愛とは時に残酷である
キャラの性格とか口調、ころころ変わると思います。どうか、寛大な心で許してほしいです。
「ラピスちゃん、聞いたわ…。入学筆記試験と実技、受けるのでしょう?王族は受ける必要ないのに…」
自分のクラス席に座っていると、リア姉が顔色を悪くしながら、そう告げてきた。
入学式が終わったあと、僕はここへ案内された。なお、場所は日の当たりの良い窓際席だった。
「まぁ…手違いがあったようで……。」
「また、なの…?やっぱり、外は危険よ。ラピスちゃんは天使だもの。きっと、みんな嫉妬してるんだわ…ラピスちゃんが可愛すぎるから。」
「リア姉…僕は天使じゃないよ。」
「ふふ…モノの例えよ。だって、ラピスちゃんはこの世界の誰よりも可愛いもの。私やお兄様たちよりも…」
儚い雰囲気のリア姉が悩む仕草をしながらブツブツ何か言っている姿は、周りから見ればとてつもなく可愛いのだろうが………僕から見れば、何をしでかすかわからないので恐怖でしかない。いや、リア姉が美少女なのは認める。ほんとに美少女だからね。
「リア姉、それは身内贔だよ。」
「もうっ…ラピスちゃんは謙虚な所もいいけど、ラピスちゃんの可愛さを分かっていない者が多すぎるの…ラピスちゃんはこんなに可愛いというのに…やっぱり、消しちゃおう?」
そんな軽いノリで消しちゃおう、とか言わないでください。
「いや…だからダメだって。」
「そう…?ラピスちゃんがそう言うなら、我慢する。けど、何かされたら言ってね…?お姉ちゃんがラピスちゃんを悲しませる奴なんて私が消してあげる。」
「はっ…はーい。」
ここは頷いておくべき場面だ……。怖い。リア姉が、物凄く怖い。ゲームのリア姉ってこんなんだっけ?…ちゃんと聞いておくべきだった。と、今更後悔しても遅い。
「リア、またラピスの教室にいたのか?あまりラピスに迷惑をかけるんじゃないぞ。無論、不届きものは消すんだ。」
兄上えぇぇぇぇ!そこは止めて!!
「シリウスお兄様。勿論です。ラピスちゃんを仇なす者は、このリアが許しません。精霊に誓って、ラピスちゃんは守るわ。」
精霊にかけちゃったよっ!精霊に誓うという事は、精霊術士のリア姉にとって危険な事だ。何たって、精霊との誓いを破ると死んでしまうから。精霊は約束事を重要視し、ルールなどを破ったものは無慈悲に消されてしまう。
「流石、帝国一の精霊術士だな。」
「お兄様は剣聖ではありませんか。」
そう、シリウスは剣聖なのだ。ファンタジー世界でよくある…剣聖。
いいな、それ。ザ・主人公って感じがして。
「時期王たる者、これくらい出来ないと王になる資格などないからな。が、父上の剣は未だに越せん。」
「お父様の力は規格外ですから。」
父上は剣聖の上をいく剣王。剣聖も充分規格外なのだが、剣王は大国を滅ぼすことも出来るほどの能力者なのだ。
「ロイドは我が国で一番の秀才だしな。知識についてはロイドが一番だろう。少し頭が固いがな。」
ロイドは頭脳派皇子。僕は賢者の称号を賜っているが、ロイドは大賢者という称号を持っている。
「ええ、そうですね。エリザ姉様は傾国の美女とも言われていますし、人を操るのが得意ですからね。」
エリザの容姿は言葉に表せないくらい美しい。その姿を見るだけで、血縁以外の者は一瞬でエリザの虜となる。
「リア、その言い方ではいらぬ誤解を招いてしまうよ。」
「そうでしたわ…」
「まぁユリウスは何だかんだ言って、エリシュオン聖騎士団団長を勤めるほどの回復魔法の使い手だからなぁ。つくづく王家は才能と人材に恵まれている。」
ユリウスは女好きではあるが、超越した回復魔法と統率力で若くして団長にまで上り詰めた実力者だ。まぁ…普段は頼りないけど、いざって時はとても頼りになる。魔法が得意な僕だけど、回復魔法だけはユリウスに敵わない。
「ええ。ですが、一番凄いのはやはりラピスちゃんよ…。可愛くて優しくて賢い。それに魔法だって使えるし剣も使える…。全てに秀でた自慢の弟だもの…お姉ちゃん、嬉しい…」
いや、僕は皇家の中で1番劣ってるんですけども。
「そうだな。ラピスほど優れた者など他におるまい。」
「「ねー、ラピス「ちゃん」」」
どの口が言うかっ!!心の中でツッコミを入れながら、僕は窓の外を見た。
「兄上、リア姉…自分のクラスへ戻っていただけますか…。」
遠い目をしながら呟く。あ、ラックだ…僕的にはカラスにしか見えないけど、こっちの世界だとラックと言うらしい。
「どうして…?」
「物凄く目立ってるんですよ…。遠巻きにされてるの、分かりません?」
そう、先程から周りの子が離れていってるのだ。僕、悲しいよ…。
「うーむ…ラピス以外は興味がないから、気付かなかったなぁ。他はゴミ同然だ。」
「それ、時期国王が言っちゃダメなセリフですよ、兄上っ!? 」
マジで、これから国のトップとなる者が僕以外ゴミ同然だ、とか言っちゃダメなんですからね!?
「ラピスちゃん以外は居ないようなものよ…?」
だれかこの人達を止めてーー!
「兄上、姉上そろそろ試験が始まりますよ。試験官が遅れては示しがつきません。お前も、誤解を生むような事をするな。王族の名を汚すのは許さんぞ。全く、今まで通り籠っていればいいものを…本当に使えない奴だな。」
最後の方、小さく呟いていた様ですが聞こえてますよー。まぁ、ナイスタイミングです。 流石常識人。
止められるのはロイド位だからね。他の兄姉が来たら無論、僕の賞賛会を始めるに違いない。が、それだけは絶対に避けたいものだ。
「お前は相変わらずか、ロイド。」
シリウスは可哀想なものを見る目でロイドを見ている。いや、何でだよ。
「お兄様、ロイちゃんはこういう性格なので仕方ないのですよ…。」
「…姉上、そのロイちゃんはやめて戴きたいと何度も…」
「いいじゃない、ロイちゃん、可愛いでしょう…?さぁ、行きましょう。ラピスちゃんの晴れ舞台なのだから、見ない訳にはいかないの……。無理をいって試験官にしてもらった意味がなくなるわ…。本当、権利って便利ね…!」
「それ、職権乱用です…っ!」
「細かい事は気にしちゃダメなのよ…?」
「僕はこの国の未来が心配ですよ…。」
「ふん。さぁ、行きますよ。」
ロイドはシリウスとリア姉を連れて消えた。本当にありがとう!
「はぁー…もう、やだ。」
周りは逃げてるし…これ、絶対友達とか出来ないパターンだ…。なんて残・酷な!!!
ラピス……アメリア……シリウス……エリザ……ロイド……ユリウス……がきょーだいです。




