神々の慰め
ここはいつかの、どこかの、とある会議室。
その会議室では、大人気となったゲームのメディアミックスについての会議、今回は特に、アニメ化に向けた会議が行われていた。
「……では、基本はゲームのストーリーを踏襲して、レベルアップやステータスなどのゲーム要素については特にアニメでは言及しない方向で、シナリオライターさんにはそう伝えましょう」
「あ、ゲームの制作陣のみなさんから、アニメについては絶対にお願いしたいことがあるという希望を預かってるんですけど……」
「何です?」
「どうも、あるキャラクターをほんの少しだけでもいいから、どうしても登場させてほしいらしいんですよね」
「あるキャラクター、ですか……?」
ゲームの制作陣は激務だ。考えられないくらいのブラックさで激務だった。
そんな彼らを支え、助け続けた存在がいた。
彼らは、その存在をどうしてもアニメに出したいと願った。
デバッグ用疑似プレーヤーAIナンバーシリーズ。
000000001から始まったAIナンバーシリーズは既に7ケタの終わりを迎え、8ケタに突入しようとしていた。
地獄のデバッグ作業をサポートしてくれる、最高の友にして、かけがえのない戦友。
このゲームを生み出した神とも呼べる制作陣はみな、デバッグ用疑似プレーヤーAIナンバーシリーズに本気で感謝していた。
机の下で寝袋に入って仮眠をとっているときも。
やけくそでコーヒーショップに行って大量のコーヒーを買い込んだ時も。
それは本当に大丈夫なのかという分量のエナドリをキメた時も。
いつも彼らを一番近くで支えてくれていたのだ。
彼らはそんな戦友を番号などで呼ばなかった。
彼らはその戦友、デバッグ用疑似プレーヤーAI-No.シリーズをこう呼んでいた。
………………AIN、と。