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魔術部

「ここ、だね……」


「なんか…独特な雰囲気が漂ってるなぁ…。本当に大丈夫か?ここ。」


 今、僕達は魔術部の部室前にいる。

何て言うか、こう…黒いっていうか…ホラーっぽさが滲み出てる。

 

「うーん…学園に認められてるから危険って訳ではないと思うけど……っ!カイル、避けて!!」

 

膨大な魔術の気配にいち早く気付いた僕はカイルを範囲外に突き飛ばす。恐らく、中級魔法!

 

「うっ…おおおぉ!?」

 

 そして、カイルを突き飛ばして距離をとった瞬間…扉が吹っ飛んだ。咄嗟ではあったが、魔力消滅を行い威力を下げた。が、完璧には消し去れなかった為、吸収魔法で事なきを得た。


ていうか、一体何なんだ!

 

「ちょっ、ちょっとー!あんた、どこ狙ってんのよ!?」


「うっ、うっせー!しょうがねぇだろ、手元が狂っちまったんだから!」


「二人とも、そういう問題じゃないでしょ!?扉、壊れちゃったじゃない!とにかく、反省し…あああぁ!?」


 一人の少女が出てきて、僕と目が合うと顔を真っ青にし、指を指している。

 

「なっ、なんだよ!?」


「っ……ひ、人がいたっ!!」


「はぁ!?」


「えっ!?ちょっ、大丈夫なの!?」

 

 騒いでいた二人も部室から出てきて、こちらを凝視する。


「おっ、おい!お前伯爵家だろ!?揉み消せねぇのかよ!?」


「むっ、無理に決まってるでしょ!?普通の家格の人なら説得できるかもだけど、この人は無理!!」


「なんでだよ!?お前、公爵より偉いんだろ!?」

「だーかーら!分からないの!?この人…いえ、この方は第四皇子殿下なのよ!?」


「はぁ!?」


「わっ、私…試験の時見たよ……すっごい魔法使ってたし、本当に皇子様だよ……どうしよう!打ち首にならないよね!?まだ死にたくないよぅ」


 どうやら、混乱してるようだ。

まぁ、そりゃそうだよね。皇子を危険に晒したんだから。まぁ、僕は特に気にしてないんだけどね。

 

「えーと…」


「ひっ!もっ、申し訳ありません!」


「どっ、どうかお許しを!!」


「すまねぇ!」

 

 三人ともに、見事なスライディングの後に土下座を披露した。

 

「いや、まって!そんな事しなくていいから!」


「ラピス、お前大丈夫か?」


「カイル!怪我はない?」


「あぁ、何とかな…。ラピスが気づいてなきゃ、二人ともお陀仏だな。」

 

 その言葉を聞き、土下座中の三人は顔を真っ青にする。

 確かに、一歩遅かったから無事では済まされなかっただろう。

 

「…そうだね。幸い、この場所に僕が居て良かったよ。他の人じゃ、タイミングが悪ければ命を落としていたかもしれない。そこは、よく反省してほしい。」


「っ…本当に、申し訳ありません!」


「もう、土下座はいいから。ほら、立って。で、詳しく話を聞きたいんだけど?」


「はっ、はい!何でもお聞きください。」


「じゃあ、何で室内で中級魔法を使ったの?室内で発動させるなんて、危険すぎる。」


「っ…申し訳ありません!その…中級魔法と言っても、一番弱いものだったので大丈夫かと思ったのですが…そこの男、ルヴェン・クァーティスが魔力の調整を誤りまして…」


「……なるほどね。加減を間違ったって事か。ルヴェン…だっけ?君、事の重大さが分かってる?まず、魔術を室内で発動させる場合はまず、結界を張るべきだ。魔術部員全員が結界を張れないってことはないでしょ?」


「ぐっ…反論できねぇ。」


「その…魔術部は、部員が私達三人しかいなくて…」


「は?……もしかして、三人とも結界が使えないの?」


「は、はい…。」


「……はぁー。でも、本当に三人しかいないの?」


「はい。私が部長のフィリア・ルテットと申します。隣にいるのが副部長のメイ・フォーラント。辺境伯の娘です。それと…先程紹介しました、ルヴェン・クァーティス。子爵家です。」


「ふーん…下位の貴族だね。君だけは中位貴族か。」


「はい…あの、私達の処罰はどうなるのでしょうか?その…家族には迷惑をかけたくありません。どうか、私に厳罰を。危うく、皇子殿下にお怪我を負わす所だったのです。どんな処罰も受け入れる所存にございます!!」


「いや、そこまで畏まらなくていいから。それに、君達に処罰を与えるつもりはないよ。」


「えっ…?でも、皇子殿下に無礼を……」


「あぁ、そういうのいいから。別に僕は皇子って権力をこんな事に使うつもりはないよ。そりゃ今回の事は重大視しなくちゃいけないんだろうけど、厳重注意で充分さ。ね、カイル。君もそれでいいよね?」


「あぁ、別に構わないぞ。怪我はないし、ラピスがそれでいいならいいんじゃないのか?」


「あっ、ありがとうございます!!

でっ、でも…何故皇子殿下がこのような場所に?」

 

恐る恐る聞いてきたのはフィリア嬢。

他二人は立ち直したが、顔は俯いたままである。


「部活見学だよ。3つまで絞ったから見学して決めようかと思って。」


「えぇっ!?皇子殿下が、魔術部に!?」


「いや、まだ入るとは決めてないけどね。」


「あっ、すみません。早とちりを…えぇっと、見学ですよね!?あっ、ちょっと待ってくれますか!?すぐに片付けるので……」


「それなら、僕がやるよ。『物よ、元の位置に戻れ』。はい、終わり。」

 

 これこそ自動収納魔法。元いた場所に勝手に戻ってくれるため片付けも楽々!

 

「すっ、凄い!こんな高等魔法が扱えるのですか!?」


「まぁね。魔術に関しては自分でも才能がある方だと自覚してるから。」


「で、ではご案内しますね!!」


「うん、よろしく。」


「おーい、俺を忘れるなよ?」


「…………ごめん。」


「……ちくしょー。」

 

小さな声で、カイルがそう呟いたのを

 ラピスは聞き取っていた。

 

「えへっ……」

なんか、こんな作品を書いてーという物があったらコメントでお伝えください。

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