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5品目 ミルキーワームは女性の敵だ(byフェルミ)

お願いします。

評価を。

何卒、評価を。


トントントントン……

軽快なリズムが屋台からもれる。

フェルミが野菜を切っている音だ。

ちなみに切っている野菜は茄子。

使っている包丁はきちんと裏押し出ており、綺麗に研がれてもいる。

そんな包丁を使っているのだから、きれいに切れると思われがちだが、切られた茄子は皮一枚でつながっていたりする。

フェルミは気付いていないようで、そのまま茄子を水のはったボールの中へ入れた。

実は彼女は今、料理とは別のことに……ディバがその手に持っている七色のウネウネしたアレが気になっていた。


そうミルキーワームのことである。

「ん…フェルミ。どうしたの?」


ミルキーワームを見ていたフェルミが気になったのか声をかけるディバ。

なんでもないとフェルミは返して、ついでに気になったことを聞いてみる。


「…そのミルキーワームも使うのか?」


「ええ、もちろん」


「いや、私は別のがいいのだが」


「ダメ。道のりはまだまだ長いのよ。それに食糧は無限じゃないんだから。節約できる時に節約しないとね」


にっこり笑いミルキーワームをまな板に置き捌き始める。

切り口から銀色の液体と内臓が溢れ、それはそれは気持ちの悪いこと。

それに意をかえさない彼女は料理人の鏡である。

フェルミもギリギリ耐えていたりする。


「ねぇ。これくらいは出来ないと料理は無理よ」


「…別に構わない。王女は料理しなくてもいいのでな。料理はシェフに任せておけばいい」


「でもここでは料理しなきゃ。頼みのシェフは居ないんだから」


「うっ……」


「詰まるんだったら、言い訳しないの」


痛いところつかれ黙るフェルミ。

あんな気持ち悪いものの調理を手伝え…と遠回しに伝えるディバに対し軽くイライラする。


「それでは、何を手伝えばいいのだ?何を作るか決まっているのだろう?料理長」


軽く脅す程度で…と威圧感を出し訊ねて見る。

軽く脅す程度のはずなのにその威圧感からは強烈なプレッシャーや殺気がだだもれし、今や熟練のギルドのハンターであってもすくみあがってしまうほどの威圧感。

しかし


「内臓摘出完了!フェルミミルキーワームの中、洗っといて」


さらりと受け流され、ミルキーワームの中を洗うという苦行までついてきた。


人を呪わば穴二つ


自業自得だ。



ミルキーワームの中をキレイに洗っていく。

血が銀色だったのに対し、肉は見た目と同じ七色。

しかも透き通るような七色。

血管らしきものも見えている。

肉はぶよぶよと弾力があり、微妙に生暖かい中は目さえ瞑れば人間の肉と間違えられるだろう。

こぶみたいな箇所を押すと

ブチュッブチュッ

とミルキーワームの口から銀色の血が出てくる。

見た目が七色を彩る1メートルの芋虫。

顔だけ成虫っぽく鋭い顎をもつ。しかも魔物で自分たちが戦ってたおしたやつ。

まだそこら辺に沢山死骸が落ちているのでミルキーワームが何日間も続くかも知れない。

そう思うとフェルミなんだか自分がいたたまれなくなる。



そんなこんなで料理は進みついに完成した。



「うむ…美味しい!?」


「そうでしょう。他では滅多に食べられないよ」


あのミルキーワーム見た目とは裏腹にとても肉厚とジューシーで脂がのっている。

その上、七色それぞれに味に違いがあり

赤色は豚肉

青色は魚肉

黄色は野菜

緑色は果物

紫色は鶏肉

オレンジ色は牛肉

という風に別れている。

その特殊な食材を使った料理はこちら。


ミルキーワーム青と黄色のサラダ


ミルキーワームの七色パンチェッタ


ミルキーワームの緑色のアッサリなピンク色のコッテリなジューシーステーキ


等々。


「そういえば、ディバは何故屋台をやろうと思ったんだ?」


「それはね。私の境遇からなのよ。あまり詳しくは話せないけどね」


「ほう。とても気になるな」


「うふふ…それはね。お師匠様のお陰。あの方はね。私にいろんなことを教えてくれた。料理に武術に魔法に勉学。ホント感謝したりないくらいいろんなものをもらったわ。このディバイン・グローリーて名前もお師匠様につけてもらったものよ」


「ということは赤ん坊からの付き合いなのか」


「えっ…」


「なんだ違うのか?」


「…えっいや…そ…その…うん」


ディバの言葉の歯切れが悪くなる。

その際にフェルミは彼女の困惑する顔を見た。

多少ではあるが困惑した顔だけを見ると別人のように見えた。

もっと聞きたいと思った。

しかし、ディバの困惑した顔を見ると心が痛くなる。

フェルミは聞くの辞めることにした。

根掘りはほり聞くことが救いじゃないと思うから。


「………」


「………」


だが、困ったことに気付いてしまった。

とてつもなく空気が重いことに。

フェルミは重い空気が苦手だ。

これじゃあこちらが参ってしまう。

そう思った彼女はピンク色のミルキーワームのステーキを一口大にきり口に含む。


「それにしても、旨いな。そういえばこの色は何味なんだ。これは知らない味だな」


自分にできる話題の提供。

フェルミはこんな空気は嫌な為、精一杯だ会話の種子を蒔く。

そのかいあってディバは旨いって言葉に反応し、停滞していた会話は復活を遂げた。

しかし、ディバの放った一言によりフェルミは撃沈する。


「ピンクは人肉よ」


「はっ?」



「ちなみにミルキーワームはバーブルの幼生よ」


フェルミは絶望した。

フェルミは目の前が真っ白になった。


何故ならバーブルは触手蝿と呼ばれる触手がある2メートルの魔物。

他の種のメスに産卵し産ませ女の敵とまで言われる魔物。

ミルキーワームがメジャーにならない理由はここにあったりする。

彼女は知らないだろう。

屋台にミルキーワームが5匹積んであることを。

願わくは彼女に幸あらんことを。

コメントクダサーイ

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