第17話 覚悟 前編
「突然だけど新しい魔法少女候補を紹介するわね。今は候補ってつけてるけど直ぐに正式な魔法少女になると思うから仲良くしてあげて」
「よ…よろしくお願いし…ます…」
第17話 覚悟 前編
11月も半ばを過ぎた頃、突如、呼び寄せられた輝達3人は楓から新たな魔法少女候補として気弱そうな少女を紹介した。
「ほら、そんな弱気にならないで?さぁ元気に自己紹介いってみよう‼︎」
「…いやそのテンションは逆にやりずれぇだろ…なんかごめんな?こんなんがここのトップで…」
「い、いえ…私なんかに気を使わせちゃって申し訳ないです…そうですよねこれからアイドルとして頑張っていくんだから元気にいかないと…!えーっと私は」
「…うん。ちょっと待とうか」
明らかにおかしな単語が聞こえてきた輝は思わず少女の自己紹介を止めてしまった。
「君の名前も気になんだけど…なんだろう…アイドル?とか、変な…変ではないか、いや変だろ‼︎ここ秘密組織!アイドル事務所じゃないだろ‼︎なのになんでアイドル⁉︎歌って踊んねぇよ?魔法で戦うんだよ‼︎」
「へ?たたかう…?だ、だって…新しい魔法少女系アイドルグループの新メンバーやりませんかって…」
「楓さん。ちょっくらお話しましょうか?」
「ち、違うのよこれは…見解の違いと言うかすこーーし説明が遅れたって言うか…」
「いや、説明してねぇだけだろ‼︎このぽんこつ司令官‼︎」
前とは逆に怒られた楓は涙目になりながら雷葉達に救いを求めるが露骨に目線をそらされた。
どうしようもなくなった楓は仕方なく自分の行いを白状し始めた。
「いやね?定期的にやる魔力スカウトでね?すっごい魔力の子見つけちゃって…でもいきなり魔法少女やりませんかって…ねぇ?だから…ほら…見た目も…ほら…良かったし…アイドルとか…言ったら来そうかなって…」
「よし、死ね」
あんまりな理由に怒った輝は、楓に殴りかかったが流石に雷葉と美月に止められた。
「駄目ですよ!こんなんでも私達の上司なんですから殴ったら後々面倒くさいですよ⁉︎」
「そうだよ、兄ちゃん!こんなんの為にそんな面倒くさい事兄ちゃんが一番嫌だよね⁉︎」
「うるせぇ‼︎こんな詐欺師ここで修正してやる‼︎無駄に綺麗な顔しやがって…跡形も無く一撃で終わらせてやる‼︎」
「…止めてはくれるけどこんなん扱いなのね…やだ、号泣しそう…」
「えっ…と…どう言う事でしょうか?」
真っ赤な顔した女の子が涙目…と言うかほぼ泣いている女性を殴ろうとするのを小人少女と普通少女が止めようとする所を仕事の片手間、呆れた目で見ている職員一同(誰も止めようとしない)そして何がなんだかわからなくてオロオロする少女と言うよくわからない光景が繰り広げられていた。
そこに1人の救世主が現れた。
「えぇっと…どうしたのこの状況…あ、君が新しい魔法少女候補だね。ちょうど良かった。君に渡すデバイスの細かい調整の為に少しお話したいんだけど…ごめんちょっと待っててね、その前にこれなんとかしないと…ね」
その言葉と共に空気が凍りついた。怒っているのだ。蓮が…1番怒らせると恐い人物が…
「君達何してんのかな…新しい子をこんなに困らせて…まず…輝くん?その拳は何かな?君の拳はそれに向けるものじゃないよね?それに直ぐ頭に血がのぼるのは君の悪い癖だよって…前にいったよね?それから…楓?こんな事になってるって事は…またやったね?あれだけいったよね、変は勧誘するなって…あれかな?君達言ったこと直ぐ忘れちゃうのかな?それとも聞いてないのかな?馬鹿なのかな?……ごめん雷葉ちゃん、美月ちゃん。この子達は場所を移してもう少しお話してくるから…それまでこの子に説明とか…お願いするね…ほら…取り敢えず二人共…こっちにおいで…」
今回、標的にされた2人は耳を摘まれて蓮に引きずられていった。楓は泣き叫び、輝は真っ青な顔で全てを諦めていた。
「…場所…変えよっか?ここじゃなんか話辛くなっちゃったし…」
「…そうだね…多分あれは2時間は戻ってこないだろうから…うーん、とりあえず休憩室に行こうか。あそこなら落ち着いて話せるし、職員の人にそこに居るって伝えて貰えば問題もないだろうし…それじゃあ色々あって申し訳ないけど…行こうか?えーっと…」
「あっ…狩野風香です…よろしくお願いします…?」
狩野風香と名乗った少女と共に簡単な自己紹介をしながら美月達は休憩室に向かった。
休憩室に着いた彼女達は、とりあえず各々が飲みたい物を買い席に座って一息ついた。その後、それではと美月が話し始めた。
「それじゃあそろそろ説明会と行こうかな。雷葉も手伝ってね。まず…M.G.S.Cについてから話したいんだけど…楓さんからはなんて聞いてるのかな?」
「えっと、確か新しいアイドル事務所って聞いてましたけど…違うんですよね…?」
「そうだね……どうしてそうなったかは置いといて…まずここ、M.G.S.Cって言うのは簡単に言うと人知れず魔獣って人を襲う怪物と戦う魔法少女と、その支援をする職員達によって出来ている秘密組織だよ。それで…狩野さんには多分魔獣と戦う方でスカウトされたと思うんだよね。何かここまでで質問とかあるかな?」
「…は、はい…早速で申し訳ないんですけど良いでしょうか?まず…魔法少女って、その…えぇと…もしかして…これドッキリとか…そう言う?」
「う〜ん…やっぱ話だけじゃわかんないよね。それじゃ…電着‼︎」
あまりにも突飛な話について行けない風香はとうとうドッキリまで疑い始めてしまった。それを見かねた雷葉は無理矢理信じ込ませようと変身して見せた。
「…ふっふ〜ん。魔法少女、ライジングハート見参!な〜んてね」
「うわぁ…すごい…これ、本物なんですか?作り物とかそう言うのではなく?なんだかかっこいいな…私もこうなれるんですか?」
「もう雷葉ったら…それ私がやろうと思ってたのに…そうだよ。作り物…って言ったら作り物なんだけど…魔法自体は本物だよ。狩野さんにも相当な魔力があるみたいだからきっとなれるよ。でもね…」
雷葉の変身した姿に目を輝かせる風香に、微笑ましく思いながらも、顔を引き締め魔法少女としてのこれからも説明を始める美月であった。
「かっこいいとか、ちょっとやって見たいかなとか、軽い気持ちで始めるのはおすすめしないかな。…魔獣との戦いってね、今でこそすごく強い人がいるから割と安全だけど基本的に命懸けなんだ…それこそ今言ったすごく強い人が死にかけちゃうくらい…私も何回か危なかった…それくらい危険なんだって…」
「んなもん、実際見てみねぇとわかんねぇだろ」
美月の話を遮ったのは、蓮からの説教が終わりどこか疲れた表情の魔獣相手にはすごく強い人であった。
「あ、輝さん。お説教の方はもう終わったんですか?意外に早かったんですね」
「いや…楓さんはまだやられてるよ…俺はそこまで逆鱗に触れちゃいなかったみてぇだからまだ軽めで済んだが…まあ自業自得だからしょうがねぇか。それよりも今はその子の事だよな。そういや自己紹介もまだだったな…火野輝だ。今のなりはこんなだが一応男だからそこんとこよろしく」
「あ…えっとよろしく…ね?偉いね自己紹介出来て…何年生かな?あ、お姉さんはね?」
「うん。人の話聞こうか?お前の歳がいくつかは知らねぇけど俺21だからな?なんなら男に戻ったろうか、ああ⁉︎」
「輝ちゃん、落ち着きなよ。あたしもさっきそんな感じで…あいたっ‼︎も〜いきなりぶたないでよ兄ちゃん‼︎」
「…今のは雷葉が悪いよ。輝さん、話が進まないので落ち着いて下さい。と言うか一旦戻って下さい…説明するの面倒なんで」
「ちっ…わーったよ。そんじゃフレイ、やるぞ…」
[了解…久しぶり過ぎて戻れるかわかりませんが…]
「いや…ちょっと待った方が…」
風香に色々と勘違いされ、雷葉に若干からかわれ、美月にすごく面倒くさい感じにあしらわれおまけにフレイに不穏な事まで言われて本日なんか散々な輝は不安に思いながらも男に戻る為の手順を行なった。しかし嫌な予感がした雷葉は一旦止めようとしたが一歩遅かった。
無事に戻る事は出来たがそれを間近で見た風香は驚いて気絶してしまった。雷葉の予感は的中していた。
「…よし、ちゃんと戻れてんな…どうよ?これで信じ…っておぉっと⁉︎」
「狩野さん⁉︎…駄目ですね…気絶しています…」
「…慣れちゃったからアレだけど…やっぱ初見だとこうなるよね…知ってても直接見た時はびっくりしたし…てか兄ちゃん、そのカッコで女の子いつまでも抱いてちゃダメだよ。絵面完全に犯罪だよ…通報しよっか?」
「いやなんでだよ!…そんな不審者に見えるか俺って…」
「そんなに落ち込まないで下さい、何時もの冗談ですよ。それより狩野さんを…そこのソファにでも寝かせてあげましょう」
「ああ、それもそうだな。…しょっと、見た目より軽いな。つかこいつ歳いくつだよ、見た目的にゃ美月とタメぐらいか?」
「確か…13歳って言ってましたね。雷葉より一つ下みたいです。大人っぽくてちょっと羨ましいですよ」
「…ほんと羨ましいよね…なんでこの世界はこんな理不尽なんだろう…いつもそうだよ、実年齢よりはるかに下に見る…身長だけで人の事見やがって…ざけんじゃねぇっての…」
「その事についてはわかっけど今は置いとけ。後、その喋り方はやめろ」
「そうだよ雷葉、そんな話し方女の子がしちゃ駄目だよ?…もぅ、輝さんがそんなんだからこの子に悪影響がいくんですよ?いい歳なんですからしっかりして下さい」
「…え、俺のせい?あーあ、戻んねぇ方が良かったかなこりゃ…面倒くせぇ…」
[マスター、あまり面倒くさいなどと思っても口にしてはいけないですよ。それにその言葉使いもあまり良いものとは思えません。この中では最年長なんですから、しっかりして下さい]
[そーだそーだ、しっかりしろー]
[…美月の言う通りだ…少しちゃんとしろ]
「お前らな…急に喋りだしたと思ったら…なんか色々とついてねぇな今回…ははっこれから魔獣でも出たりして…なーんて流石に」
輝の冗談を遮りあちこちから警報が鳴り響きはじめた。
「…輝さんのせいですよ…これ…」
「兄ちゃん…」
「…ぜってぇ俺悪くねぇ…」
「ハッ…凄い音…何⁉︎」
鳴り響く警報の音で目が覚めた風香の目に映ったのは涙目の成人した男であった…
後編へ続く




