第15.5話 短編?
《武器が欲しい》
「…なんか、お前らばっか武器使ってずるい」
3人での魔獣退治の後、輝は2人の武器を見て突然、羨ましそうに言った。
「どうしたんですか、急に?」
「そうだよ兄ちゃん。ってか、素手で充分だよね?」
「それはそうだが…なんだかな…そう言う武器って…なんかカッケェじゃん?俺だけ素手じゃん?…寂しい…じゃん…」
「あ〜そゆことね。蓮さんに頼んで作って貰ったら?」
「いらないよ…ね?だってさ…いや確かにいらねえけどよ…なんか魔導兵装召喚!とかやってみてぇじゃん?俺だけ魔導兵装ないじゃん?寂しいじゃん?」
「どんだけじゃんって言うんですか…寂しいのはわかりましたけど…でも使うとしたらどんな武器が良いんですか?」
「そりゃあ………剣…と…か…」
「浮かばないんだね…やっぱいらないんじゃないかな?」
[いりませんよ。それに魔導兵装なら常に装備してるじゃないですか]
「え?…ってまさか…俺自身が…⁉︎」
[違います。いつも装着しているナックルガードと、ブーツが魔導兵装です]
「あれ魔導兵装なのかよ⁉︎普通に基本装備だと思ってたわ‼︎」
[もっと言うと、バーニングモードそのものが1つの魔導兵装と言えます。そもそも魔導兵装とは…]
「…うん。もういいわ…かーわかってねぇな…どいつもこいつも…武器ってぇのはな…男の…」
「みづきち、なんかお腹へったから食堂行こうよ。最近、新しいメニューが追加されたんだって」
「いいね、それじゃ行こうか。あ、輝さんお疲れ様でーす」
「…召喚の時の口上とかそう言うのがな、また…あれ?誰もいねぇな…」
[…マスターの説明が長くて行ってしまいましたよ…人の事言えませんね…マスター?]
1人寂しく取り残される輝であった…
《輝の一日》
M.G.S.C所属の魔法少女、バーニングハートこと火野輝。
そんな彼の激動の一日を少し覗いてみよう。
朝、彼の一日はM.G.S.C本部にある仮眠室から始まる。いつ如何なる時でも出撃出来るように月曜日から金曜日まではM.G.S.Cで寝泊まりしているのだ。とりあえず9時くらいに目覚めた彼が第1に向かう場所は蓮の研究室である。最近では来るのがわかっている蓮にコーヒーを淹れて貰い、それを優雅に飲みながら新聞を読むのが彼の日課になっていた。その後はトレーニングルームに向かい筋トレ…ではなく二度目の睡眠を始める。なぜトレーニングルームなのか?この時間帯は誰も使っておらず非常に静かであるのがまず1つ。次に夜勤明けだが家に帰れない職員が大量に仮眠室に来るのが理由の2つ目だ。基本1人でのんびり寝るのが好きな輝にとって人がやたらいる仮眠室はとてもではないが寝られる場所ではないのだ。
ここで12時ごろまで寝た輝が次に向かう場所は食堂である。所属している職員ならば誰でも無料で利用出来るこの場所ですっかり定番になってしまった生姜焼き定食キャベツ抜きを頂く。ご飯がやたらと進む生姜焼きに、あさりの入った味噌汁と言う最高の組み合わせは一度味わったらそれ以外頼めなくなってしまう程の魔力であった。
そして昼食を食べた輝はまたトレーニングルームに向かう。そして食後の運動…ではなく昼寝を始める。この時間帯…と言うか基本的に全く使われていないため寝るには持ってこいの場所である。
それから夕方頃まで眠るが、ここで邪魔が入る。学校が終わった雷葉の登場である。非常に活発である彼女は、ゆっくり過ごしたい彼にとっては邪魔でしかなかった。美月が来ればそっちに押し付ける事も可能だが今日の美月のシフトは休みであった。雷葉も休みなのだが友達と都合が合わずに仕方なく暇つぶしにこちらに来たらしい。ちなみに土曜と日曜は学校がない為2人のいずれかが本部に寝泊まりする。仮眠室ではなくちゃんとした部屋で。
とにかく、この面倒な小娘をどうにかして寝ていたい輝は、とりあえず楓を呼ぶ事にした。呼ばれて飛び出てすぐ来た楓に雷葉を押し付け再び寝ようとする輝であったが、流石に寝過ぎと楓に怒られ無理矢理、雷葉との合同訓練をやらされてしまった。程よい時間になり雷葉は帰宅。再び寝ようとするが腹が減ってしまった彼は食堂に行き生姜焼き定食キャベツ抜きを注文しそれを美味しく頂いた後、シャワールームに向かい軽く汗を流してから再び仮眠室に向かい人が余りいない事を確認してから眠りにつくのであった。
以上が彼の魔獣が出て来ない場合の一日である。
[…マスター…少しは自主訓練でもして下さい…]
「良いんだよ…魔獣が出てねぇ時は自由にしていいって…楓さんが言ってたんだからよ…」
後日、この生活をフレイにチクられ楓にバレた輝は定期的に訓練を入れられた。
「流石に自由にし過ぎよ…全く…」
《炎の魔法少女》
季節は移り変わり、10月も後半になって若干肌寒い気候になってきた。
「う〜なんだか最近寒くなってきたね〜…兄ちゃんそんな薄着でよく大丈夫だね?」
「そんな寒いか?…そういや魔法少女になってからあんま暑いのとか寒いのとか感じなくなったな…まさか⁉︎」
[副作用とかはありませんからね?ただ固有魔法が常時発動しているだけですよ]
「常時発動…ってそれ大丈夫なのかよ⁉︎」
[はい。マスターの有り余る魔力の影響で勝手に発動していますが、基本的に体温を色々と調節したり……とにかく今のマスターは気温の変化にとても強くなっているだけなので副作用とか心配しなくて大丈夫ですよ]
「ほー、なんつーか便利な能力だな…ってか説明途中で面倒くなったよな?」
「…なんかずるいな〜兄ちゃんばっか、そんな便利な能力…ボルト、あたしの超高速化も普段から使えないの?」
[無理だ。あれはあいつの魔力が異常だから常時発動出来るのだろう。貴様の魔力でそんな事をやればいざという時に変身出来なくなるぞ]
「そっか。兄ちゃんが異常なだけか。ならいいや」
[そうですよ、雷葉。この方が異常なだけです。こうなりたいとは思わない方が良いですよ]
「異常異常って…ひでぇ奴らだよ…全く…」
やたらと異常と言われまくった輝は、少し肩を落としながら久々の家での食事の為に雷葉と共に帰宅の足を進めるのであった。




