その1
俺は罪悪感と無力感を抱えながら姫宮達3人の後を必死に追った。
タッタッタ……。
そして、俺達4人は敵を振り切るべく、山道を駆け上がっていった。
はぁ、うげぇ、ドタドタ……。
ただ俺はもう心臓がバクバクで息も絶え絶えで、死にそうになっていた。
なので、罪悪感と無力感に満ちたまま逃亡するという訳ではなかった。
情けない話である。
情けない話なのだが、今は必死に逃げる以外やれる事がなかった。
(女御様の為にも、ここは逃げ切らないと……)
「もう少し、頑張って下さい」
「あんた、もっと気合い入れて走りなさいよ!」
「白の勇者様、しっかり」
などと死にそうな俺に対して3人は容赦なく急かし続けた。
俺はもうダメかも知れないと思った瞬間、小さな古びた祠が道の両端に対で祭られているのが目に入った。
ひっ、ひゃーん……、すぽっ。
(あれ?なんか不思議な感覚……。
何かを突き抜けたような感じだな)
俺はそれを見ながらそう思った。
ゴロン、ゴロン……。
祠に気を取られていた訳ではなかったが、盛大にコケてしまった。
(しまった!
追っ手がすぐそこに!)
俺は焦って後ろを振り返ったが、そこに追っ手の姿はなかった。
「何とか、ギリギリ間に合いましたね」
右近はホッとしたようにそう言った。
「大体、コイツが情けなすぎるのよ!」
左近は心底呆れていた。
「まあまあ、無事に辿り着けたのだから」
姫宮はいつも通り取りなしてくれた。
はぁはぁ……。
うぐ……。
姫宮は息を切らせていたが、俺みたいに死にそうって感じではなかった。
右近と左近においては、ちょっと運動しただけって感じだった。
(確かに、俺、情けなすぎる……)
とは言っても、疲れすぎて今は起き上がる事もできなかった。
ぐへぇー……。
(でも、どうして敵が急に消えたのだろうか?
不思議なだな)
俺は思った事を口に出せないくらい疲労していた。
「これはまたと特質すべき体力のなさじゃな」
急に声を掛けられたので、びっくりして俺は顔を上げて声の主を見た。
すると、いつの間にか、俺の目の前に髪がなく、眉毛も髭も白い老人が立っていた。
(いつの間に?
全く気配がなかったけど……)
俺は老人のただならぬ雰囲気に圧倒されていた。
見た目は人の良さそうなじじいだったのだが。
「導山先生、白の勇者様をお連れ致しました」
右近はそう言うと、丁寧に頭を下げた。
隣にいた左近も慌てて頭を下げた。
「そちらのお方はもしや」
導山は姫宮を見てそう聞いてきた。
「はい、一の姫宮様です」
右近は導山にそう答えた。
「ようこそ、一の姫宮様。
事情は猫蓮から聞いています。
気の利いたお持てなしはできませんが、どうぞごゆるりとお過ごし下さいませ」
今度は導山が丁寧に姫宮に言った。
(聞いたって、いつ?)
俺はそう聞きたがったが、他の3人が当たり前のような感じだったので聞けなかった。
「ありがとうございます。
早速ですが、導山先生に白の勇者様のご指導をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
姫宮は導山にそうお願いした。
姫宮のお願いに導山はすぐに答えずに、俺の方を見た。
「まあ、それは白の勇者に聞いてみないと分かりませんな」
導山は再び姫宮の方を見てそう答えた。
姫宮は導山にそう言われて戸惑った。
隣にいた右近と左近も怪訝そうな顔をしていた。
「???」
俺も俺で導山がどうしてそう言ったのかが分からなかった。
俺はようやく体を起こせるようになった。
(よっこらせ……)
だが、立ち上がるまで体力が回復していなかったので、その場に座った。
「白の勇者よ、お前さんは道を選ばなくてはならない」
導山は俺に向かってそう言った。
「道ですか?」
俺は当然のことながら何を言われているのか分からなかった。
「左様、道をじゃ。
お前さんはこの世界に召喚されて色々と戸惑っていると思うが、この世界でどう生きるかの選択をしなくてはならない」
導山はゆっくりと語り続けていた。
「確かにそうですね」
俺は導山が言いたい事が分かったし、納得した。
「ほぅ、お前さん、中々察しがいいな。
それに順応力も高そうじゃな」
導山は意外そうな顔をしてそう言った。
(今、褒められた?)
俺はそうは思ったが、嬉しくはなかった。
こういう場合、次に大体けなされている事が多い事は経験的に知っていたからだ。
「じゃが、致命的に体力が無さ過ぎじゃな」
今度は導山の表情がとても残念そうになった。
(やっぱり思いっ切りけなされてしまった!)
俺は想定通りだと感じた。
「まあ、何にせよ、今は体を休めて、今後の事を考えられる状態にせねばな。
まずは温泉にでも入って食事でも取りなされ」
導山は俺にそう言った。
「はい、ありがとうございます」
俺は休める事になったので感謝した。
「姫宮様達もまずはごゆるりとなさって下さいませ」
導山は姫宮の方を向いてそう勧めた。
「そうですね、そうさせてもらいます」
姫宮はそう言うと、右近と左近と共に宿坊へと歩き出した。
俺は何とか立ち上がると、フラフラの足でその後を追おうとした。
「そっちは女性専用じゃ。
お前さんは、こっちじゃよ」
導山は俺にそう言うと、逆側の宿坊を指差した。
(まあ、普通、そうなるよね……)
トボトボ……。




