トモダチ?オイシイノ?
「えーっと…オトモダチってナンデスカ?タベモノ…?モッテナイヨ…」
つい、カタコトになってしまったのは言うまでもない。
「えっ?その、友達とは一緒に遊んだり、笑ったりするアレだっ!」
「…本気?」
僕は、疑うような目でジッとみる。
「いや…確かに俺のような家格の者が、第四皇子の友達なんて、失礼以外ないだろうが…話してみたいと思ってな…」
「そういう意味ではないけど…。君、だれ?」
「あっ、いってなかったな…じゃなくて、いってませんでしたね。俺…私は、シュダディズ・カイル。侯爵家の三男だ…です。」
「…嫌、無理に敬語使わなくていいよ。」
「あっ…そうか?では、遠慮なく…」
「それより、確か第三席だったよね?」
「ん?ああ、そうだな。」
「君の家名は?」
「俺の家名はエテノールだ。ついでに、カイルで構わない。」
「そう?エテノール侯爵家といえば武人でかなり有名だよね。」
「ん、そうだな…。まぁ、俺は兄達より武術に優れてないからな…せめて、勉強だけはと思って頑張った。が、やはり王族には敵わないな…。
首席から第二席まで殆ど王族だ。やっぱ、才能の差なのか。」
「兄上達が異常なだけだよ。僕も兄達より劣ってるし、もっと頑張らなくちゃいけないんだ。」
「そうか…?だが、似たような感じだな…。兄姉がいると大変だよな。」
「全くだよ。家族仲はそこまで悪くないと思うけど、やっぱり合わない人間っているよね。」
「あー、ルフェニタリ皇子は殿下たちと仲良くないのか?」
「ラピスでいいよ。まぁ、兄上達とは仲がいいというか…単に可愛がられてるだけ。まぁ、ロイ兄には嫌われてるけどね。」
「何でだ…?殿下達はラピス皇子を溺愛していることで有名だし…。特に、アメリア様は随一だ。ロイド皇子はまぁ…確かに、関わりにくいかもな」
「皇子はいらないから、ラピスでいい。」
「…いや、流石に皇子を呼び捨てって言うのはな…周りの目が。」
「気にしなくていいよ。僕は居ても居ないようなものだし。」
「いや、そんな事ないと思うが?」
「まぁ、そんな事はどうでもいいよ。カイルは何でシルバ学園に来たの?」
「んー、そうだな…。騎士資格が取れるって言うのと、親父が名誉回復の為に少しでも名声をあげたいらしくてな…。兄達は既に違う学院だし。
あと、皇子方と仲良くなれだとさ。あっ、勘違いしないでくれよ?親父の言う通りにしてるんじゃなくて、ただラピスが気になったってだけだ。何て言うか、強者のオーラだな」
「強者のオーラって…。まぁ、そんな事は気にしてないけど。名誉回復って言ったよね?確か、侯爵が事件を起こしたとかそんな報告があった気がするような…?」
「あぁ。領地でな、魔物が大量発生したんだ。領主である親父はミスを起こしちまった。間違って民を殺してしまってな。正義感に強い親父は耐えきれず、遺族に謝罪と金を渡した。
が、やはり親父はそれでも罪悪感にとらわれていたのか、国王に報告した。民を数名、殺してしまったとな。」
「まさか、それで王が罰を下した訳じゃないよね?」
「あぁ、勿論だ。陛下は遺族が許しているのなら口出しせん、と言っていただけたのだが、周りの権力者はそうはいかなかった。何せ、自分の地位を少しでもあげようとする奴が多いからな。上位に入っていた親父は目をつけられ、大分落ちた。それでも、民は親父を慕って残ってくれたがやはり、生活は厳しい。だから、次男が騎士団に勤め、長男が内政に取り組んだ。が、それでもやはり足りなくてな。こうして俺が冒険者をしながら学園に通ってるって訳だ。」
「…つくづく貴族っていうのは嫌だね。そのトップに立ってる王族が言うのも何だけど…。」
「まぁ、後悔はしちゃいねぇ。親父は今まで領地と民を守ってきたからな。今度は息子である俺達が親父の代わりを勤めるんだ。」
「いい心意気だね。」
「元気が取り柄だからな。」
「何それ。」
二人して顔を見合せ、笑った。
「おっと…そろそろ始まるな。トーナメント制だってさ。ほんと、シルバ学園の試験は変わってるな。」
「全くだよ。試験に司会とか取り入れるなんて、エンターテイメントを狙ってるのかな?」
「エンターテイメントって何だ?」
「気にしなくていいよ。」
「うん?わかった。」
うん、正直で結構。
「ルフェニタリ殿下!そろそろ始まりますので、王族控え室に!」
「ん?君だれ?」
「アメリア皇女の従者です。」
「そう?なら、すぐ行くよ。」
「じゃあ、また後でな。俺達普通の貴族は違う控え室があるからな。」
「へー、そうなんだ。じゃあ、また後で。もし、トーナメントで当たっても手加減しないからね?」
「おう、こっちこそ。」
「殿下、お早く。アメリア様が…」
死にそうな顔でこちらに綴ってくる。
「……君も、大変だね。」
「恐れ入ります…。」
僕は姉に振り回される従者に少し……というか、かなり同情した。