ヒロイン登場……?
更新遅れてすみませんー。何だか最近、やる気なくて…
「ラピス様。私、リリーっていいます!その、ラピス様は婚約者っていらっしゃるんですか?」
あざとく首を傾げながら、僕の周りをウロチョロしている少女。
「えーと、まだ決まってない…けど」
「それなら、私が立候補してもいいですか?」
上目使いで首を傾げながら、目をうるうるさせている。
「えっ…?嫌、僕の婚約者に関しては父上がお決めになるから…。それに身分的無理かと。」
この子、本当に頭大丈夫かな。
「えぇー…でも、私!ラピス様の事なら何でも知ってますよ?」
いや、初めて会ったばっかだよ。
僕は君の事、名前しかしらないし!?
「えーっと…エミュリタス男爵令嬢は兄上に好意を持っているって聞いたけど……?」
「えぇ!?そんな噂があるんですか?そんなぁー…。私が好きなのは、ラピス様だけです!」
うわぁぁぁぁ!ヒロイン、予想以上にヤバイ!兄上達にすり寄っといて僕の所まで来るなんて非常識すぎる!僕はそっと視線を逸らす。
無理、この子!!
「ラピス様、どうしたんですか?」
うへぇ…腕にまとわりついてきた!
ない胸を押し付けられても痛いだけです!!女性の皆さん、何かごめんなさい!?
「ちょっと、貴女!皇太子様だけでなく私達のラピス様の周りまで彷徨き回るなんていい度胸してますわね!!男爵家如きが殿下に無礼ですわ!淑女としてあるまじき行為、この公爵家長女ローズ・シェファンスが許しませんわ!!」
輝く金髪に立派な縱ロール!宝石のように透き通っているルビーの瞳!豊満な体をもつ傾国の美女……!確か悪役令嬢だっけ??あと、僕の婚約者候補筆頭!
「きゃっれこわぁい!ラピスさま、リリー怖いです!」
うぅ……くっつかないでくれ。
もはや地獄でしかない!!
女の修羅場とか、怖いんだけど…。
「貴女!殿下から離れなさいといっているでしょう!?」
「ローズ様に関係ないじゃないですかー!」
いや、大いにあるんだ!!
「ありますわよ!!わたくしは殿下の婚約者候補筆頭!つまり、婚約者の席に一番近いということですわ!!加えて殿下に対して無礼な行為と令嬢として、淑女としてあるまじき行為!見逃せるはずありませんわ!平民上がりだからと今まで目を瞑ってきましたが、もう我慢なりません!殿下も何か仰って下さいませ!!」
えっ、僕に振る??
「えっ?いや…僕は。エミュリタス男爵令嬢、とりあえず離れてくれる?」
「もぅ、仕方ないですね!恥ずかしがりなんだから。リリーって呼んでくださいっ。」
うへぇ……、鳥肌たった!!
「おっ、ラピス。お前さっきから何やってるんだ?」
「カイル!!」
こんな所に天の救いがっ!!
「何だ?何か騒がしいな。あっ、ラピス…とエミュ、リ…タス嬢」
カイルとエディスはヒロインを見ると、あからさまに目を背ける。
「ラピス、どうしたんだ?」
続いて皇太子であるシリウス。
「また騒ぎを起こしていたのか。本当に厄介者だな。」
カイルに続いてシリウスにロイド、エディスの四人が現れた。
「あっ、シリウスさま!」
五人の中で、一番権力が強いシリウス兄様に駆け寄っていった。どうやら、エディスよりもシリウスの方が好みらしい。
まぁ、シリアスは皇子様って感じだもんね。カイルは日に焼けていて健康な感じだし。
けど、言い寄っていた相手の目の前で…そういう事するのはどうかと思うよ、ヒロイン。
「やぁ、リリー。ラピスが何かしたかい?」
シリウスは極力言葉を選びながら、何とか逃げ出したいようだ。さすがのシリウスもヒロインは苦手らしい。おかしいな…ヒロインってみんなに愛されるはずだよね?…皆に嫌われてるじゃん。
「いえ、ただ声をかけられたのでお話してたんです!」
いや、何サラッと嘘ついてんだ!
「そうかい?ラピスは大事な弟だからね。あまり近づかないでほしいんだけど。」
「もうっ!私はシリウス様一筋ですから心配いりませんよ?」
どの口が言うんだ!さっき、ラピス様だけです、とか言ってたのに!?変わり身早い!しかも、僕に近づかないで欲しい、っていうのは僕への嫉妬じゃなくて君への嫉妬!!
「殿下!殿下もその娘の行動を、どう思われていますの!?わたくし以外にも、令嬢達からその娘が自分の婚約者に言い寄っていて困る、と相談されているのですわ!!」
またもや悪役令嬢が出てきた。
……名前、何だっけ。
「私がそんな事する訳ないじゃないですか!」
こちらも、知らぬ存ぜぬを通す気のようだ。
「貴方にはほとほと呆れましたわ!何て礼儀知らずなんでしょう!!」
女の修羅場って、こわっ……。
「……あの、ラピス??私は退散していいかな。あの子と極力関わりたくないんだ。」
そういえば、エディスはヒロインが嫌いだっけ。これ、ストーリー的にいいのかな??
「うん、気持ちは分かる。」
「ありがとう!ごめんよ!」
「気にしないでいいよ、別に。」
と、エディスはささっと逃げた。
まぁ、お前はたまたま通りかかった感じだからな……うん。
「ラピス、女って怖いな。」
「……そこは、同感かも。」
何度もいうけど、女の修羅場って怖い。でも、これはまだマシな方なんだろうなぁ。子猫のじゃれあいみたい。
必死になっちゃって、可愛いよね。
「シリウス様、あの人どうにかしてください…リリーをいつも苛めてくるんですー!」
「なっ!苛めてなんかいませんわよ!ただ、注意しただけですわ!!」
「きゃー、こわぁい!」
流石にここまで来るとあざとい…。
そろそろ本気で疲れ始めた為、
仲裁に入ることにした。
「エミュリタス男爵令嬢、とりあえず兄上から離れてもらっても?」
「あっ…ラピス様…。」
ヒロインは分かりやすい程に顔を背ける。
「何よ、ブサイクで根暗の癖に…」
あっ、今ボソッと呟いてたけど聞こえてたよ??へー…、へー。いい度胸してるよね。
「おい、今なんて言った。」
おっふ…僕よりヒロインの近くにいた兄上にもバッチリ聞こえていたようです…。やばい、暴走するな…これ。
「えっ?あっ、あのシリウス様?」
「軽々しく私の名を呼ばないでくれるか、虫酸が走る。これ以上私に近付くなら容赦はしない。それと、ラピスへの侮辱、しかと聞こえたぞ。いい度胸をしているな?男爵家如きが私に話しかけていいと思っているのか?ロイドや他の弟達以外にも沢山の子息令息達をそそのかしているようではないか。随分と身持ちが軽いものだな。心底軽蔑するよ。何よりラピスを侮辱した事が許せない。」
女であろうと関係なく、容赦はしない……さすが、皇太子っ!
「なっ、何を……」
「お前の方がブサイクだよ。醜く歪み、性格の悪さが馴染み出ている。」
ちょっ、兄上!?女の子にそれは…!
「なっ……何よ!!どうせ貴方だって、平民上がりだからと馬鹿にしてるんでしょう!?いいよね、元からの貴族は!!私達平民が払った税で贅沢三昧して!!」
ヒロインは怒りが暴発したらしい。
可愛い顔が台無しになり、凄いことになってる。でも、僕はこっちの方が好きかなー。女性は慎ましく、おしとやかにあるべきだとは思うけど、欲を表に出したり、殺気とか感情が露になった方が、何かいい。いじめがいがありそうだし、子猫みたいで可愛いな。
「っ…シリウス何て、大嫌いっ!!」
涙を瞳に滲ませながら、走っていった。
「まぁ、淑女がはしたないっ…!それに、殿下を呼び捨てにするなんて、不敬罪ですわよ!?」
悪役令嬢はヒロインの行動に絶句している。うん、そうだよね。令嬢だったらあり得ない行動だもんね……。僕、この世界で生きていける自信……ないんだけど。
はぁー…どうするかなぁ。
続けられるかなぁ……




