第3話 異変
「ん…何処だ…此処?」
[お目覚めですか?マスター輝]
「あぁ…夢じゃなかったのね…」
第3話 異変
前回、魔法少女としての初めての戦いを圧倒的な勝利と言う形で終わらせた火野輝は、突然の猛烈な眠気には打ち勝てずに倒れてしまったのであった。そんな輝が目を覚ましたのは、とても綺麗な病室だった。
「はぁ…なんか結構、寝た気がすんのにまだ疲れが取れてねぇな…」
[歳では?]
「俺はまだピチピチの21歳だっての…ってかなんでまだ女のままなんだよ。これちゃんと戻せるんだろうな?」
[そうですね…多分…戻せ…る…かな?]
「待て待て待て何だその自信の無い感じは嫌だぞこのまま女として生きていくなんて!」
と、その様なやり取りをしていると病室のドアが開き、そこから見覚えのある顔と全く知らない女性が出てきた。
「おはよう、目が覚めたみたいねお嬢ちゃん気分はどう?」
「取り敢えず、そこまで悪かねぇけど…一つ言わせてくれ…俺はお嬢ちゃんじゃねぇ‼︎」
「えぇ〜本当に〜?」
「…事実ですよ。私がこの目ではっきり見ましたから」
「ん、解ってるわよ。ただチョットからかって見ただけ」
そう言って謎の女性は悪戯っぽく笑った。
「さて…そろそろ自己紹介タイムにしようかしらね。私の名前は南条楓ピッチピチの27歳よ。よろしくね!」
「うわぁ」
どちらかと言えば美人なタイプの女性…南条楓の自己紹介を聞いた輝は、その無駄なテンションの高さに思わずどん引きしていた。
「ちょっ何よそのうわぁってこんな美人なお姉さんに対して失礼なお嬢ちゃんねぇ…」
「だからお嬢ちゃんじゃねぇっての‼︎」
と、全く迫力のない可愛らしい声で楓に反論する輝であった。
「あら、怒った顔も可愛いわね♪…とまぁ冗談はこれくらいにしてそろそろ本題に入らせて貰うわね」
こほんっと、軽く咳払いをして真面目な顔になった楓は少しずつ輝が疑問に思っているであろう事を順を追って説明を始めようとしていた。
「まずは、君の事は輝ちゃんって呼べばいいのよね?」
「…取り敢えず呼ぶんなら輝くんでお願いします」
「ん、了解。で、まずは輝くんが戦ってくれた相手の事から話しましょうか。あれの名前は魔獣。魔力の塊が実体を持った存在よ。まぁこれも後で説明するけど、魔界フィールドと言う特殊空間から現れて高い魔力を持った人間を取り込み、自らの肉体の糧にする事を目的とされている…まぁ分かりやすく言えば人間を襲う怪物よ」
「ふーん。ん?ちょっと待てよ…魔力が高い人間を襲うってんなら何でいままで俺は襲われ無かったんだ?フレイが言うには俺の魔力って相当高いらしいんだが?」
「これはあくまで仮説に過ぎないけど…輝くんの魔力を取り込みきれずに自壊する事を本能的に悟ったから…じゃないかしら」
[変身の時に襲われ無かったのも、そもそも取り込もうと思って無かったからなのかも知れませんね]
「そうね…基本的に取り込もうとしない相手には反応を示さない性質もあるみたいだから恐らくこの説で恐らく間違い無いわね」
自らの説が正しいと確信した楓はニヤニヤと若干気色悪く笑っていた。
「えーと…質問が有るんだがいいですかね?」
「えぇ何でも聞いて頂戴‼︎」
「うわっテンション高っ…で、魔獣ってのに取り込まれた奴は一体どうなっちまうんですか?」
「死ぬわ」
シンプルに、そして物凄く分かりやすく恐ろしい答えが帰ってきた。
「正確に言えば、取り込まれると言うよりかは食われると言ったほうが正しいわね。当然、食われるって事は…」
「要するにあれは人食いの化け物だったって訳か…魔法少女が戦うにしては随分と物騒な奴なんだな」
「ねぇこの子、私の話遮ったんだけどどう思うこれ?」
[マスターは長い説明があまり好きでは無いみたいですからね。恐らく飽きてきたんでしょう]
「ほぅ…この短い付き合いで俺の事を良く理解出来てるじゃねぇか。もういい加減魔獣の事は何となく解ったからそろそろ他の事を説明して貰えますかね、美人のお姉さん?」
「全く…まぁそう言われたからには、きっちり説明しようかしらね。次はそうね…魔法少女について話そうかし」
「それは何となく解るんで、魔界フィールドとかM.G.S.Cとか良く分からない単語についてお願いします」
「何なのこの子すぐ人の話遮るんだけど…まぁ良いわ。まず魔界フィールドってのはね…」
自分の扱いに対し、若干の不満を抱えながらも説明を始めようとした楓の胸ポケットにある通信機から警報音と共に焦った様子の声が聞こえてきた。
『南条司令、大変です‼︎D地点に強力な魔獣反応が出現しました‼︎』
「なんですってぇ⁉︎」
またもや話を遮られた楓はありがちな叫び声をあげた。そして輝は思った。これはまた厄介な事になりそうだな…と。
そして会話に全く入れないでいた美月は退屈だったからか眠ってしまっていた。
そんな美月に誰にも…本人すら気付かぬ内に、何処からか現れた黒い影が入り込んでいったのであった…
突然の魔獣の出現に、慌ただしくなるM.G.S.Cの司令室。そんな中司令官である南条楓に、出撃を要請された輝は変身しようとするのだが、病室にフレイを忘れてきてしまった事を思い出した。しかし美月がフレイを持って現れた事で安堵するのだが…
次回 「困惑」
少女の迷いが牙を剥く‼︎