01_魔王様、順調に悩む
はじめまして皆様。
早速だが私は魔王だ。
先日は私の見事な指揮でまた土地と奴隷が増えてしまったよ。
我ながら素晴らしい頭脳と部下を持ったものだ。
はっはっは。
で だ。
これだけ好き勝手して人間の住処を支配してきて思うのだが、
人間には私を止めようという意思は無いのだろうか?
いや、大事な部下が怪我しないのは良いことだが、どの国も簡単に降伏してしまってな。
普通、自分の国が奪われそうになればそれなりに戦士を集めて立ち向かうべきではあるまいか?
「魔王様」
そうだ。今時の人間にはそこが足りない!
もっと魔王を倒して姫と結婚するとか歴史に名を遺すとか・・・
もう少し未来の自分に向かって色々考えるべきことがあるはずだろ!
「魔王様?」
・・・ん?ああ、すまん。何だ?
「まだ征服していない人間の国の特使を名乗る方がやってきました」
おお、ついに開戦の宣言でもしに来たか!?
遠慮はいらんから通してくれ。
「かしこまりました」
ふっふっふ・・・ついに長年温めていた魔王らしい決め台詞を言える時が来たか。
この時をどれだけ待っていたことか・・・!
「はじめまし魔王様。私は特使として我が国の王の言葉をお伝えにきた者です。」
コホン・・・ああ、そうであるか。
前置きも遠慮もいらぬ。早速その王の言葉とやらを聞いてみようではないか。
「では読み上げさせていただきます。
・・・我が国は数か月前に魔王侵略の噂を聞き一人の勇者を修行の旅に出させた。
しかし、その勇者が数日前に道中の山賊にカツアゲされて心が折れ、農民に転職を希望している。
つまり、
わ が 国 に は 戦 え る 者 が い な く な り ま し た 。
よって戦争を仕掛けられる前に降伏宣言をウンタラカンタラ・・・」
・・・・・・・・・。
どうしたものだろうか。