03_魔王様、従順に悩む
私は魔王だ。
あ。
言い忘れていたが魔王とは魔族の王様のことだぞ。
頂点ということだよ。覚えておきたまえ。
それとだな。
実はまた新しい政策を始めたのだ。
この世界は教育をする場所というものが無くてだな。
急きょ魔物や人間の子供が歴史やモラルを勉強する場を設けることにしたのだ。
樹木系の部下たちの伸びた枝や前の道路開拓の時に出た岩の処理にも困っていた所だったからな。
それらを建材に使ったからエコだし現地で雇用も生まれていいことずくめだ。
もちろん教育というからには勇者という職業についても正しく教えているぞ。
他人の家のタンスを開けたりタルを割ったりされたらそこの家の人間が可哀想だからな。
勇者として尊敬される行いをきちんと教えているのだ。
皆に愛される勇者こそ全人類の敵たる私の宿敵に相応しいというものだ!
「魔王様」
おお、どうだ。
そろそろ勇者を夢見る子供でも出てきただろうか。
「魔王様に反発していた鍛冶屋たちが魔王様に感謝しているそうです」
は?
「以前は勇者がいなくなったことで武器や鎧が売れなくなりその原因である魔王様が嫌いだったが、
今回の政策で大工や金具屋としての雇用が生まれて以前より収入が良くなった。ありがとう、と。
こ れ か ら は 魔 王 様 に 感 謝 し 平 和 の た め に 金 槌 を 振 る い ま す!
と泣いているそうですよ」
・・・え?
私に立ち向かう勇者のために剣とか鎧とかじゃんじゃん作ってくれて構わんのだが。
「それと村のシンボルの勇者像を取り壊して魔王像を飾りたいという村も出てきまして、
村長たちも
こ れ か ら は 勇 者 で は な く 魔 王 を 称 え る 良 い 村 に し て い き ま す!
とのことです」
・・・・・・・・・・・・。
なんか泣きたくなってきた。