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第二百二十八話 vs竜神ディアナ・ルナーリス 後編

巨大(ヒガンテ)識域(エクステンソ)爆裂(エクスプロシオン)!」


 フォルティシモが攻撃範囲を広げた【爆魔術】を使うのは何度目だろうか。竜神ディアナ・ルナーリスからの攻撃を捌きながら、既に万を超えるドラゴンを屠った。


 フォルティシモにはチーターを破る攻撃手段がいくつかある。それらはチートの種類によって違うものの、一つだけ共通している事柄がある。それは普通に攻撃するのに比べて非効率で、【デフォルト設定】以下の汎用性しかなく、ダメージは百分の一以下になってしまうということだ。


 ファーアースオンラインの頃であれば、それで充分だった。憎むべきチーターは基本的にゲームをやり込んでいないし、多額の課金もしていないので、チートさえ攻略してしまえば後はどうとでもなった。


 しかし竜神ディアナ・ルナーリスは違う。チートツールを使ってくる上、その強さは上位レイドボスモンスター並、加えて取り巻きモンスターが無限湧きする。


 フォルティシモは天烏へ群がるドラゴンを爆砕し、天烏へ乗っているキュウを見る。キュウの瞳はキラキラ輝いていて、フォルティシモへの尊敬と思慕の念が浮かんでいる―――気がする。キュウに期待されているのに、ちょっと旗色が悪いから一旦逃げると言う勇気はなかった。


 しかしフォルティシモが続いて見るのは、情報ウィンドウに表示される己のステータスになる。チーターカリオンドル皇帝、アンチチートシステム蠅人間と連戦し、キュウをマリアステラから取り戻すために思い切りMPとSPを消費した。そして竜神ディアナ・ルナーリスと無限の取り巻きモンスターだ。


 約十億を誇るフォルティシモのMPとSPが目に見えて減ってきている。それを確認したフォルティシモは、情報ウィンドウから従者たちへの音声チャットを起動する。


「おい、取り巻きがウザすぎる。アルとキャロ、応援に来てくれ」


 すぐにやる気満々のアルティマの声と、怠そうなキャロルの返答があると思ったのだが、二人の声は聞こえなかった。まさか二人に何かあったのかと不安になるが、その不安はキュウに打ち消される。


「ご主人様、マリアステラ様が、特殊な空間、圏外だから通信ができないとおっしゃっていました」

「ここ、ただのフィールドなんだが」


 キュウが困ったように耳を折り曲げたので、とりあえず耳を優しく立ててやる。少し落ち着いた。キュウを信じているけれど、念のため自分でも状況を確認する。情報ウィンドウでつう、エンシェント、セフェール、ピアノ、テディベアにメッセージを送ってみたけれど、どれも返信はなかった。


「キュウ、試しに望郷の鍵を使ってみてくれ」

「はい、承知しました」


 キュウはバッグから望郷の鍵を取り出し、すぐに使おうとするが。


「か、鍵に魔力が通らないです」


 ファーアースオンラインの特殊なイベント空間では、通話だけでなく望郷の鍵も使えない。フォルティシモにはキュウをこの場から安全に脱出させる手段がなかった。


「なるほど、効果的な戦術だ」


 敵がやろうとしている作戦は単純明快、退路と補給を塞いだ消耗戦だ。


 いくら最強のフォルティシモでも疲労があることは、キュウと初めて野宿をした時に確認している。このまま何時間も戦えば、徐々に集中力を失い、竜神ディアナ・ルナーリスの白いブレスを受けてしまうかも知れない。それでフォルティシモが死ぬことはないだろうが、キュウと天烏には耐えられない。


 竜神ディアナ・ルナーリスとその無限の取り巻きを、フォルティシモ一人だけでキュウを守りつつ討伐しなければならない。


「この程度で、最強のフォルティシモを倒せると思ったか」


 フォルティシモはわざと笑みを浮かべて見せた。




 ボスモンスターの取り巻きモンスターが無限湧きする。だからプレイヤーたちは取り巻きモンスターを抑える役割と、ボスモンスターを攻撃する役割に別れる。ごくごく一般的な戦術で、形は違えどピアノが『修練の迷宮』の骸骨モンスターでやっていたことでもある。


 フォルティシモは従者がいたとは言え、基本的にはソロプレイヤーだ。そしてたった一人でどんなボスモンスターをも倒した魔王様である。


 無限湧きする取り巻きモンスターへの対処方法くらい、持っている。


 フォルティシモはキュウを抱き寄せ、キュウを庇うように腕の中に収めた。驚いたキュウの耳の誘惑に負けそうになりながら、フォルティシモは表情を引き締める。


「これから使うスキルはキャストに時間が掛かる。【障壁】に失敗するかも知れないから、キュウは俺から離れるな。絶対に守ってやる」

「はいっ」


 キュウは腕と尻尾をフォルティシモの背中へ回した。キュウの全身がフォルティシモに密着し、キュウの体温と尻尾が良い感じに心地よい。


「………」

「ご主人様?」

「何でもないぞ。さて、使うかな」


 まずは天烏にドラゴンたちを引き離すように伝える。フォルティシモがドラゴンを爆砕し、空の道は開かれていく。


 空が見えた時、フォルティシモは音声ショートカットによりスキルを起動した。


制天アウトクラシア太陽ソル光鉾ランサ


 一瞬にしてフォルティシモのMPが億単位減少した。このスキル設定はフォルティシモの作った【コード設定】の中でも二番目にMP消費が多いのに、発動中は持続的にMPを消費する。さらにスキルを使ってから効果が出るまでに時間が掛かるため、実のところ使い勝手はあまり良くない。


 だが効果が発動すれば、対モンスターに圧倒的な戦果を叩き出す。


「太陽が、もう、一つ?」


 キュウがフォルティシモたちの真上を見上げる。


 そこには直系数百メートルの光る球体があった。球体は何度か明滅を繰り返し、ある時点で、爆発したかのような光を発する。


 光を浴びたドラゴンたちは、粒子になって消えた。


 ドラゴンは無限に湧くため、すぐに次のドラゴンが出現する。そのドラゴンも球体の光を浴びると、粒子となり消える。


 それが何百でも何千でも何万でも結果は同じ。


 フォルティシモのMPが続く限り、効果範囲内のモンスターを自動的に消滅させ続ける光。魔王が作り出した太陽が、竜たちを蹂躙していた。


 取り巻きモンスターは湧いても湧いてもすぐに消滅する。あとは竜神ディアナ・ルナーリスを制圧するだけだ。


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