転生したみたい
最初、読みにくいと思います。徐々に読みやすくしていく予定です。後、最初の話はとても長いです。のんびり見ていただければ。
大陸で最も大きいと言われるエリシュオン要塞大帝国迷宮都市を治めるのは、アーク・ストロムリス・エリシュオン皇帝。
そして、第一皇子である皇太子のシールフェニカリ・シリウス。
第二皇子サークシュアリ・ロイド。
第三皇子ユークエリ・ユリウス。
第四皇子ルフェニタリ・ラピス。
第一皇女クリュニタス・エリザ。
第二皇女ルフェニカリ・アメリア。
神々の加護を受けし者達が住む神聖大帝国でもあるこの国に生れた俺は、第四皇子ルフェニタリ・ラピス。
実は、俺は元日本人でこの世界へ転生したようだ。
中々裕福な家庭に生まれ、優しい両親に恵まれて育った俺は、両親のお陰で苦手な事なんて殆どなかった。勉強、スポーツ、人間関係全てにおいて完璧だった。そんな俺だが、唯一苦手だったものがある。
それは、女だ。どんなに美しかろうと、俺の前では虫のような存在だった。
無論、母は除外だ。逆に、大好きだ。
俺は大のモフモフ好きでな。
生涯の結婚相手は、猫にしようとも思ったほどだ。俺の部屋には大量の猫がいて、まさに猫天国。そんな充実した生活を送っていた俺は、突如死んでしまった。
学校からの帰宅途中、一匹の猫を見かけた。
まぁ、綺麗な黒毛をした猫でさ、目でおってたんだ。それで、だ。向かってくるトラックに気付いていなかったのか道路を渡り始めた。それをモフモフ好きの俺が放っておける訳がない。
咄嗟に飛び出し、猫を捕まえたまではよかった。が、トラックはすぐ目の前。意を決して、猫を歩道へ放り投げる。次の瞬間に身体中に激痛が走った。そこからは記憶がなかった。
目覚めたときにはこの世界にいて、何故か
赤ン坊になってた。まじでビビったよ。
だって、周りには見知らぬ女達がいたんだ。
当然泣き叫んだ。俺的には叫んだつもりだったんだが。
十歳になり、その話を聞かされた時は居たたまれなくなったものだ。
そして、それ以上に驚いた事がある。
ここは、俺の妹がハマっていた乙女ゲームの世界なのだ。
俺も最初は疑ったさ。だが、成長するに連れてそれは確信へと変わっていった。妹の推しはユリウスである。そして、妹が一番嫌っていたキャラがラピスだ。何事も動じず、何だって完璧にこなしてしまうラピスは超がつくほどのヤンデレらしい。それはもう、ヤンデレ好きが引くほどの常軌を逸した存在らしい。
しかも、ブサイクの癖に生意気らしい。よりによってそんなキャラに転生してしまうとは中々の悪運である。まぁ、起きてしまったことは今気にしてもしょうがない。
前世で充実した生活を送っていた俺は、その生活を楽しいとは思いつつも暇にしていた。
面白いことが全くなかったんだ。だが、この世界はどうだ。何とも不思議な事に溢れている。
魔法に剣、魔物、盗賊。
スリルがあって、何て楽しそうな世界なんだ。
前世の日本の生活も良かったとは思う。両親は物凄く優しいし、才能にも恵まれていた。だが、どこかつまらなさを感じていた。
そう、日本は平和すぎるのだ。何かと刺激が少ない日本は退屈でしかなかった。外国にも行ったことはあるが、それもすぐに飽きた。
だって、腐った人間しかいないから。無論、素晴らしい心根をした人もいるにはいる。それに比べると、寂しさは多少あるが…これからが楽しみで仕方ない。だがな、これは乙女ゲームの世界だ。俺が物語通りに動かねば、ストーリーは原作から大きく外れてしまうだろう。何たって、ゲームでは大分重要な役割を持っているから。
詳しくはしらんが、大抵のイベントにはラピスが関わるらしい。
いわゆる、悪役令嬢ならぬ悪役皇子ってとこか。こういう話は悪役がいないと成り立たないほど貧弱なものだからな。
興味がなかったからあまり聞かなかったが、とにかくラピスの行動でストーリーは大きく変わるだろう。つまり、選択次第でこの世界は破滅を辿ることにもなるし、何が起こるか分からない訳だ。と、まぁ…大分ぶっ壊れたキャラだが、ゲームに関わらなければいいだけの話だよな?
なら、俺は全く違う動きをしてみせる。いや、元より正規ルートなんて知らない。そして、現在進行形で俺はそれを実行中である。喋らず、外に出ず、髪も切らない。無論、髪に関しては…まぁ、かなり気に入っているので手入れは入念にしている。一人称は【僕】に変換した。心の中で俺と言ってると、つい口から出てしまうんだ。皇子としてそれは避けねば。
そして、日々部屋に籠って本を読み漁り、特訓をしてステータスを上げまくり、能力向上へと集中した。魔法が使えるとか神だよな。楽しすぎて、逆に死にそう!……と、まぁ。そんな俺なのに、兄姉は俺を可愛がった。何してるの?私も混ぜて?遊ぼう?とか凄くしつこい。父には殆ど会っていない。というか、俺が話しかけない。
父とは幼い頃からあまり会ったことがなくて、他人行儀だ。一緒にいても気まずいので、食事は部屋でとり、極力接触しないように心がけている。別に…偶々怒られてからそれがトラウマになって苦手になったとかそんなんじゃない。
…おい、笑うなよ。
嘘じゃないからな?本当だからな!
と、まぁ…あれこれあったのだが。
現在は十二歳。母は俺を産んだ時に亡くなってしまった。滅多にかかる事のない病気にかかり日に日に衰弱していった母は、俺を産むために命を落とした。民はそれを名誉ある死として哀しみながらも、母を天へと見送った。
俺は、この世界での母親の愛を知らない。
本当は寂しかったりもした。
だが、それは俺が言えたことじゃない。兄や姉はもっと辛いはずだ。
だが、皆俺の事を気にかけ、俺が寂しくないように居てくれた。
第二皇子ロイドを退かしてだが。
ロイドは俺を深く憎んでいるようだ。
国王もきっと俺を恨んでいるに違いない。
王は最愛の妻を、兄姉は最愛の母を俺のせいで無くしてしまったのだから。
…実際、ロイドの俺を見る目は凄い。憎悪の視線で俺を睨んでくる。
姉達はそれを庇うように守ってくれるが、
ロイドはそれがもっと気に入らないのか、嫌がらせは酷くなる一方だ。
しかも、誰にもバレないように。
暗殺者を向けられた事もあるし、毒を飲まされそうになった事もある。
実際、飲んでしまったのだが…普段から籠っている俺である。誰にも悟られぬように自力で死の淵を彷徨いながらも何とか乗り越えた。
体重もかなり落ちてマジできつかった。実の弟を殺しにかかるか?普通。
そんなこんなで俺はある意味人を信じきれなくなった。だから、状態異常無効スキルを手にいれた時は、遅いな……っ!って思った。
そんな俺の周りにいられるのは限られた者のみで、普段から部屋には誰もいれない。
唯一入れる使用人は、俺が一番信頼している
執事長ジルのみだ。
二十歳という若さにして執事長へと昇進したのも、実は俺が唯一信頼していた相手だからということもある。無論、彼の働きぶりは類を見ないほどで、忠実かつ完璧にこなし、裏切らない。僕の親友のようなものだ。
僕が毒を受けたときも必死に世話をしてくれた。地位や金のために側にいてくれるのだとしても、ありがたかった。
僕がチップをあげようとすると受け取ろうとしないのだが、無理矢理受け取らせている。彼は家族を養わないといけないだろうし、これは日々の感謝の意味を込めて送っている。それからは、ちゃんと受け取ってくれるようになった。
そんなこんなで迎えたゲーム本番…果たして、どうなるのやら…。
そして、シルバ学園入学日。
俺はある程度髪を切り、制服に身を包んだ。顔は前髪で隠している。
俺の髪色は黒で瞳は赤だ。
祖母譲りらしいのだが、あまり気に入っていない。と、言うのもそれは兄達への劣等感でもある。
シリウスは父譲りの金髪に母譲りの綺麗なエメラルドの瞳。背は高くてスラッとしていてザ・皇子って感じだ。
ロイドは銀髪に金の瞳。
これまた眼鏡をかけた真面目そうで、冷たいイメージを受ける美形だ。
ユリウスは銀髪に緑の瞳をした軽そうなチャラいイケメンである。
エリザは銀髪に赤い瞳という肉体的な美女である。白い肌にルビーのような美しい瞳は俺とは違って美しい。
アメリアはふわふわした銀髪にエメラルドの瞳という儚げで神秘的な美少女。(改行する) それに比べて俺は強い魔族であった祖母そっくりである。
漆黒の髪に血のような瞳。籠っていた為に不健康な蒼白い肌。身長は158㎝という低さ。
鏡はあまり見たことがないのでよく分からないが、こだわりが強い妹はブサイクといっていたので、かなりのブサイクなんだろう。それに、毒を受けたせいもあり、体は細いしひ弱そうだ。まぁ、個人的には普通くらいだと思うんだけど。
「ラピス様、馬車の準備が整いました。」
色々考えていると、僕の専属執事であるジルが駆け寄ってきた。
「ジル?すぐに行くよ。」
「髪を切られたのですね。いっそバッサリと…」
「僕は兄様達みたいに人前に出られるような顔ではないからね。不快にさせるなら隠しておいた方がいいでしょ?近づいてこないだろうし」
「ラピス様は大変美しいですよ。」
ジルはそう優しく微笑みながら呟いた。
「ジルは過大評価しすぎなんだよ。側にいたから馴れただけさ。」
「ラピス様の自己評価が低すぎて、ジルはとてつもなく悲しいです。」
「何かいった?」
「いえ…なにもいってません。」
「…そう?気のせいかな。」
「気のせいです。さぁ、馬車へお乗りください。寮では側にいられませんが、頑張ってください。」
ジルはとても心配症だ。僕が毒を受けた時も付きっきりで看病してくれたし…。ほんと、ジルには感謝してもしきれないよ。
「そうだねぇ…不快にさせないように頑張るよ」
「私の心配はラピス様の容姿の事ですがね…」
またもや、ジルは小さく何かを呟いた。
それから数分たち、馬車がゆっくりと止まった。
「さぁ、つきましたよ。行ってらっしゃいませ、ラピス様。」
どうやら、学園についたようだ。
「うん。ジル、ありがとね。」
「私はラピス様の側近ですから。寮では執事が入れないということが口惜しい…」
「そっか。ありがとう!じゃあね、ジル!」
「くっ…天使っ!」
最後ら辺で何か呟いていたようだが、これはジルの癖みたいなものなので特に気にしない。
そして、会場へ足を踏み入れると一気に視線が集まる。
ひそひそと話しているようだ。
「まぁ…みて、どこの方かしら?」
「随分と地味な…男爵くらいでしょうか?あまり近づきたくないわ。」
「ちょー、地味じゃん。」
「何か細いしな。貧相だ。」
「あいつ、平民なんじゃね?」
「魔族だったり?黒髪だし…」
「気味悪いな…」
聞こえてますよー、皆さん。僕、一応皇子ですよ。身分はね。顔は皇子じゃないかもだけど。
「君、困るよ。ここは王族の席だ。下級貴族は一番後ろの席だ。」
王族席に近付くと、教師らしき人に止められた。すると、そこら中から笑い声がする。
「流石男爵家ね?ましてや、王族の席へ座ろうとするなんて、常識を知らないのね。」
嫌々、勝手に決めつけて人を貶す君はどうなの?
「男爵ではなく、子爵なのではなくて?ほら、あの男爵家の娘も生意気で常識を知らないでしょう?」
あ、それもしかしてヒロインの事ですか?
「ええ、本当に。下級貴族は礼儀を弁えるべきだわ。」
何か、色々と馬鹿にしてくれますね。
「僕、王族です一応。」
「…ご冗談を。親戚だったとしても、この席には座れませんよ。失礼ですが、家格をお聞きしても?」
「第四皇子ルフェニタス・ラピス。正真正銘の、ね。」
「…はっ?嫌々、ご冗談を。たまに社交界へ出られない第四皇子様を偽る者がいますが…皆厳重な処罰を与えられています。謝るなら今しかないですよ。」
教師は何を言っても信じてくれない。
こんな事なら王族である証の腕章持ってれば良かった?いや、あれ目立つし……やだ。
「いや、だから本当に…」
「あっ、ちょうど皇子様方が…君、残念だったね。この場でそんな大それた嘘をつくなんて、馬鹿としか言いようがないよ。兵よ、この者を捕らえなさい。」
「は?ちょっ、まっ…」
二人の兵士に連れていかれそうになり、反撃に出ようとした時…
「待てっ!そこ、何をしている。学園は神聖な場所だぞ。何を騒いでいる?退きなさい。」
兵士達を押しやり、こちらに向かってきた人物…
それは、兄であるシリウスだった。うへぇ…かなりめんどくさい相手だぞ…。
「これはこれは、皇太子殿下!実は、自分は第四皇子様だと偽る者がおりまして。嘘を認めない為、捕らえようとしていた所です!たかたが馬鹿な下級貴族が王族を名乗るなど、無礼千万ですよね!あっ、因みに私はクリル侯爵家次男の…ぎゃ!?なっ、何をっ!」
皇太子は最後まで聞かずに教師を蹴り倒す。
「この無礼者を捕らえよ。そして、即刻その者を離せ。」
「…はっ!」
兵士達は困惑しながらも、放してくれた。
「なっ、何故ですか!?お前達、どういうつもりだ!私は侯爵家の…ひっ」
「何のつもりだ?それは、こっちのセリフだ。我が弟ラピスが下級貴族?随分と馬鹿にしてくれたな。王族を勝手な勘違いで捕らえた上に、数々の無礼な物言い。貴様こそ馬鹿な下級貴族だろうが。ラピスは正真正銘、俺の弟だ。」
シリウスは先程の皇太子らしさを捨てて、
どこかのヤクザ的な感じになってしまった。なお、この世界にヤクザは存在しないので例えとしては……どうするべきなのだろう。
「なっ…ほっ…本当に…」
「ラピスはその見た目から疑われやすいが、優しいし可愛い自慢の弟だ。その弟を侮辱して許されると思うか?」
今にも殺してしまいそうな凍てつく瞳を向けられた教師が、もはや可哀想に思えてくる。
「そっ…それは…」
「兄上、何の騒ぎですか?」
「そうですわ。今日はラピスの入学式なのに騒ぎを起こすなんて…」
「兄上、貴方は皇太子なのですよ。」
「どうか、したのですか?」
「どうかしたもなにも。この無礼者を捕らえているだけだ。」
兄姉達が集まり、流石の僕も焦り始める。
だめだ、この教師……ジ・エンドだっ!
「まぁ…温厚なお兄様が怒るなんて、相当の事なのですね。あら、ラピス?久しぶりね!やっとお部屋から出てきてくれたのね!……ん?ということは…」
「察しの通りだ。」
「へぇー…?私達の可愛いラピスに何を言ったのかしら…?」
エリザ姉さんよ…後ろで赤い炎がメラメラと燃え上がっていますよ。
「俺の弟を侮辱したのか?それは、許せないな。」
「やれやれ…王族を馬鹿にするとは。極刑は免れんぞ。」
「私の、可愛い弟に、何て事をしたの…?ラピスちゃんはね、私の宝物なの…私の、宝物に、何をしたの…?」
……地獄絵図である。
特に儚げなアメリアは殺気すら宿らせている。ロイドに至ってはただ単に王族を馬鹿にしたことが許せないだけだ。
「あぁ、私の可愛い弟よ!可哀想にっ…!出てきてくれたのは嬉しいけど、やっぱり外に出てはダメよ…お外は危険が一杯なの…。ラピス、貴方を馬鹿にした奴はエリザお姉様がやっつけてあげるから、私の側を離れないでね…。」
「許さない…許さない…私、宝物を傷つけられるのが一番嫌いなの…やはり、外は穢らわしいわ。ラピスちゃん、お姉ちゃんと城へ帰ろう?」
「やっぱり、ラピスは目が離せない!ラピスに近付く女は俺が消すからね」
「ラピスを傷つけるやつは全員死だ。父上も許してくれるに違いない。」
「そんな格好をしているから、あらぬ誤解を受けるのです。部屋に籠っていればいいものを…お前がこの学園にいては私は気が気でない。
ストレスがたまるだけだ。早く城へ帰ってあの安全な部屋に篭っておくがいい。」
そう言い残して、ロイドは一番離れた席へ座った。一時会ってなかったので、マシになったのではないか…と思ったのだが、相変わらず嫌われているらしい。いや、以前より冷たくなってる気もする。因みに、先程の教師は王族の殺気を一身に受け、気絶している。
ちょっと可哀想だ。本当の事を言っただけだろうに…。
「ラピス。こいつ、どうしようか?牢に入れていたぶる?それとも殺す?一族郎党?」
「そんな恐ろしいことを言わないでください。僕なら慣れてるし、いつもの事なので気にしてません。確かにちょっといらっときましたが実害はないので。無実って事に…ただ、担任にはしてほしくないかなって位です。」
「…ラピスは優しすぎるのだ。もっと、残虐性を持たないと王族なんてやってられないぞ?」
「…まぁ、王には兄上がなりますし、僕は自由気ままに過ごすので…王族らしくもないですし。」
「もぉー、ラピスったら!私、一生お嫁に行かないわ!行くとしても、ラピスが側にいないと嫌よ!」
「私も…。ラピスちゃんさえいれば、いいの。
他の人なんてどうでもいい。」
「ええっと…姉上?」
「いつもみたいに、お姉ちゃんって呼んでくれないの…?あっ、そっか…ラピスちゃんは恥ずかしがり屋さんだもんね。周りの子、消しちゃおうか……」
「お姉ちゃん、物騒な事言わないでください」
「お姉ちゃん…凄く、嬉しい。ラピスちゃんが
そう言うなら、やめとこうかな。けど…ラピスちゃんを馬鹿にするなら、消すから覚悟してね」
会場にいた貴族は震え上がる。
「あのー、入学式初めてもいい?」
「ああ、学園長か。」
「おお、この子がラピス君だね?話に聞いていた通りだね!」
それは、どういう意味ででしょうか。
「ほら、ラピス。おいで」
「はい、兄上。」
その後、入学式の最中様々な視線を受けて居たたまれなくなったのはご愛敬って事で。(ご愛嬌も何もまだ序盤だけど…)
ラピスのキャラとか回りの反応とか結構難しいんですよ。
後、結構長めなのが多いです!