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第三百三十八話 最悪の救援 後編

「GYAAAaaaーーー!」


 空を黄金に染め上げる巨躯と神々しいまでの六枚羽を持つドラゴン、最果ての黄金竜。


 エルミアがかつて見たレベルこそ四〇〇〇〇で、今エルディンを襲っている他の強大な魔物群と比べたら半分以下となるはずなのに、その圧倒的な存在感は他の魔物と隔絶した何かを感じさせた。


 そう感じたのはエルミアだけではない。最果ての黄金竜が出現したことで、新エルディンを破壊していた強大な魔物たちは一斉に黄金の空に浮かぶドラゴンへ注目し、その破壊活動を止めていた。


 エルミアは一度は殺され掛けた恐怖を胸に仕舞い、大声で語り掛ける。一瞬だけ、地上のエルディンを焼いたドラゴンへの恨み言を叫びたくなったけれど、これから助けを求める相手を罵倒するなんて馬鹿な行為をしない分別くらいは、今のエルミアにはあった。


「あなたも<フォルテピアノ>の一員になったんでしょ!? 今、あいつらに攻められてるの! 力を貸して!」

『我が協力者フォルティシモはどこだ?』


 エルミアの持つ板状の魔法道具から音が聞こえて来た。不機嫌そうでも流暢な言葉を話しているのは、最果ての黄金竜らしい。


「あいつ、フォルティシモは、今、敵と戦ってるわ! だから、私たちに力を」

『なんだこれは!?』


 最果ての黄金竜は大きさだけならば、他の強大な魔物たちと比べて数倍の巨躯を誇っている。そんな巨大モンスターの叫びによって空気が振動すると、それだけで大地が揺れる錯覚に陥った。


『何かあったのかい? フォルティシモから聞いているかも知れないが、僕は………テディベアだ』


 テディベアはかつて始祖セルヴァンスだった頃、最果ての黄金竜と争って最果ての黄金竜を封印している。封印が解かれた最果ての黄金竜は、始祖セルヴァンスを倒すために地上のエルディンを焼いたのだ。


 だからテディベアは慎重に言葉を投げ掛けていた。


『なんだこのアイテムは! これほどのアイテムが、山のようにチームの共用倉庫に入っているのだ。いくつか貰っておくか』

『………それは、フォルティシモのアイテムだよ』

『つまり貢ぎ物か。協力者にしては分かっている』

『その考え方は決して協力者に対するものじゃないよ。それから共用倉庫にあるものを自分のものにするのは、マナー違反というか、盗みとやっていることの本質は変わらないのであって』

『協力者もようやく“到達者”を倒すために全力を尽くす気になったか。我と協力者、そしてこれだけのアイテムがあれば、対抗できるかも知れん!』


 テディベアが小さなクマのぬいぐるみの腕で頭を抱えてしまった。


『ああ、あの時からまったく変わらず、こちらの話を何も聞かないみたいだ。フォルティシモはよく話ができるよ………』


 エルミアは一瞬にして頭に血が登った。相手はエルミアを殺し掛けたこともあり、あのフォルティシモでも頼りにするような強大なドラゴンだったけれど、目の前でエルフの皆で作り上げた新しい故郷を焼かれているエルミアに怖いものはなかった。


 板状の魔法道具に向かって大声で叫ぶ。黄金狐の少女のような耳を持たない最果ての黄金竜は、巨大過ぎて普通の方法では声が届かないのだ。


「ふざけないでよ! それはあいつが、私たちの街を守るために用意してくれた物よ! 欲しいなら、私たちを守りなさいよ!」

『矮小なる者よ。竜神たる我に語り掛けるか』

「さっきあんたの質問に答えたでしょ!?」


 なんとか最果ての黄金竜を味方に付けようとした。そんなエルミアとテディベアの努力は無意味であった。


 エルディンで暴れていた強大な魔物は、この黄金空間の主である最果ての黄金竜を撃破するべく、勝手に最果ての黄金竜へ向かって行くのだから。


 発動した時点でイベント空間へ取り込む救済アイテムを利用した、敵と最果ての黄金竜を強制的に戦闘させるフォルティシモの罠だ。


 これはエルミアが後々知る話だが、フォルティシモの罠は狐の神タマがやったこととまったく同じで、相対する敵を考えるとどちらがより悪辣なのか判断に迷うところである。


 白い虎、蒼い麒麟、翠の亀、赤い鳥、群青の龍などが最果ての黄金竜へ狙いを定め、遠距離攻撃を放つ。


 そのすべての攻撃は、共用倉庫に入っているアイテムを取り出すのに必死な最果ての黄金竜に全弾命中した。


『GAAAaaaーーー!』


 悶絶する最果ての黄金竜。


「馬鹿なんじゃないの!?」

『遊戯の都合で作られた傀儡が! 竜神たる我に手を出そうなど、鉄槌が下るものと知れ!』


 最果ての黄金竜の巨躯からこれまで以上の黄金の光が溢れ出した。眩しくて直視できないほどの魔力の光。


 その魔力光の光源は、最果ての黄金竜の口元である。フォルティシモでさえ防ぎ切ることの出来ないという最強ブレス攻撃【頂きより降り注ぐ天光】が放たれようとしている。


 黄金の光が放出された。


 最果ての黄金竜へ向っていた、いくつかの強大な魔物が文字通り蒸発した。レイドボスモンスターと呼ばれる強大な魔物たちが、耐えることもできずに消え去ったのだ。


 ついでにその最強ブレスは地上に着弾し、巨大な爆発を起こして地上を薙ぎ払った。ここがイベント空間という特殊な空間でなければ、今頃エルディンは再び最果ての黄金竜に滅ぼされただろう。


『ぼ、僕が戦った時より、遙かに、強いんだけど………?』

「ねぇ、テディさん、あのドラゴンの頭にたくさん巻き付けられてる布、どこかで見覚えがあるわ」

『………修練の襷だね。フォルティシモが、最もガチャを回して、それはもう、有り得ないくらい大量に持っているって言う、経験値増加効果を持つアイテムだ』


 エルミアやエルフたちはフォルティシモに出会ったお陰で平穏な生活以上に、圧倒的なレベルを手に入れた。それはエルフや元奴隷以外にも、アクロシア王国の騎士団、鍵盤商会の従業員、ドワーフの鍛冶師など大勢いる。


 そのレベルアップを支えたのが、修練の襷という魔法道具だ。<青翼の弓とオモダカ>という冒険者パーティに渡された物と同じか、それ以上の効果を持つ魔法道具。それによってフォルティシモの関係者たちは有り得ないほどに強くなった。


 そのフォルティシモの関係者の中に、最果ての黄金竜が含まれていたとしたら。最果ての黄金竜はフォルティシモの加護を受けて、更なるレベルアップをしている。




 ◇




 最果ての黄金竜が根城としているアクロシア大陸で最も標高の高い山の山頂に、フォルティシモが訪れた時の話には続きがある。


 フォルティシモは拠点攻防戦前に、最果ての黄金竜を<フォルテピアノ>へ加えようと考えてチームへ勧誘した。


『巫山戯るのも大概にせよ。いくら白き竜神ディアナと知り合いとは言え、貴様はあくまでも協力者に過ぎん』

「けどな、このままだと、お前は“到達者”に負けるだけだろ」

『竜神たる我を侮辱するか!』

「そうじゃない。勝てそうもない相手がいるなら、なんで当然のことをしないのかって聞いてるんだ」


 最果ての黄金竜は意味が理解できず、思わず黙ってしまった。それが協力者フォルティシモの思惑通りだと気が付いた時には遅い。


「俺はどうやったら強くなれるか、ボスを倒せるか、対人で勝てるかと問われたら、決まって答える。レベルを上げろ、課金して廃人になれ」


 協力者フォルティシモは続ける。


「最果ての黄金竜、お前は俺の知る限りレイドボスモンスターだ。だが、意思疎通が出来る。だったらレイドボスモンスターがレベルを上げちゃいけないなんて、道理はない」


 協力者―――否、魔王フォルティシモが囁く。


「俺がお前のレベルを上げてやる。レベルを上げて、一緒に“到達者”を倒そう。それから、俺の【拠点】が襲われたら守ってくれ。“到達者”戦用のアイテムを失う訳にはいかないからな」


 最果ての黄金竜は、どこかの心優しき冒険者の青年や強い決意を秘めた神官の少女のように、力を求めて最強厨の魔王へ魂を売った。




 最果ての黄金竜

 Lv99999 (カンスト)


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― 新着の感想 ―
[一言]  こんにちは、葉簀絵様。御作を読みました。  どうしてこうなった? どうしてこうなった✌︎('ω'✌︎ )( ✌︎'ω')✌︎  フォルテの後先考えないストロングスタイルと、やっぱり考えない…
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