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21話 聖剣祭準備・後編

 聖剣祭において聖剣学部のこなす役割は数多くあります。


 その中でも『ペア』として行動する意義がもっとも明確なのが、『剣舞』と『ハント』というプログラムです。


『ハント』は二人ひと組になって、放たれたモンスターを狩る催しです。

 年度ごとに『数を競う』『時間を競う』が入れ替わるらしく、本年度は『数を競う』催しのようでした。


 そしてペアを早い段階で組むもっとも大きな理由とされるのが『剣舞』で、これは、対戦形式でおこなう演舞、すなわちダンス種目なのです。

 これは振り付けの段階から自分たちで考える必要があります。


 複数組が同時に同じグラウンドで一斉に踊り始めるものですから、観覧なさる陛下や騎士団の方々の目にとまるよう、少しでも難易度が高く、華のある振り付けを組む必要があるのでした。


 最優秀とされたペアは、聖剣祭のラストにエキシビジョンをおこなう羽目になります。


 私などは絶対に最優秀に選ばれたくないと思うので、逆に意識の高い方々は最優秀を狙うのだろうというのは想像にかたくありません。


 まあ、その最優秀は六学年すべての中からひと組しか選ばれませんから、一年生がとるのは容易ならざることなのですが、どうにもガートルード様はそれを目指しているようで、そのへんの意識の高さも、私が彼女と組みたくなかった理由なのでした。


 一方で私の相方となったハンナさんはといえば、


「最優秀を狙ってるんだ。それで、三学部同時合格の、優秀なアンに組んでもらったんだよ」


 ということでした。


 見誤った。


 しかし私はハンナさんと親友になり、あの日の意味不明な行動の意図を聞くか、そうでなくても私がなにをしようと目こぼししてくれるような、完全なる味方と認識されることを願っておりますので、『やめとこう』とも言えません。


 しかしあとからアレコレ文句を言われても困るので、私はいちおう、言いました。


「ハンナさん、私は、運動があまり得意ではないのです」


 祖父のパークは本当に優秀で、『消費スタミナ減少』『警戒歩行』『穏形(おんぎょう)』などの『音もなく疲れずに行動を続ける』系の能力は豊富なので、ダンスもまあできそうな気はします。


 しかし、それとは別に、私の心が、運動を不得意としているのです。


 私は動くのが嫌いでした。泥だらけになるのも嫌いです。


 そもそも『努力をする』というのが大嫌いで、私は努力をするぐらいなら迷いなく目標のほうを低くするタイプなのです。


 だから剣舞の内容を私が決めるのなら、『要求運動量、要求技量が低く、それでいてそこそこ見栄えが出るもの』にします。


 ところがハンナさんから提案があった剣舞の内容は、どう見ても『要求運動量、要求技量が高く、当日までに訓練してこのレベルに到達しなければ失敗する』というようなものなのでした。


 私はそんな努力をしたくはないので、重ねて告げます。


「このあいだの身体測定でわかったパークも、後方支援というか、軍師というか、そっち系ばかりなので、剣技もそう大したものではないのですよ」


「パークはそうかもしれないけど、剣技のパークがなくって聖剣学部に合格したってことは、スキルがあるんだろ?」


 スキルという言葉は、祖母や祖父の時代とは意味が変わっているのでした。


 昔の『スキル』は今で言う『パーク』なのです。

 それは鑑定眼を持った人により観測される、明文化される能力なのでした。


 けれど今の『スキル』は、もっとあいまいな、明文化されないものを指します。

 たとえば同じレベルの『剣技』を持っていても、動きに華があったり、とっさの時によりいい判断ができたり、『使うぞ』という意識なしでパークを使えたり、そういう『慣れ』とか『パーク使用のうまさ』などを現代では『スキル』と呼びます。


 つまり私が自己申告でどれだけ『スキルなんかないんです』と言おうとも、私にスキルがないことも、また、あることも、私自身ふくめ誰にも証明はできないのです。

 実際に動いて見せてあきらめられるしか、ないのでした。


 しかし私は実際に動いてみてあきらめられたり、ガッカリされたり、そういう『なんだ、思ったほどできないじゃん』と人に落胆されることが大嫌いなのです。

 私は努力もせずに人からチヤホヤさるのが好きなせいか、努力した結果人から見下されるのをなによりおそれているのでした。


 どうにかならないものかと悩みますが、どうにもなりません。

 私はハンナさんの親友になってしまいたいのもあり、どうやら、これから聖剣祭のあいだまで、努力を強いられることになるのを予感し、途方に暮れました。

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