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俺が召喚されたのは前の勇者がやらかしたからでした  作者: 妄子《もうす》
15.東へ向かう事になった

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その1

 へへへっの照れ笑いで始まった面倒事はすぐに収束するとは思えなかった。


「何かすげぇー!」

 空から降りてきた新太郎は黒の勇者を見て、感動していた。


(……。

 ……。

 ……)

 対照的に俺は頭を抱えていた。


 この後の展開が読めなかったからだ。


 まあ、読むも何もここに黒の勇者がいる事自体全く予想が出来なかった。


 有り体に言えば、困ってしまった。


 どうしよう……。


「ええっと、何でここに来たのかな?」

 俺は引きつりそうな表情を何とか平常に保とうとしていた。


 まあ、兎にも角にも、まずは事情聴取だ。


「え?何か、白兄、冷たいですね」

 新太郎は何も知らずに、率直にそう言った。


 キィッ!!


 俺は思わず空気が読めない新太郎を睨み付けた。


「折角、来たのですから、話ぐらいは聞くべきでしょう」

 新太郎は脳天気に言葉を続けた。


 新太郎は俺の睨みなどお構いなしのようだ。


 フルフル!


 新太郎の言葉を聞いた俺は思わず新太郎をぶん殴ってやろうと思った。


 だが、腕力では適わないので取りあえず踏み止まった。


(だから、事情聴取をしようとしているじゃないか!

 聞こえなかったのか?)

 俺はそう思いながら黒の勇者の答えを待った。


「……」

 だが、じっと待っていても黒の勇者は何も答えなかった。


 もじもじ……。

 ……。

 もじもじ……。

 ……。

 もじもじ……。

 ……。


 したがって、沈黙が訪れていた。


「黒の勇者?」

 いつもと違うキャラ設定に俺は戸惑っていた。


 そして、埒があかないので、再び聞こうとしたが、

「セクハラから逃げてきたのよ!」

と黒の勇者は意を決したように急に叫んだ。


「はい?」

 俺と新太郎は黒の勇者の言葉に対してハモってしまった。


 俺はまたですか?と言う反応だった。


 それに対して、新太郎の方は何を言っているのか、分からないという反応だった。


 ハモった割には、感じた事が全く違うのが丸わかりだった。


「だって、何なのよ、あいつら!」

 黒の勇者のトーンが一段と上がっていた。


「主上はお気に入りの女を手に入れる為に簒奪するし、その息子の東宮は私を妾にするって言うし!

 色ぼけどもの集まりよ!」

 黒の勇者は怒りにまかせて捲し立てた。


「……」

「……」

 俺と新太郎は顔を見合わせた。


 当然、ここでも俺達2人は違う事を考えていた。


「うーん、それって、名誉な事なのでは?」

 新太郎は不思議そうな顔をして聞いてきた。


「はぁい、新太郎君、黙っていようか」

 俺はニコニコしながら新太郎にそう言った。


「え?白兄……」

 新太郎はまだ何か言おうとしていたが、俺は首根っこを掴んだ。


「ややこしくなるから黙っていようね、新太郎君」

 俺は新太郎の耳元でそう囁いた。


「くん……?」

 それに対して、新太郎は不満そうにしていた。


「話がややこしくなって、収拾が付かなくなったら、新太郎君、君のせいだよ。

 そうなると、お仕置きされるかも知れないねぇ」

 俺は新太郎の恐怖を呼び起こす事にした。


「!#$」

 その言葉を聞いた新太郎はみるみる青くなり、慌てて自分で口を塞いだ。


 そして、うんうんと大きく必死に頷いてみせて、同意の意を示した。


「男って、何でみんなこうなの!

 自分勝手で、色ぼけで、不潔極まりない!」

 黒の勇者の罵詈雑言は続いていた。


 俺と新太郎のやり取りを無視する……、というより目に入らないようだった。


 俺は黒の勇者の様子を見て、心底関わりたくないと思った。


 しかし、その事を公言できるほど、俺は強くなかった。


 いや、そんな事より、今すぐ逃げ出したい気分だった。


 事実、この時の俺は、自分でも知らないうちに後ずさりしていた。


 それに気付いたのか、黒の勇者は俺をキッと睨み付けた。


「!%&」

 俺はその睨みで、体が全く動かなくなった。


 女性は向こうの世界でも優秀な言霊遣いなのだろう……。


 一瞬で、俺の動きを止めてしまった。


 先程までかわい娘ぶって照れていた事が嘘のようだった。


 あ、でも、何も言われていないか……。


「そ、それは大変だったね……」

 俺はもうそう言わざるを得ないほど追い込まれていた。


 ここで、否定の言葉を発したら完全に命が無くなっている場面だった。


 分かる人には、俺に大いに同情している事だろう……。


「そうなのよ!」

 黒の勇者は味方を得たとばかりに、嬉しそうに愚痴を話し始めた。


 グチグチ……、くどくど……。


 俺は命が助かった事に安心して、正直な所、その後の愚痴は全く耳に入ってこなかった。


 グチグチ……、くどくど……。


(まだ愚痴っている……)

 ようやく俺が正常な思考に戻り、そう思えるようになっても黒の勇者の愚痴は続いていた。


(まあ、余っ程、腹に据えかねたんだな……)

 俺はそう感じられるようになっていたので、ある意味では黒の勇者に同情していた。


「ん?何?」

 黒の勇者は俺が生暖かい視線を送っていたのに気が付いたようだ。


 と同時に、吐き出すものを吐き出しきったといった感じでスッキリした顔をしていた。


(こっちはゲッソリだよ……)

 俺はそう思ったが、ゲッソリした顔を見せる訳にはいかなかった。


 攻撃の矛先がこちらに向かうのは必然だからだ。


「ええっと、逃げてきたんだよね?」

 俺は誤魔化すようにそうに聞いた。


 苦し紛れだったが、俺にはそれ以上の言葉が思い浮かばなかった。


 やっぱり、俺はまだ追い込まれていたままだった。

 

 よって、身の安全という点では覚束ない状況だ。


 だが、不思議な事に、先程まで何故か優位に立っていた黒の勇者の態度が変わった。


 急に俺の事を上目遣いでジッと見るようになった。


(今度はお強請りかい!?)

と俺は心の中でそう突っ込みを入れて、憤慨しようとしたが、

(待て待て、焦るな!)

と自重した。


 まだ、自分の身が完全に安全になった訳では無いと感じていたからだ。


 俺は本能的にここは踏み止まった。


(もしかしたら、この世界に来て、最大の危機を目の前にしているのかもしれない。

 慎重に行かないと……)

 心の中で、今更、言葉にするまでもない状況だった。


「そう、逃げてきた。

 行く所がないので、ここに来た」

 黒の勇者は呟くようにそう言った。


「……っ」

 俺はこの後の事を考えると、頭が痛くなった。


 とは言え、姫宮達と相談しない訳にはいかなかった。


(俺は果たして、この状況を無事に切り抜けられるのだろうか?

 いや、命さえあれば、めっけものかも知れない……)

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