9品目 パプリカ爆襲帳
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何卒評価を
スラヤンの街。
聖下暦215年に難攻不落の要塞ライラ城塞の周りを取り囲むようにできた街。
70年とできてからまだ間もないが城塞に勤める兵士が異常ともいえるほど多いため商人たちや科学者、近くの山脈から良質な金属が採れるため多くの鍛冶屋がこのスラヤンに移り住んでいる。
山々に囲まれ魔物の巣窟となっている森が王都との行き来を困難にさせているため、城塞内に広大な農場や酪農が開拓してあり、農作業や卸売りはもっぱら兵士たちの日課となっている。
これは50年前に決められたことで当時の司令官だったアイリーニケ・イーグルアイズは兵士たちに食べ物の有り難みと農作業の楽しさ伝え、結果として農作業を行うことにより兵は屈強になりスラヤンの街とアルケー城塞を守ることに繋がった。
元々スラヤンの街はアルケー城塞を攻略するためにゲリラが造った拠点だった。
城塞を取り囲む程の大きな迷路のような拠点。
当時の建造物の中では珍しく、普通のコンクリートではなく竜灰と呼ばれる特殊な灰を使った耐魔強化コンクリートを使った拠点として申し分なく現在の砦の外壁並みの防御力実現させた。
だが拠点が完成して9日後、城塞が攻めこまれるか否やの緊迫した状況のなか、突如現れた何者かによりゲリラは断末魔と大量の血液のみを残して壊滅。
何名か生き残りがいたが遊撃部隊として拠点をあとにしていたため助かったという幸運な者たちだけだった。
生き残ったものたちは降伏もしくは逃亡しゲリラは完全に沈黙した。
ゲリラが残した拠点は城塞からは攻めにくい構造となっていた。
城塞から攻めにくいということは外側からも攻めにくいということ。
拠点を街に改装し民間人を招くことにより拠点の不法占拠を困難にし、あえて拠点を街として残すことで戦時下では城塞を戦火から守る防波堤なり、数多の戦いから城塞を守り勝利をもたらした。
こうして城塞は大陸一攻めにくいと言われるようになった。
またゲリラが何者かに壊滅させられるところを見ていた城塞の兵士たちは何者かを天使と命名。まだ名も無かった城塞は天使の名を借りアルケー城塞と名付けられ、絶対勝利の代名詞になる神話を打ち立てるほどとなった。
現在スラヤンを統べるのはスラヤンの3代目町長ゼイロス・ファイン
アルケー城塞司令クラトス・パワード
スラヤン通商連盟盟主ビアー・バイオレンス
スラヤンにて最終決定権あるのはゼイロス・ファインのみだが彼は味方を増やすためクラトス・パワードとビアー・バイオレンスに限り最終決定権を暫定的にもたせている。
スラヤンの行政、軍部、市場全てが協力すれば年々強くなる魔物にも柔軟に対応できると語られたが実際は不確かなもので柔軟な対応がとれているかといえばそうでもない。
魔物が出たら必ず後手にまわるし、いざ討伐となると10人で下級一匹(本来なら辺境の兵士でも3人で充分。王都騎士団なら1人で2〜3匹は倒せる。)しか倒せない。
人数の多さと外壁の強固さに救われてきたがこのままでは陥落してしまうだろう。
冒険者たちの中でその事に気付いた者たちもいたが魔物が多く兵の練度が低ければ依頼も多いため安定した以上の収入を手にし、金に目が眩み残る者が多い。
傭兵と城塞と元拠点の街どれが欠けてもスラヤンは滅ぶだろう。
水面下ではこれ程切羽詰まっているのだ。
これを改善すべく
ゼイロス、クラトス、ビアーは何かを計画し人を集めているらしい。
「で、問題はその何かが何なのか分からない事なんです。貴女さえ良ければ持ち前の料理の腕でアルケー城塞に潜入して探ってもらえませんか?」
深刻そうな顔で頭を垂れながらメリスは協力を仰ぐ。
「あのさ潜入のイロハって知ってる?怪しまれることなかれって。いきなり屋台の人が雇ってくれって可笑しいでしょ?それに私は素人なのよ。無理でしょうよ」
常識でしょ!と返答し素人を主張するディバ。
潜入のイロハを知ってる時点で素人ではないような気がするがそこはそれ。
「貴女方は勇者とその従者だ。潜入くらい朝飯前ではないのではないか?」
それくらい自分でやれと遠回しにフェルミは挑発する。
「それは侵害です。私たちは神の神託により選ばれた者です。エキスパートだから選ばれたのではなく、心清き者として選ばれたのです。故に技能に穴があったとしても問題無いのです。わかりましたか異端者?」
「い…異端者だと…。このワタシが異端者だと!!」
フェルミは顔を真っ赤にして激昂。
今にも襲いかかりそうだったので佐渡は彼女を落ち着かせる。
「まあまあ…そんなカッカしないでほしい。此方も結構大変なんだよ」
「どう、たいへんなのか。教えてほしいな」
「情報が少なすぎる事なんだよ」
「それは確かに大変ね」
「師匠。私はいい情報持ってますよ!」
やっと来た出番に歓喜しながら、ビシィとポーズをつけるドレイク。
「何故あなたがどんな情報もっているというのです?とポーズをつけるドレイク。
「何故あなたがどんな情報もっているのです?出番が欲しいだけならすぐ消えていただきたいのですが?」
がメリスにあっさりと切り捨てられる。
しかし、そんな彼女を手で制しのっぺらぼうはドレイクに近寄り優しい口調で言う。
「我々がもつ以上の情報があるのなら話しに加わるといい。俺達は早く何かを見つけ出し、七つある勇者の魂かどうか確かめねばならないのでな」
「ありがとうございます。のっぺら……ブランデルさん」
「今のっぺらぼうと言いそうになっただろう……。まあいい、してどんな情報を持っているのだ?」
「はい、この“パプリカ爆襲帳”にしっかりと書かれているかも」
パッパカパンパンパーンとドレイクが取り出したのは一般的に売っている自由帳。
その名も“パプリカ爆襲帳”。
大きさは普通のA4サイズ。
値段も20トライと一般的でお子様でも手が届くお値段。(1トライ日本円で5円なので100円。一人辺りの月収の平均が2メガトライなのでかなり安い。ちなみに1万トライで1メガトライです)
ただ破裂したパプリカが表紙になっていてとてもシュールな一品に仕上がっており、こんなもの買うならと多少高くても表紙がまともな“白騎士修練ノート”を買う人が多い。
そんなシュールなパプリカ爆襲帳を使っているのと語尾にかもをつけたドレイクを見て色々残念に思うディバだった。