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廃課金最強厨が挑む神々の遊戯  作者: 葉簀絵 河馬
アフターストーリー
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第五百八話 事の顛末 ファーアース編

 フォルティシモは現代リアルワールドでの激戦のような何かを潜り抜けた後、異世界ファーアースの自宅である『浮遊大陸』にある屋敷に戻ってきた。


 フォルティシモと共に現代リアルワールドへ行った者たちは、一人を除き全員が一緒に戻ってきている。キュウ、エンシェント、セフェール、ダアト、マグナ、アルティマ、キャロル、リースロッテ、ラナリア。それぞれ何だかんだと往路よりも荷物が増えていた。


 ピアノだけは、もうしばらく現代リアルワールドに残ることになった。不治の病でありながら健康な姿で帰還したピアノの状況は、両親やその周囲に対して言い訳不可能である。だからゼノフォーブフィリアと交渉して少々特別扱いをして貰っていた。その代わりゼノフォーブフィリアはピアノに何かを協力させているらしい。


 マリアステラがやたらにピアノを贔屓していた点を考えると、その親友ゼノフォーブの元へピアノを置いて行くのは気が引けた。そこに何らかの策謀があるのは誰でも想像できる。しかしピアノ自身の思いを考えると反対もできなかったので、何か困ったことがあれば連絡しろ、と言ってある。


 それにしても今回の現代リアルワールド行きは、フォルティシモが現代リアルワールドへ行ってゼノフォーブフィリアとの同盟を確かめるだけのはずだった。


 しかし蓋を開けてみれば、VRMMOファーアースオンラインでマリアステラや太陽神ケペルラーアトゥムと神戯を戦い、最果ての黄金竜サイのせいで危機に陥った世界を救うという顛末である。


 ちなみにフォルティシモがキュウと一緒に楽しもうと予約していたレストランだが、ゼノフォーブフィリアが貸し切りにして全員での食事となった。


 酔っ払ったキュウを介抱するはずだったホテルも、やはりホテル自体を貸し切りにして、関係者全員を押し込めた(宿泊させた)。その中でキュウだけを部屋へ連れ込む訳にもいかず、フォルティシモは従者全員とスイートルームで過ごした。それはそれで楽しかったが。


 なお、キュウはお酒を飲んでいなかったので、フォルティシモの魔王的計画は初手から失敗していた。


「だから言ってるじゃねーですか。プレイヤーと遺族たちの間には、溝が深い奴もいやがるんです。一律に戻せばいーってもんじゃねーです」

「遺族の気持ちに寄り添え? 死んだと思ってた天才(プレイヤー)の遺産を食い潰してる連中でしょ。それに全員を戻すって約束で契約書を取り交わしてる。鍵盤商会会長として、契約不履行は認められない。信用は最高最上の商材なんだよ! それに預かった認証を使って、プレイヤーたちの預金は全部、会社設立と投資に使って来た」

「ダアは人に嫌な役割(手紙配達)を任せておいて、良い度胸じゃねーですか」

「プレイヤーが全員被害者ではないのはぁ、知っていたことですしぃ。被害者イコール善人なんて方程式は成立しないですからねぇ」

「そーは言いやがりますけどね」

「そうですねぇ。私たちのぉ、身近に居ますよぉ。フォルさんは神戯によって両親を殺されてぇ、人生を目茶苦茶にされましたけどぉ、被害者だからって同情できますうぅ? フォルさんを救おうって思いますかぁ?」

「………やべー説得力じゃねーですか。そいつらへ同情するなら、フォルさんにも同情しろってことですか。………できねーです。フォルさんには、マジで一欠片も同情できねーです」

「そんなものですよぉ。私たちはぁ、生きて会わせる。それだけでぇ、良いじゃないですかぁ」


 キャロル、ダアト、セフェールは屋敷へ戻りながら、非常に失礼な世間話をしていた。


「はい。現状で協力的、中立、否定的、そして敵対勢力に寝返りそうな神はリストアップいたしました。短時間でしたので、正確性に自信はありませんが」

「リストを作れるだけ、ラナリアは私よりも優秀だ。こちらを参考に、今後の対策を立てていくことにしよう。<時>の残留組と主を会わせなくて正解だった」

「エンさんにお世辞を言われるとこそばゆいですね。それと、私はフォルティシモ様にご一緒して頂けたら嬉しかったです。それなりの対応をして見せます、とエンさんにアピールしておきます」

「私もエンさんに頼みがあるよ。今回は鍛冶だけだったけど、他にも隠れた才能はある。リアルワールドの学習データを収集するため、もう少し長く向こうに滞在できるようにゼノフォーブフィリアと話を付けておいてくれない? あ、フォルさん説得しても、やるのはエンさんだから直接話してるけど」

「マグさん、そういうお話はどうぞ私にも。頑張りますよ?」

「お前は対価が怖いんだよ」


 ラナリア、エンシェント、マグナは屋敷へ戻りながら、これまた失礼な世間話をしていた。


「リースは何やってるのじゃ?」

「ゲーム」

「それは携帯ゲーム機を見れば分かるのじゃ。妾が聞きたかったのは、歩きながらやっているのが珍しいという話なのじゃ」

「アル」

「うむ?」

「あのクソ女神をぶっ倒す」

「リース、良く言った、その通りなのじゃ! 次こそ、女神マリアステラを………いや妾はゲームで倒そうとは思わないのじゃ!?」

「アルの負け犬」

「妾は負け犬ではないのじゃ! せめて負け狐なのじゃ!」

「狐はイヌ科」


 アルティマとリースロッテは、それぞれマリアステラと直接戦って悔しい思いをしたらしい。直接戦闘を得意とする二人は、他の従者に比べても戦意が強い。しっかりと火が灯っている。ようやく失礼な世間話ではなくなった。


 フォルティシモは屋敷の扉を開き、従者たちとゾロゾロと入り靴を脱ぐ。


 帰って来た、という感じだ。産まれた世界(現代リアルワールド)ではなく、ここ(異世界ファーアース)へ。


 フォルティシモは『浮遊大陸』の屋敷を見て、安堵から気が抜けた自分に驚いた。


 現代リアルワールドは大変だったけれど、こうして帰って来るとそう悪いものではなかった。あれほど憎かった現代リアルワールドを一度は滅ぼしたからスッキリした、だけではない。


 何だかんだ戻って来た従者たちが明るい表情をしているのを見て、満足感と幸福感を覚えていた。


「ご主人様」


 そんなフォルティシモの気持ちを理解してくれたのか、キュウがフォルティシモの顔を覗き込む。


「キュウ、リアルワールドはどうだった?」

「はい、ご主人様が産まれた世界は、凄かったです」

「今度行った時は、ファーアースオンラインのオススメスポットを案内してやる」

「はい」


 サイに焼かれてしまったエルディンや太陽神ケペルラーアトゥムに蒸発させられた一帯など、異世界ファーアースではなくなってしまった、フォルティシモのお気に入りMAPを思い浮かべる。


 ますます現代リアルワールドへの観光が楽しみになって来た。


「主、まずは現実世界の観光地を選べ」

「そうですよぉ。私がキュウへ薦めた恋愛小説のモデルになった場所なんて良いんじゃないですかぁ? 予習すれば話題にも困りませんよぉ?」

「ファーアースオンライン観光なんて、VRダイバーをこっちへ輸入すればいくらでもできるでしょ! だから輸入して鍵盤商会で販売しましょう!」

「それに何のために時間戻したのさ。私なんて、せっかく仲良くなれそうな奴が居たのに」

「まずは主殿の好きな場所から案内しようという考えなのじゃ!」

「VR世界は、キュウの耳には陳腐に聞こえちまうんじゃねーですか?」

「私も行く」

「私だったら愛するフォルティシモ様の育った世界を見たいと考えますので、そちらをご検討ください」


 フォルティシモは心から信頼する従者たちから駄目出しを受けて、キュウのために考え直す。考えて見れば、誘拐人質事件の後も色々あって、それからはずっとVRMMOファーアースオンラインの廃課金廃人プレイをしていた。観光地も行楽地も禄に行った記憶がない。世界規模で色んなイベントもやっているし、世界遺産巡りや地球一周クルーズなども選択肢に入る。キュウが気に入ったオーケストラコンサートは外せないが、他にも娯楽は山のようにあるだろう。


 それをキュウや従者、そして友人と行くのは、楽しいかも知れない。なるほど現代リアルワールドを救ったのは間違いでは無かった。フォルティシモは地球百億人の人間を抹殺した事実を自画自賛する。


 フォルティシモが想像の中で良い気分に浸っていると、それに冷や水を浴びせる音が鳴った。情報ウィンドウがメッセージを受信したアラート音。


 それは母なる星の女神からの手紙であり、今回の件が楽しかったという御礼が並べられ、またね、と締めくくられている。


 遊び戯れようという誘い。


 数日後か数ヶ月後か数年後か。


 銀髪で金銀異眼の神が、黄金狐、金髪虹眼、黒髪紅眼の少女を始めとした勢力を引き連れて、多くの世界を蹂躙していくことになるのだが、この一連の出来事はそれの切っ掛けとして語られるようになる。


 この話で現代リアルワールドへの帰還を主題としたアフターストーリーが完結となります。

 本編以上に色々な意味で飛んでおりましたアフターストーリーを、ここまでお付き合い頂きました読者の皆様には、本当に本当に本当に感謝いたします。

 今後もフォルティシモとキュウの物語を書きたい、二人の物語をこれで終わらせたくない気持ちもありますので、機会を見て外伝や別アフターを投稿できれば幸いですが、今のところは未定となっています。

 この作品を読了頂いたすべての皆様へ心よりの感謝を申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、御作を読みました。  フォルテに強く関わったピアノがいないことは残念ですが、彼とキュウちゃんの物語、という意味ではこれ以上ないほど完璧なラストシーンでした。  少年と少女が巡り…
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