非戦闘な能力を持つ少年が能力者に立ち向かう!
あなたは平凡な日常に辟易していませんか?
これは私達とは少し違った世界に住む1人の少年の不思議な物語。
「あの人は猫か……結構可愛い猫だったんだな」
「あそこの人は随分昔の人だったんだな着物を来てるし」
僕は約1年前まではごくごく平凡な中学生だった。それがある日、見た人の前世の姿を見れるようになって僕の世界はガラリと変化した。
最初はただただ怖かった。前世の姿と言っても結局は霊で、僕が見えると分かると途端に近づいてくる。話すことは出来ないけど、表情や何をしているのかははっきりと見えるから寝ぼけてる時に見て何度驚いたことか……。
まぁ、平凡な日常に辟易していた僕にとってはいい刺激になってるんだけどね。
でも、前世と現世の仕事や性別みたいな規則性はまだ見つけれていないし、なんで見えるようになったのかもよく分かってない。
まぁ、見えてるからと言って生活に支障はほぼないからいいのだけど見えるからこそ観察するようになってしまったのは少し問題だと思う。
今日はシャー芯を買いに文具屋まで来たけど、お客さんは前世が動物か着物が普段着だった江戸時代より前の人
が殆どだった。転生にもラグみたいなのがあるのか相当回転率は悪いらしい。
「また居た。」
たまに前世を見ようとするとぼやけて写る人がいる。
外見はそこら辺にいる高校生とかとなんら変わらない服装で容姿はそれなりにいいくらいの目立たない女の人。でも僕だけがわかる。
あの人も【見える】人だ、と。これまでの体験でよく見えない人は普通の人とは少し違うオーラを纏っているように感じる。
まぁ、感覚の問題なんだけどあの人は僕と同じ目をしているような気がする…。少し怯えた目、けど光は失っていなくて好奇心に満ちている目をしている。
普段の僕なら絶対に知らない人に声をかけたいなんて思わないけど、今回だけは違った。あの人と話してみたい、この特殊な能力についてわかる人と話してみたいという思いに駆られて、僕は声をかけた。
「あのー」
『!!!?』
「そんなに怖がらなくても大丈夫です。あなたと僕はきっと同じ。」
『あ……あなた…も………わ…わかる…の…?』
「はい。」
『ほん…とう……に…?』
「初対面の人に嘘つくほど僕は酷くはないですよ。」
なんでこの人はこんなにも怯えているのだろう...
『じゃあ、信じる…ね あなたはいつから見えてるの?』
「詳しくは覚えてないですけど1年ぐらい前からですかね
あなたは?」
『私の名前は美希みき。半年前ぐらいからだったと思う』
「あっ僕は響輝ひびきです。僕は中2で、美希さんを年上に感じたんですが高校生ですか?」
『正解だよ!高1』
「2つも違うのか…どおりで大人っぽいんですね」
『そんなでもないよ。周りの友達はメイクとかしたりしてるけど私したことすらないし…』
「メイクとかしてなくても雰囲気が大人っぽいですよ」
『そう?ありがとう』
「ここで長居するのもなんなので近くのカフェで話しませんか?」
『じゃあちょっと待ってて本とかの会計してくるから』
「あっ僕もシャー芯買いに来たんだった!!」
『響輝くんは何がいい?』
「んーじゃあ、カフェオレで」
『私はキャラメルカプチーノで』
「かしこまりました。」
『ねぇー?私らは相手の前世の姿が見えるじゃない?それって本当なのかな?』
「つまり見えるのが幻覚かもしれないっていいたいの?」
『だってありえないじゃない?人の前世が見えるなんて』
「そうだけど……じゃあ、同じ人が見えるか試してみようよ」
『どうやって?』
「んーそうだ!あそこに座っている人の前世は何?」
『それは……………』
「しー!答えちゃったら確かめようがないじゃん!せーので言わなきゃ」
『それもそうだね』
『「せーの!」』
『「アルパカ!!」』
「これで証明できたね」
『うん。私達は本当に見えるんだ』
「お待たせしました。カフェオレでございます。」
カタンッ
「キャラメルカプチーノでございます。」
カタンッ
「ごゆっくり。」
「どっちもいい匂いがするね」
『そうだね』
『「おいしー!」』
『初めてここ来たけどこんなに美味しいならまた来ようかな』
「実は僕も初めてなんだ!」
『私達色々と似ているみたいね』
「みたいだね」
本当に。意図的かと疑いたくなるほど。
それからしばらくは自己紹介や霊の見え方などを話したり、連絡先を交換して解散した。
僕が今日得た彼女の情報は
彼女は弥野やの 美希みき高校1年。文芸部員で本を読むことや絵を描くのが好きということ。
今日文具屋にいたのは新しい本と、絵を描くためのペンや紙を買いに来たらしいこと。
半年前からこの力に少し怯えながら過ごしていたこと。
今日同じような力を持った僕と会ってびっくりしたけど安心したということだった。
何故僕達にこの力が目覚めたのかは全く検討もつかないけど、美希さんも僕も同じように見えているということが分かったし、他にもいるかもしれないという可能性が見えたのは収穫だったと思う。
この情報があるからといって何かわかるかといえば特に何もないけど、1人だけだと思っていた僕にとっては一筋の光がさしたように見えていた。
この光が泥沼にはまっていくことになる原因だとはこの時の僕には知る由もない。
【響輝】
いやー同じような境遇の人と出会えて良かった。ずっと1人で理解してくれる人がいなかったから心細かったけど、これで困ったことや共感してほしいことを伝える相手が出来た!
今日は日曜日だから次会うとしたら来週か…また長い1週間になるけど今日のことを思い出せば頑張れそうだ!
明日にでも来週の予定聞いてみようかな……もういっそ帰ったら連絡しようかな…でもさすがに浮かれすぎか。
最初よりは僕のこと怖がらずに見てくれるようになったし、今日はめっちゃ楽しかったな~
???「彼が能力者?あんなひょろひょろな奴が~?まじかよ!簡単に狩れるじゃん!」
??「もうちょっと様子見した方がいいんじゃない?彼が能力者だと分かってもどんな力かはあなたの目でも分からないでしょ?それとも、この街の能力者全員狩る気なのかい?」
???「お前は慎重すぎんだよ。そんなんだからなかなか能力者が減らないんだろ?3ヶ月後にはここは戦場になるんだそれまでにライバルは減らした方がいいだろ?」
??「そうかもしれないけど、能力者の間で能力者狩りが噂になってるんだよ。もしバレたりなんかしたら総攻撃を食らう可能性もあるじゃないか」
???「それで俺が負けるとでも?お前が見てきた中で俺より強いやついたか?苦戦した相手なんていなかっただろ?お前と2人で勝負して負けると思ってるのか?」
??「そうですね。あなたは私の知る中で最強の能力者です。それに私と2人ならきっとこの街…いえこの世界の誰にも負けません!」
???「まぁ、あんなやついつでも狩れるんだお前の意見を考慮して1週間ほど様子見するか。」
??「はい。」
【美希】
響輝……これで3人目か。でも彼は何も知らないんだろうな。他の2人はある程度把握出来てたし、それができる能力だったけど彼の能力ははっきり言って使えない。
私がこの力を持ってたからなんとか話を合わせられたけど、能力者狩りの噂がある限り自分の力や自分が能力者だということを簡単に教えるわけにはいかないんだよね。
教えてあげた方が彼のためになるんだろうけど、公言している彼の近くにいれば能力者狩りに接触できるかもしれない…。来週になったらまた会うことになるからそれまでに色々考えておかないと。
このまま嘘をつき通せるかはあんまり自信ないけど、まだあの子のこと信用しきれてないから教えるわけにはいかない。はぁ~人のことこんなに考えたの久しぶりかもしれないな。
『お待たせ、待った?』
「全然!呼んだのはこっちだし。それよりどっか行こうか」
『そうだね』
「どこか行きたい所ある?」
『んー本屋行ってもいい?』
「いいよ 本好きなの?」
『うん。家にいてもすることないから本ばっかり読んじゃってどれだけ買ってもすぐ無くなっちゃうんだ...』
「僕もそんな感じだよ やっぱり僕達はよく似てるのかもしれないね」
『………そうだね』
「ここから近い本屋は…あのデパートの地下の本屋かな」
『地下にあるの?』
「うん結構品揃えも良くてよく行くんだー」
『色んな場所知ってるんだね』
「あはは..家にいるより本見てる方が楽しいから……」
『この本もあの本も私が探してたけど見つけられなかった本だ…こんなとこにあるなんて…すごい!』
楽しそうでよかった!こういう系の本が好きなんだな
「このあとはどうしようか?もう11時だしどこかでご飯食べようか?」
『もうそんな時間?そうだね。この近くだったら何がある?』
「色々あるよ。レストランとかラーメン屋とかオムライス専門店とか…何が食べたい?」
『そうだな…オムライス…食べたい』
「じゃあ、オムライス屋行こうか」
『うん!』
『響輝くんはここ来たことあるの?』
どうしたのかな?
「2・3回ぐらいだけど…どうしたの?」
『いや~種類が多いからオススメとかあるかな~って思って』
「そうだな…僕はチーズインが一番好きかな」
『そっか…じゃあそれにしよう』
「いいの?ただ僕がチーズが好きだからだと思うんだけど…」
『いいの!嫌いなものとかないし』
「そう?じゃあ注文しようか。すみませーん」
「はい。ご注文お決まりでしょうか」
「チーズイン1つとデミグラス1つで」
「ご注文は以上でよろしいでしょうか。では少々お待ちください。」
『それにしても人増えたね』
「僕達が来た時はそうでもなかったのにね。やっぱりお昼時だからかな?」
『だろうね』
『「・・・・・・。」』
どうしよう話題が…ない。
(話すことなくて困ってる笑やっぱりこの子はいい子だ。でもいい子すぎる。これが後々仇となるんだろうね)
『「・・・・・・。」』
(助けてあげようか)
『そういえばさ、君本読むの好きって言ってたけど、どんな感じの本よく読むの?』
「ラノベとかファンタジー系が多いかな美希さんは?」
『私はファンタジーとかもそうだけどミステリー系が1番多いかな~』
「ミステリーか……あんまり読まないんだけどオススメの本とかある?」
『家にいっぱいあるから今度貸してあげるよ。題名と表紙は送るから読んでみたいやつ教えて今度会う時持ってくる。』
「ありがとう」
「お待たせしました。チーズインとデミグラスでございます。ごゆっくりお楽しみください。」
『割と早く来たね』
「そだね。食べようか」
『うん』
『「いただきます」』
『んー!美味しい!響輝くんに聞いて正解だったよ』
「そう言ってくれて嬉しいよ」
喜んでくれてよかった。
『デミグラスは?美味しい?』
「うん。美味しい!」
『ここにして良かったね』
「だね」
それからしばらく僕らは黙々と食べ続けた。
『そういえば、今日私を呼んだのはなんで?』
「ちょっと聞きたいことがあって…」
『どうしたの?私、この力が目覚めてからすこし調べてるからわかる範囲なら教えれると思うけど…(実は3年近く前に目覚めたからほとんどのことはしってるんだけどね)』
「僕は美希さんと会うまでこんな風に力を持ってるのは僕だけだと思ってたんです。」
『うん。』
「でも、美希さんと会って僕以外にも力を持ってる人がいるのを知ってもしかしたら…っていう考えが頭を離れないんです。」
『そのもしかしたらっていうのは?』
「実は能力って他にも沢山あってこの街の殆どの人が能力者なんじゃないか…なんて」
『...。』
「思い過ごしですよね。…ラノベの読みすぎですね。ごめんなさい変な話しちゃっ」
『思い過ごしなんかじゃない。いつかその可能性に気づくかもとは思ってたけどこんなに早いとは…びっくりしたよ。』
「じゃあ、、」
『ほぼ響輝くんの考えてる通りだよ』
「ほぼ?違うところもあるってことですか?」
『うん。この力が使えるのは小さい時だけ。長くても20歳になったら使えなくなるし、使えてた時の記憶もなくなる。だからこの街の殆どの人が使えるっていうのはちょっと違うかな?あと、力は目覚める時期に個人差はあれど必ず全員が目覚めるの。』
「ということは学校の人は8・9割が能力者ってこと!?」
『そうなるね』
「そんな…」
『あとは響輝くんの考えてる通り。能力には種類がある。しかも同じ能力を持つ人は誰一人としていない。その人だけが持つ唯一の力なの。』
「!?ってことは美希さんは…」
『そうだよ。私は前世の姿を見ることは出来ない。でも、最初に会って同じだ!なんて言われちゃったらなんか言い出しにくくなっちゃって…騙すようなことしてごめんね?』
「いえ。僕がもう少し調べたりしてれば美希さんが嘘をつくことにはならなかったんです。僕のせいです。こちらこそごめんなさい。」
『あと、能力者狩りがいるっていう噂が広まってるから自分が能力者だとかなんの能力を持ってるとかはあんまり公言しない方がいいと思う。まぁ、響輝くんの能力は攻撃系統じゃないから狙われないとは思うけど…。』
「能力者狩りは何の目的で狩りをしてるんでしょう?理由がないとそんなことしないと思うんですけど…。」
(あなたはそんなとこまで考えを巡らせることが出来のるね。これ以上隠すのは信用をなくしかねない)
『実は3ヶ月後この街で能力者同士のバトルがあるの。能力者は全員参加が原則で不参加の人に対しては直々に手が下されるらしいの。』
「誰によって?」
『おかしいと思わない?響輝くんの力は誰にも知られずに使うことができるけど身体能力や攻撃力が高くなる能力を持ってる子が大人の人に知られることなく過ごすことが出来てるこの現状に。能力が使えなくなると同時に使えたっていう記憶まで消されるのに。』
「た、たしかに…」
『それは人間以外の生物。生まれた時から能力を持ち、人間の何倍も寿命が長い者の手によって、力を使ってるタイミングを大人に認識させないようにしてるからなのよ。』
「それはどういう?」
『んー吸血鬼とかは能力使えるって言われても納得できるじゃない?』
「物語だと全然有り得る設定ですね」
『そう。それが現実にいたらどう?』
本当に居たとしたら
「可能なのか…」
『私はそう考えてる。実際に見たことはないし、吸血鬼かどうかはわかんないんだけどね』
「....。」
知らないことが多すぎて頭が働かなくなってきてる...
『理解追いついてない?』
「はい。自分に力があるってわかった時もありえないってずっと思ってたのにこの街にとってはそんなこと問題ですらなかったなんて…」
『今日は帰ってゆっくり考えた方がいいと思う。また気になったことがあったらなんでも聞いて。多分その疑問は私も思って調べたはずだから。』
「最後に、美希さんの能力名は?」
『内緒♪しっかり理解出来た後じゃないと余計こんがらがるでしょ?』
「そうですね。今日は来てくれてありがとう。ゆっくり考えることにするよ。」
『うん。それがいいよ。またね』
「うん。また」
「んー???考えれば考えるほど分からなくなってゆく…」
一気に色々知ってまとめられないよ……
「紙にまとめてみるか…。」
[能力について]
・使えるのは子どものうちだけ20歳には使えなくなる。
・能力が使えなくなると使えた時の記憶もなくなる。
・個人差はあれど全員が能力者になる。
・能力には多くの種類があって攻撃系、非攻撃系に分けられる。
・同じ能力を持つ人は誰一人としていない。唯一無二の力。=美希さんは僕とは違う能力。
【能力者狩り】
3ヶ月後の能力者同士のバトルがあるからライバルを減らしているのか? (不可解)
【その他】
吸血鬼的存在によって大人には能力の使用は分からないようになっている。
方法:大人の目には能力を使ってるタイミングが映らないようにしている。らしい。
バトル不参加者には手を下す。
「こんなもんか?」
わかったようなわからないような……………
どうしていいかわかんないな
何がわかんないのかすらわからないのはどうしようもないな。
唯一分かるのは能力者だということと能力名は公言しない方がいいということだけか。
✧
『どう?ちょっとは整理出来た?』
「まぁまぁって感じ。まとめたけどわかったようなわからないような…みたいな」
『一気に言っちゃったからね仕方ないよ体験すればわかると思うよ』
「体験…やだな ところで美希さんの能力名もう聞いてもいい?」
『仕方ないなーまぁ、今日教える予定だったんだけどね 私の能力名は…読心力(心を読む能力)だよ』
「心を…読む…か なるほど。だから本当に前世が見えるかっていうテストで答えが一緒になったんだ」
『そういうこと~』
「でも、すごいな…本でしか聞いたことなかった能力を現実で体験することになるなんて…」
『まさかだよね。夢だったりして?笑』
「ほんとに夢なんじゃない?」
『まさか…ね。そんなことあるわけ』
「ないよねーそんなの」
(冷や汗)
─1週間後─
この一週間、調べてみてわかったことがある。僕は今まで能力者狩りは1人だと思っていた。だけど目撃情報を辿っていくとどうやら2人で行動しているらしい。
それと、学校の人はやっぱり8割以上が能力者だった。しかも僕のクラスは全員がもう既に能力者らしい。
僕が知らなかっただけでこんなにも周りに能力者がいたと知った時はめちゃくちゃびっくりしたけど、やっぱり美希さんの言うことは確かだったんだなと改めて実感した。だから余計に能力者同士のバトルが3ヶ月後にあると実感してしまった。
どうやって大人が気づかないようにしているのか注意深く観察したら、偶然のように見える行動で回避していることに気が付いた。
例えば落ちてる物を拾ったり、周りの人に声をかけられて気づかなかったり偶然だと言われればそうとしか言いようがないことが起こる。でも、これは必然的に起こっていてそれも人成らざる者が起こしている。これを知った日から僕は色々なことを調べたり、聞いたりしている。といっても、聞き込みなんて出来るはずもないからネットや本で調べるぐらいなんだけど。
???「もう1週間経ったぞ?あいつの能力はよくわからんけど弱そうじゃん倒しちゃおうぜ?」
??「まぁ、バトルまであんまり時間もないからライバル減らした方がいいか。あの人別に見てる感じ身体能力も高くないというか低い方だし消えても問題ないでしょ。」
???「だな。なんか俺らのこと嗅ぎ回ってるみたいだし潰しとくか」
??「今からかい?一応誰かに見られない方がいいだろうから夕方とかの1人になった時に攻撃した方がいいんじゃない?」
???「それもそうか。能力に気づかないのは大人だけで俺らの戦いは能力者なら見えるしな。といっても夕方までどうするよ」
??「あいつの家は分かってるのだからカフェとかで時間を潰せばいいんじゃないかい?仮にあいつが僕達より先に動いたとしても君と僕の能力があれば軽く追いつくどころか追い越せるでしょう。」
???「だな。ここらに良いカフェとかあったか?」
??「確かこの近くにあの子がよく行くカフェがあるはずですが?」
???「あいつが行くのかよ。もし居たらどうするよ」
??「大丈夫ですよ。あの子は今日勉強会で家にいるはずですから。」
???「お前もうそれストーカーじゃないかよ」
??「あなたが嫌うから合わないようにチェックしてるだけですよ。ストーカーのような気持ち悪い人種と一緒にしないでください。」
???「一緒だろ(小声)」
??「はい?何か言いました?」
???「いや、何も。よし!そのカフェに行こう。道案内よろしくな」
??「…。まぁ、いいでしょう。」
僕、美希さんと出会ってから都心に通いすぎだろ…。
もう夏休みに入っていて僕は特に会う約束してなくても、やることがないとついここに来てしまう。しかも毎回同じ場所で同じことしてるとか変な人だよな完全に。。。
今日も例によってここ市立図書館に来てるわけなんだけど。
「今日は違うとこにでも行こうかな…。」
とは言っても1人だし、行きたい場所がある訳でもないから結局ここに入るんだよな。
「しっかし、相変わらずの広さだな」
ここ市立図書館は90万冊もの本を貯蔵する巨大図書館である。雑誌や漫画、小説、新書などいろんな種類の本が置いてある。しかもパソコンが50台もあり調べ物やら動画視聴など全てができる図書館である。しかも近くにカフェやコンビニ、スーパーもあるのでここで1日暇を持て余すことなく過ごすことが出来る。
僕がここに来る理由は大抵能力と能力者狩りについての情報を得るためだ。でも、いくら調べても美希さんが教えてくれたこと以外信用できる情報は載ってない。
まぁ、能力者狩りの情報が簡単に手に入ったらなりすまして犯罪を行い、罪をなすりつけることが出来てしまうからな。
これといって有力な情報が入らないまま長々とパソコンを触って今に至る。
「もう諦めた方がいいのかな。情報を掴んだとして僕の力じゃどうすることも出来ないし。それに、簡単に見つかるような情報は全部美希さんが教えてくれたし。」
少し長いため息をついて僕は立ち上がり使用カードに今の時刻を記入した。夏休みに入ってから毎日通ってたせいで記入欄には僕の名字が多くある。ある意味気持ち悪い。
「このあとは美希さんと行ったカフェにでも行こう」
??「あっ出てきたみたいです」
???「今あいつはどこに向かっているんだ」
??「…」
???「どうした?お前の嗅覚なら判別は可能なのだろう?」
??「それが…ここに向かってきてます」
???「は?なんでだよ俺らの存在がバレたわけじゃあるまいし」
??「確か、この前あの子と一緒にここに来てたような」
???「は?ってことはあいつはもう会ってたって言うのか?」
??「そうです。たしか前に『能力者だとあの子にバレたけどあんまり知らないみたいだから信頼される立ち回りをする』と。」
???「それを早く言え!それだったら俺らが動いて手を出すまでも無いじゃんかよ!」
??「すっかり忘れてまして…」
???「忘れてまして…じゃない!もし手を出したらあいつに何されるかわかったもんじゃない。あいつは唯一俺と同等に戦えるやつなんだからよ」
??「そうですね。どうします?まだここに居ますか?」
???「んなわけないだろ。早く出るぞ」
??「そうしましょう。」
???「1度アジトに戻る。乗せてってくれ」
??「わかりました。」
それにしてもさすが夏休み。人の量が休日の比じゃない。いつもなら割とすっと入れるのに今日は少し待つことになりそうだ。といっても雑誌で採り上げられてるようなお店の行列ほどではないけれど。
『やっとわかったようね。せっかく教えたのに伝え忘れるとかどういう神経してるのよ。まぁいいわ彼らが自由だということは、ボスも彼らのことを黙認しているんだろうから私がでしゃばることでもないだろうし。』
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか」
「抹茶フランデー1つお願いします」
「かしこまりました。」
1人でっていうのは寂しいな。今度は美希さんといる時に来よう。今は美希さんがいないから、いない時にしか考えられないことを考えてみよう。
1つ目は…僕が1人で戦う方法だ。万が一美希さんが一緒に戦えなくなった場合、僕一人で他の能力者に立ち向かうことになる今のままでは体力的にも力的にも弱すぎる。戦闘用じゃないとはいえもっと体力を付けたり能力の活用方法を考えていかないと速攻敗退になる。戦いが好きなわけじゃないけど、能力を多く見ておくことはこれからに繋がるだろうしこんな機会はそうそうないだろうから活かしていきたい。
『馬鹿だなぁ一緒にいないからってわからないと思ってんだ頭のネジ足りてないだろ!誰がいつ近くにいないと心を読めないって言った?私ぐらいになったら広範囲に展開しながら対象を限定することもできるんだよ。才能のないお前と同じだと思ってんじゃないよ!』
「な、なんか悪寒が…」
「お待たせいたしました。抹茶フランデーでごさいます。ごゆっくりどうぞ」
「いただきます………………美味しい。やっぱりここはどのメニューでも美味しいな」
『あーもう!そんなこと言ったら飲みたくなっちゃうじゃん!偶然を装ってあの店行こうかなこのビルのちょうど下だし…うん。いこう』
「いらっしゃいませー」
『あ!』
「ん?…あ!」
『偶然だね。最近よく来るの?』
「今日たまたまだよ」
『そうなんだ~あっミルクリーム1つで』
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
「決めるの早いね」
『こないだ来た時これも飲みたいなって思ってたから』
「そうだったんだ」
『うん。忘れる前に来れてよかった。ここのメニューってどれも美味しそうだから全部頼んでみたいんだよね』
「わかる!どれも美味しそうだし、今のところ全部美味しいから全部飲んでみたくなるよね」
『そうなんだよ!響輝君が今飲んでるのは抹茶フランデー?』
「そう。これも美味しいよ」
『今度それ頼もうかな…気になる』
「そうしたら?」
『うん!飲んだの忘れてまた頼まないようにメモっとこっと』
「意外と忘れっぽい?」
『そうなんだよね~ラノベとかで何巻も続くのとかどこまで読んだか覚えてるうちに出版されないからいつもメモっとくの』
「でも自覚あるだけいいと思うよ。対策出来てるのもね」
『そうかな?ありがとう』
「お待たせいたしました。ミルクリームでございます。ごゆっくりどうぞ」
『わー!美味しそう!』
「美味しそうだね」
『ここって写真とかも盛りやすい感じの入れ方と容器でテンションあがるよね!』
「僕は写真撮ったり盛ったりしないからわかんなかったな。おしゃれだなとは思ってたけど」
『いただきま~す。うん、やっぱり美味しい!』
「でもさ、ここってこんなに美味しいのに行列そんなに長くないよね」
『あ~近くに雑誌で採り上げられてる有名なお店があるからそこに人が集まってるんでしょ』
「そうなんだ」
『みたいだよ』
『「・・・・」』
会話が繋がらない…なんとなく能力の話はしずらいし…
『能力者同士のバトルでの勝負方法とか考えてる?』
「!?ま、まぁ…少しは」
『ふーん』
「み、美希さんはなんか作戦考えてます?」
『考えてるよ~負けられないからね~』
「あっ、聞きたいと思ってたんですけど、勝ったときの景品みたいなのって何があるんですか?」
『なんでも1つ叶えてくれる石が手に入るんだよ』
「美希さんは何を願うんです?」
『内緒。教えられないよ』
「そうなんですね」
『響輝君は?勝てたら何を願う?』
「んーなんだろう…」
権力?高い身体能力?いや、やっぱり
「能力変更…かな自分の能力を1日1つなんでも生み出せるにしてほしいかな」
『1つなの?もっと沢山作れた方がいいんじゃない?』
それは既に考えてたことだ。でも、1つならどんなものでも作れそうな気がする。
「いくつも作れると何かしら上限がありそうだから...です。」
あとは、前世を見るなんて能力じゃあこれから戦う時利用できそうにない。勝てたら、きっと勝負を挑んでくるやつも現れるだろう。そうなった時、戦えないと意味が無い。
『(読めてるってのに学習しなさすぎじゃないか?)』