二人目の情報屋は波乱の予感?
響輝その頃僕は図書館に戻っていた。ただ単に暑かったというのもあったが質問しなくて本当によかったのかという自分への疑問と向き合うために静かな場所に行きたかったという理由がほとんどだった。
能力範囲はどのぐらいなのか。心がどんなふうに分かるのか。聞きたいことは山ほどある。だけど聞いてしまうと僕は彼女に勝てない気がする。彼女の能力が本当に読心術なのか確信はないのに、この質問をして正当な答えを返されてしまったらもう僕は彼女を疑うことが出来なくなる。能力者バトルは全員が敵の生き残り戦だ。誰も仲間はいない。もしここで彼女を信頼してしまったら後々が怖い。八方塞がりだ。
「はぁー」
「大きなため息だねお兄さん」
「わっ!!」
「幽霊じゃないんだからそんなに驚かないでよ」
「急に声を掛けられたら誰でも驚くよ」
「おにいさんは鈍い人なんだね」
ムカッ!
「そんなに鈍くはないと思ってたんだけどな」
「いやいや足音立てて歩いてきてたのに気づかないのは相当鈍いよ~?」
ムカッ!ムカッ!
僕は自分の顔がひきつっていくのを感じた。
見た感じ小学校高学年から中学生ぐらいなのに口の減らないやつだな。
「口の減らないやつねぇー?評価悪すぎるんじゃないの?おにいさん」
「お前も読心術使いなのか?」
「おっしーい!でもざんねーん僕は神だよ」
「神だと?」
こんなちんちくりんで口の減らないやつが神であってたまるか!
「口の減らないじゃなくて嘘つきの子供だったみたいだな」
「まぁ、信じるも信じないも自由だけど僕の言葉は聞いておいた方がお兄さんの身のためだよ?」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味さ。これから伝える3つのことは全て君が知らない内容さ。聞いておいて損は無いけど聞かなかったら君の首を絞めるだろうね~僕としてはそっちの方が面白いんだけど、君は面白いから生かしておこうと思ってさ。」
こいつの言ってることは嘘くさすぎる。でも、聞くだけならタダだし、こいつの言う通り聞いておいて損はないんだろう。“おにいさん”から“君”になったのは気に食わないが。
「それで?その3つのことってなんだ?」
「お?聞く気になったんだね」
「お前が神だとは思ってないが、内容によっちゃ聞いた方が僕に利があるだろうから聞いておこうと思っただけ。」
「あっそ。あんたも十分口の減らないやつだよ」
ついにはあんた呼びになったか。でも名前は教えたくないから放置しておこう。
「まぁ、教えてやるよ。まずは1つ目、お前がよく喋ってる弥野美希は能力者の中でも一二を争う実力者だ。本人は能力を読心術だと言っているが、読心術使いがあんな高度な真似出来るはずがないから、きっとでまかせだろう。あまり関わらない方がいいぞ。」
なんなんだこいつは美希さんのことを敵視したような言い方。気に食わねぇ。
「2つ目はお前を影からコソコソ観察している2人組についてだ。お前も気づいていただろう?」
「2人組?コソコソ…?」
「はぁーお前も心底救いようのないやつだなそれだから鈍いって言われんだろ僕に。」
「うっせーな早く話せよその2人組のことを」
「教えてあげてる人に向かってその態度~?お願いしてよ」
「お…お願いします………」
「まぁ、僕も鬼じゃないから教えてあげるよ。片方は近藤 理樹。身長160センチ。能力は能力者探知。美希に次いで強力な実力者さ。そしてもう1人は佐々野 燿。身長168センチ。能力は動物化だ。まぁ、トップ3はこの三人で間違いないだろうね。」
「能力者探知は分からなくもないが動物化ってなんだ?」
「文字通り動物並みの身体能力を自分に付与出来る能力だよ。そんなこともわかんないの?君は鈍いだけでなく頭のネジも足りないみたいだね」
こいつ1発殴りてぇ。そうしないと腹の虫が収まらない。
「今殴っちゃったら3つ目の情報聞けないけどいいの~?」
「くっそ!主導権は向こうにあるってのかよ」
「思考がついにだだ漏れになってるよ~?ちょっといじめすぎちゃったかな~?理性が効かなくなる前に3つ目話さないと僕の身も危ういかもね。」
「そう思うならとっとと話せよ」ギロッ
「わ、わかったよ。だからその目つきどうにかならな………………いですねわかりました。」
さすがにただならぬ雰囲気で怖気づいたみたいだなやっぱり中身も子供か。
「……え、えっと…み、3つ目は…僕…自身のこ、こと…です。」
「あーもう!この目やめればちゃんと話せんのか?」
「は、はい。さすがに殺されたくないです」
殺す気は元々なかったが、こう戸惑われては何を言ってるのか分かりずらい。仕方ない戻してやるか。
「これで怖くないだろう?」
「うむ、では仕方ないから話してやるとしよう」
ギロッ
「ご、ごめんなさいごめんなさいちゃんと話しますからですからどうかその目を直していただけませんかもう僕怖くて怖くて…」
よしっ主導権は勝ち取った。
「では、話させていただきます。先程もお伝えした通り、3つ目の情報とは私自身のことでございます。」
「それを聞く価値は本当にあるのか?」
「はい、もちろんでございます。決して貴方様を不快にはさせないと私鉢屋 悠介の身をもって保証致しましょう。」
命までかける必要は無いがそこまで言うのなら聞いてやろう。
「ならば良い。続きを話せ。」
「はい。先程私は私のことを神と申しました。しかしそれは、見栄でも嘘でもなく事実でございます。それを信じた上でこの話を聞いていただきたいのですが…」
「まぁ、この状況で嘘を言えるとは思えないし信じよう。」
「ありがとうございます。私の能力は物事の理を理解し驚異的な力を得るというものでございます。簡単に申しますと、殴りかかってきた相手をその勢いを利用し投げ飛ばすというのはよくある武術でございます。しかし、私の場合その力を見切ることさえ出来ればその力を10倍にも20倍にも増幅させることが出来ます。」
「まぁ、原理さえ分かればあとは敵無しという事だな」
「左様でございます。しかし、この能力が強大なため私は能力者バトルに勝利しても願いを叶える権利を得ることができません。世界征服などを願われては誰も手出し出来なくなりますから当然でしょうが。しかし、バトルには絶対参加が原則でございますこうなってはわざと負ける他ありませんが対戦相手が許してくれるとも限りませぬ良くて骨折などという結末は迎えたくありませんので貴方様にこの話をしております。」
「結論から言うと?」
「貴方様と共に戦わせてください!」
「はぁー?なぜ俺がお前と!!」
「こんな子供と戦うなんて嫌だとは思います。ですが、あなた様は非戦闘の能力ですよね?」
「ああ。そうだな」
「私の能力上あなた様の能力向上等は望めないでしょうが、単純な力勝負であればあなた様は無敵になります。」
「一緒に戦って勝ち残ったとしてお前は最後どうする」
「先ほど申し上げた通り、願いは叶えられないので降参し、あなた様の勝利に」
「このやり方でお前に何の得がある」
「信用できませんか?」
「そうだな。話を聞く限り俺を勝たせる理由もわざわざ俺と一緒に戦う理由もわからない。そんなやつを簡単に信用するほど俺もバカじゃないんでね。」
「そうですよね。まず第一にあなた様を勝たせる理由は願いやその後が面白そうだから。好奇心は怒りの次に強い感情だと思いませんか?第二にあなた様は非戦闘系で普通に戦ったら一人目で負ける確率が高く、もったいないと感じたから。」
「理由も信用しづらいが、俺の得もあることだし。その意見乗るとしよう。」
「…………え?」
「だ~か~ら~一緒に戦うって言ってるんだよ」
「ほ、本当ですか!?よかった~もうダメかと思ってましたよ」
「まあ、お前がいればとりあえず一人目で負けることはないだろうからな。問題はトップの弥野美希、近藤理樹、佐々野燿との戦いかたをどうするかだがそれは今考えても仕方ない。」
「中瀬様ならきっとそう考えてくれると思ってました!!」
「様はつけなくていいし、名前呼びでいい。それに、もう調子に乗らないのならタメ口でいい。」
「ほ、本当に………?」
「ああ、堅苦しいのは嫌いだからな」
「で、では、これからよろしくお願いします。響輝君」
「ああ、よろしくな。祐介」