものが腐敗していようが変色していようが神様が自動でアレコレしてくれるパターン。


 これならば缶詰の中身が○○になっていても××状態でも……おっと、その辺は想像したくないので、考察に戻ろう。



 つまり、前述の完璧な保存状態からはハードルが少し下がる。

 原形を留めるだけなら、ある程度の状態悪化が許容されるわけだから何百年という単位も現実味を帯びて来よう。


 妄想しやすいように「桃源郷の仙桃」を缶詰で保存したと仮定する。

 仙桃ならそのままでも腐らないなどの特殊な設定は無しとして、この世のものとは思えないほど美味で満足感の得られる究極の果実という仮定でお願いしたい。


 これは世界に一つだけの貴重な存在なので、他に変えが利かない。

 ならすぐに味わえとツッコミが聞こえた気がするがスルーして、最高の技術で缶詰にして未来まで放置しよう。


 ――――数百年後、神の加護を与えられた少年がこの缶詰を開封する。

 中には、原形を留めた仙桃が。ただし化学反応によって変色し、臭いも味も桃とは違ってしまっている。


 だが、少年は加護を信じて仙桃をぱくりと頬張った。

 味も香りも栄養的にも微妙だが、無事に食べられるではないか。やったね。



 ……いや、これは無いな。

 どれだけ稀少な食材だろうと、何食べても大丈夫だというならその辺の栄養ありそうな謎果実を採取して食べた方がマシなのだから。


 例外として「コレ食べないと邪神を倒せない」レベルの聖剣的な缶詰じゃない限り、意味を見出せないのでボツとする。聖剣的な缶詰って何?




・もしも時間逆行/状態回復系能力を持っていたら


 この場所には破損した缶詰しか無いようだ。

 しかし、そんな時はこの能力! 時間逆行/状態回復で缶詰が元通りだ!


 これで出来立てほやほやの缶詰が食べ放題だぜ、やったね!



 ……一見良さそうに思えるが、その能力ってリスク無い?

 もしも寿命を削るなどの代償があるなら、そこまでして缶詰食べなくても山で果実や木の実を採取した方がいいと思う。もしくは魚でも釣ればいい。


 とか言い出すと考察が無駄になるので、代償無しで仮定してみよう。

 それならば、これはかなりいい線を行くのではないだろうか。


 普通の食品や保存食が跡形も無くなっている数百年後の世界だとしたら、缶詰は中身ごと形が残っているからこの能力にピッタリと言える。

 敢えてこの能力のために缶詰を残す場合を考察するなら、別に中身が缶詰に加工可能なものじゃなくてもいいのではないだろうか。


 たとえば焼肉定食の缶詰。〇将の餃子。一流ホテルのコース料理。満漢全席。タピオカミルクティー。

 それらを缶詰に詰め込んで加熱殺菌で台無しにしても、この能力ならハイ元通り! そして能力者だけが満喫できる!


 え? 形を残すなら缶詰じゃなく石の箱でいい?

 ちょっと何言っているか分からないけど、このパターンはなかなか希望が持てそうである。妄想を膨らませて缶詰以外にも日用品など快適な生活のための……とか言い出すとやはりキリが無いので、この考察もこの辺で。




・もしも現実に数百年後まで長持ちさせるには


 最後に、ファンタジーではなく現実的に考えてみよう。

 たとえば先ほどの仙桃ではなくとも、奇跡的にたった一度だけ収穫された奇跡の果実を未来に残したいと思った場合。


 収穫量自体は充分にあるのだが、研究目的で最低数百年間は保存したい。

 そのため、収穫されたものの一部を完璧な缶詰にするプロジェクトを立ち上げた……という妄想を広げてみる。



 これは、無知な私でも分かる。

 答えは……可能だ。



 現代の科学力なら、金に糸目を付けなければ充分に叶えられるのでは?

 意味がないから今は誰もやらないだけで、そこに意味を持たせられたとしたら、資金が十二分に注がれたとしたら、私は可能だと信じている。


 具体的に何をどうするのか?


 缶詰というカテゴリで考察するなら、缶詰の容器の素材を研究し、技術も材料も惜しみなく注ぎ込んで完成させよう。

 中身の加工・保存も研究を繰り返し、絶対的な自信をもって完成品を仕上げる。


 そうして誕生した「千年後でも食べられる可能性を秘めた缶詰の究極形」を、適切な環境下で保存し続ける。

 そのうち戦争で人類の大半が滅びてしまったとしても。電力供給が止まって常温下に放り出されたとしても。

 その缶詰は、千年は無理でも数百年の時を確実に待ち続ける。


 そして、未来の世界で。

 かつて、高度な科学力を持った古代文明により生み出された奇跡の味が、新人類の舌へと届けられる日が、遂に……!



「×××?」(意訳:奇跡の果実の缶詰?)

「△、△△△?」(意訳:いや、完全肉食性の我らじゃ食えんのだが?)

「☆☆☆……」(意訳:家畜のエサにでもすっか……)



 ~完~











 ……とまあ色々妄想してはみたが、数百年経過した缶詰を食べるのは「創作の世界なら充分にアリ」と結論付けたいと思う。


 現実にそれしか食べられるものが無い状況に陥ったとしても、慎重に味や匂いを確認の上で少量ずつ食べることを推奨する。

 もちろん、加熱してからの方がなお安心である。


 ちなみに作者の好きな缶詰はツナ、サバの味噌煮、それにミカン、モモである。

 缶詰は賞味期限切れでも充分に食べられるとはいえ、やはり安心して美味しく味わうのであれば賞味期限内のものに限る。


 現代を生きる者にとっては、缶詰とは本当に便利で素晴らしい存在だ。


 発明してくれた先人に感謝の意を示しつつ、戸棚の奥にしまい込んだまま忘れていた缶詰を、これから引っ張り出しに向かおうと思う。




ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

もしも皆さんの創作のお手伝いになったなら幸い……だけど、ならないだろうなぁ(笑)


くだらない考察でしたが、缶詰の奥深さ自体は本当です。

私のことは嫌いになっても、缶詰のことは嫌いにならないでください。


なお苦情やお問い合わせは感想ページまでお願いします。

私も考察してみた!という稀有な方も感想ページに書き込んでいただけると嬉しいです。


それでは、皆さんに幸あれ♪


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 実家に30年ものの缶詰め(白桃とかみかん)がゴロゴロあるんですが、 誰かなんとかしないのかなぁ……(・_・) ちなみに私は食べようとしたことなら何度もあります。……勇気がない。
[良い点] 凄く面白い考察でした。 なろうに限らず、タイムスリップとかディストピアものとか定番ですよね。缶詰。 神様の力で腐ったものを食べても平気!というのが逆転の発想で面白かったです。 [一言] …
[一言] それこそ「細けーことはいいんだよ」になるんですが、リアルに考えると、そもそも異世界の細菌事情が都合よすぎなんですよね。 検疫なんてせずとも問題なし! 不潔でも腐敗臭なんてしないぜ! 発酵食…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ