能力について理解が深まる予感
『そういえばさ、君本読むの好きって言ってたけどどんな感じの本よく読むの?』
「ラノベとかファンタジー系が多いかな美希さんは?」
『私はファンタジーとかもそうだけどミステリー系が1番多いかな~』
「ミステリーか……あんまり読まないんだけどオススメの本とかある?」
『家にいっぱいあるから今度貸してあげるよ。題名と表紙は送るから読んでみたいやつ教えて今度会う時持ってくる。』
「ありがとう」
「お待たせしました。チーズインとデミグラスでございます。ごゆっくりお楽しみください。」
『割と早く来たね』
「そだね。食べようか」
『うん』
『「いただきます」』
『んー!美味しい!響輝くんに聞いて正解だったよ』
「そう言ってくれて嬉しいよ」
喜んでくれてよかった。
『デミグラスは?美味しい?』
「うん。美味しい!」
『ここにして良かったね』
「だね」
それからしばらく僕らは黙々と食べ続けた。
『そういえば、今日私を呼んだのはなんで?』
「ちょっと聞きたいことがあって…」
『どうしたの?私、この力が目覚めてからすこし調べてるからわかる範囲なら教えれると思うけど…(実は3年近く前に目覚めたからほとんどのことはしってるんだけどね)』
「僕は美希さんと会うまでこんな風に力を持ってるのは僕だけだと思ってたんです。」
『うん。』
「でも、美希さんと会って僕以外にも力を持ってる人がいるのを知ってもしかしたら…っていう考えが頭を離れないんです。」
『そのもしかしたらっていうのは?』
「実は能力って他にも沢山あってこの街の殆どの人が能力者なんじゃないか…なんて」
『...。』
「思い過ごしですよね。…ラノベの読みすぎですね。ごめんなさい変な話しちゃっ」
『思い過ごしなんかじゃない。いつかその可能性に気づくかもとは思ってたけどこんなに早いとは…びっくりしたよ。』
「じゃあ、、」
『ほぼ響輝くんの考えてる通りだよ』
「ほぼ?違うところもあるってことですか?」
『うん。この力が使えるのは小さい時だけ。長くても20歳になったら使えなくなるし、使えてた時の記憶もなくなる。だからこの街の殆どの人が使えるっていうのはちょっと違うかな?あと、力は目覚める時期に個人差はあれど必ず全員が目覚めるの。』
「ということは学校の人は8・9割が能力者ってこと!?」
『そうなるね』
「そんな…」
『あとは響輝くんの考えてる通り。能力には種類がある。しかも同じ能力を持つ人は誰一人としていない。その人だけが持つ唯一の力なの。』
「!?ってことは美希さんは…」
『そうだよ。私は前世の姿を見ることは出来ない。でも、最初に会って同じだ!なんて言われちゃったらなんか言い出しにくくなっちゃって…騙すようなことしてごめんね?』
「いえ。僕がもう少し調べたりしてれば美希さんが嘘をつくことにはならなかったんです。僕のせいです。こちらこそごめんなさい。」
『あと、能力者狩りがいるっていう噂が広まってるから自分が能力者だとかなんの能力を持ってるとかはあんまり公言しない方がいいと思う。まぁ、響輝くんの能力は攻撃系統じゃないから狙われないとは思うけど…。』
「能力者狩りは何の目的で狩りをしてるんでしょう?理由がないとそんなことしないと思うんですけど…。」
(あなたはそんなとこまで考えを巡らせることが出来のるね。これ以上隠すのは信用をなくしかねない)
『実は3ヶ月後この街で能力者同士のバトルがあるの。能力者は全員参加が原則で不参加の人に対しては直々に手が下されるらしいの。』
「誰によって?」
『おかしいと思わない?響輝くんの力は誰にも知られずに使うことができるけど身体能力や攻撃力が高くなる能力を持ってる子が大人の人に知られることなく過ごすことが出来てるこの現状に。能力が使えなくなると同時に使えたっていう記憶まで消されるのに。』
「た、たしかに…」
『それは人間以外の生物。生まれた時から能力を持ち、人間の何倍も寿命が長い者の手によって、力を使ってるタイミングを大人に認識させないようにしてるからなのよ。』
「それはどういう?」
『んー吸血鬼とかは能力使えるって言われても納得できるじゃない?』
「物語だと全然有り得る設定ですね」
『そう。それが現実にいたらどう?』
「可能なのか…」
『私はそう考えてる。実際に見たことはないし、吸血鬼かどうかはわかんないんだけどね』
「....。」
『理解追いついてない?』
「はい。自分に力があるってわかった時もありえないってずっと思ってたのにこの街にとってはそんなこと問題ですらなかったなんて…」
『今日は帰ってゆっくり考えた方がいいと思う。また気になったことがあったらなんでも聞いて。多分その疑問は私も思って調べたはずだから。』
「最後に、美希さんの能力名は?」
『内緒♪しっかり理解出来た後じゃないと余計こんがらがるでしょ?』
「そうですね。今日は来てくれてありがとう。ゆっくり考えることにするよ。」
『うん。それがいいよ。またね』
「うん。また」
「んー???考えれば考えるほど分からなくなってゆく…」
一気に色々知ってまとめられないよ……
「紙にまとめてみるか…。」
[能力について]
・使えるのは子どものうちだけ20歳には使えなくなる。
・能力が使えなくなると使えた時の記憶もなくなる。
・個人差はあれど全員が能力者になる。
・能力には多くの種類があって攻撃系、非攻撃系に分けられる。
・同じ能力を持つ人は誰一人としていない。唯一無二の力。=美希さんは僕とは違う能力。
【能力者狩り】
3ヶ月後の能力者同士のバトルがあるからライバルを減らしているのか? (不可解)
【その他】
吸血鬼的存在によって大人には能力の使用は分からないようになっている。
方法:大人の目には能力を使ってるタイミングが映らないようにしている。らしい。
バトル不参加者には手を下す。
「こんなもんか?」
わかったようなわからないような……………
どうしていいかわかんないな
何がわかんないのかすらわからないのはどうしようもないな。
唯一分かるのは能力者だということと能力名は公言しない方がいいということだけか。
『どう?ちょっとは整理出来た?』
「まぁまぁって感じ。まとめたけどわかったようなわからないような…みたいな」
『一気に言っちゃったからね仕方ないよ体験すればわかると思うよ』
「体験…やだな ところで美希さんの能力名もう聞いてもいい?」
『仕方ないなーまぁ、今日教える予定だったんだけどね 私の能力名は…読心力(心を読む能力)だよ』
「心を…読む…か なるほど。だから本当に前世が見えるかっていうテストで答えが一緒になったんだ」
『そういうこと~』
「でも、すごいな…本でしか聞いたことなかった能力を現実で体験することになるなんて…」
『まさかだよね。夢だったりして?笑』
「ほんとに夢なんじゃない?」
『まさか…ね。そんなことあるわけ』
「ないよねーそんなの」
(冷や汗)
─1週間後─
この一週間、調べてみてわかったことがある。僕は今まで能力者狩りは1人だと思っていた。だけど目撃情報を辿っていくとどうやら2人で行動しているらしい。
それと、学校の人はやっぱり8割以上が能力者だった。しかも僕のクラスは全員がもう既に能力者らしい。
僕が知らなかっただけでこんなにも周りに能力者がいたと知った時はめちゃくちゃびっくりしたけど、やっぱり美希さんの言うことは確かだったんだなと改めて実感した。だから余計に能力者同士のバトルが3ヶ月後にあると実感してしまった。
どうやって大人が気づかないようにしているのか注意深く観察したら、偶然のように見える行動で回避していることに気が付いた。
例えば落ちてる物を拾ったり、周りの人に声をかけられて気づかなかったり偶然だと言われればそうとしか言いようがないことが起こる。でも、これは必然的に起こっていてそれも人成らざる者が起こしている。これを知った日から僕は色々なことを調べたり、聞いたりしている。といっても、聞き込みなんて出来るはずもないからネットや本で調べるぐらいなんだけど。
???「もう1週間経ったぞ?あいつの能力はよくわからんけど弱そうじゃん倒しちゃおうぜ?」
??「まぁ、バトルまであんまり時間もないからライバル減らした方がいいか。あの人別に見てる感じ身体能力も高くないというか低い方だし消えても問題ないでしょ。」
???「だな。なんか俺らのこと嗅ぎ回ってるみたいだし潰しとくか」
??「今からかい?一応誰かに見られない方がいいだろうから夕方とかの1人になった時に攻撃した方がいいんじゃない?」
???「それもそうか。能力に気づかないのは大人だけで俺らの戦いは能力者なら見えるしな。といっても夕方までどうするよ」
??「あいつの家は分かってるのだからカフェとかで時間を潰せばいいんじゃないかい?仮にあいつが僕達より先に動いたとしても君と僕の能力があれば軽く追いつくどころか追い越せるでしょう。」
???「だな。ここらに良いカフェとかあったか?」
??「確かこの近くにあの子がよく行くカフェがあるはずですが?」
???「あいつが行くのかよ。もし居たらどうするよ」
??「大丈夫ですよ。あの子は今日勉強会で家にいるはずですから。」
???「お前もうそれストーカーじゃないかよ」
??「あなたが嫌うから合わないようにチェックしてるだけですよ。ストーカーのような気持ち悪い人種と一緒にしないでください。」
???「一緒だろ(小声)」
??「はい?何か言いました?」
???「いや、何も。よし!そのカフェに行こう。道案内よろしくな」
??「…。まぁ、いいでしょう。」
僕、美希さんと出会ってから都心に通いすぎだろ…。
もう夏休みに入っていて僕は特に会う約束してなくても、やることがないとついここに来てしまう。しかも毎回同じ場所で同じことしてるとか変な人だよな完全に。。。
今日も例によってここ市立図書館に来てるわけなんだけど。
「今日は違うとこにでも行こうかな…。」
とは言っても1人だし、行きたい場所がある訳でもないから結局ここに入るんだよな。
「しっかし、相変わらずの広さだな」
ここ市立図書館は90万冊もの本を貯蔵する巨大図書館である。雑誌や漫画、小説、新書などいろんな種類の本が置いてある。しかもパソコンが50台もあり調べ物やら動画視聴など全てができる図書館である。しかも近くにカフェやコンビニ、スーパーもあるのでここで1日暇を持て余すことなく過ごすことが出来る。
僕がここに来る理由は大抵能力と能力者狩りについての情報を得るためだ。でも、いくら調べても美希さんが教えてくれたこと以外信用できる情報は載ってない。
まぁ、能力者狩りの情報が簡単に手に入ったらなりすまして犯罪を行い、罪をなすりつけることが出来てしまうからな。
これといって有力な情報が入らないまま長々とパソコンを触って今に至る。
「もう諦めた方がいいのかな。情報を掴んだとして僕の力じゃどうすることも出来ないし。それに、簡単に見つかるような情報は全部美希さんが教えてくれたし。」
少し長いため息をついて僕は立ち上がり使用カードに今の時刻を記入した。夏休みに入ってから毎日通ってたせいで記入欄には僕の名字が多くある。ある意味気持ち悪い。
「このあとは美希さんと行ったカフェにでも行こう」