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第15話 激闘

[…マスター…二人が戦っていますよ。良いのですか、このままで……マスター…お願い…死なないで…!]


第15話 激闘


ツヴァイとの戦闘を続ける、美月と雷葉であったが最後の切り札であるフルブーストモードに移行したツヴァイの力に徐々に追い詰められていった。

そして、なんとかフレイの生命維持機能で繋ぎ止めていた輝の命の火も段々と消えてしまいそうになっていた。


[…マズイぞ…このままだと輝は…]

「わかってる…っ‼︎くっ…けど、うわあっ⁉︎あの機械…強過ぎ…だな…」

「アクア!固有魔法で一気に…」

[…ごめんね美月ちゃん…再チャージまでの時間が…まだなんだ…]

「だったら…ボルト!あたしの固有魔法を使うよ‼︎」

[駄目だ。今、そんなものを使った所で追いつけるのはスピードしかない。速さで追いつけても倒さなければ何の意味も無い…ただ…方法が無いわけじゃ…無いがな…]


ボルトは固有魔法の使用を却下しながらも最後の方法を…切り札の存在を語り始めた。

それを聞くため、雷葉は少し距離を離した。


[私達デバイスにはリミッターがかけられているのは知っているな…本来ならこのリミッターは他のデバイスと同調させ使用者の魔力が一定以上になった時に外す事が出来る…だが、その同調に必要なデバイスの数は…3つだ…]

「3つ…なんだちょうどあるじゃん…それなら…」

[ああ…だがそれはちゃんと使用者がいる場合だ…2人しか居ないこの状況では…]

「あ〜もう、長い‼︎2人でも使えるんだよね⁉︎だからわざわざそんな事言ってるんだよね?」

[…何故、そう思う…]


その問いに雷葉は笑顔で答えた。


「だってあたし達、相棒でしょ?」

[っ!…死ぬかもしれないぞ…もう家に帰れないかもしれないぞ…それでも…]

「良くない‼︎…だから絶対死なない、あいつを倒して家に帰る‼︎だから教えて…悪を打ち砕く切り札を‼︎]

[…全く、変な所似てきやがって…恐らく美月の固有魔法を使えば、リミッターを無理矢理外せるだろう…その代わり、貴様と美月の息が少しでも合わなければ、2人共負荷に耐えきれずに死ぬ…だろうな。それでもやるか?]

「…答えなんて、わかってるよね?みづきち!あたしを信じて、力を貸して‼︎」

「くっ…はぁっ‼︎…そんなの言われなくても最初から信じてるよ」


雷葉がボルトと話している間、1人でツヴァイを抑えていた美月は渾身の力で相手を吹き飛ばし、雷葉の隣に降り立った。


「それで…どうすればいいの?」

[美月の固有魔法を使用後、2人の魔力を同調させて無理矢理リミッターを外す…危険な賭けだが、今はこれしか策がない‼︎アクア、美月の固有魔法は使えるか⁉︎]

[…うん、チャージは完了したよ!そうか…美月ちゃんの固有魔法で強引に解除しようって事だね…でも失敗したら…]

「やる前から失敗する事なんて考えない‼︎…アクア私達を信じて、私も貴方を信じるから‼︎…行くよ、雷葉‼︎…」

[了解、みづきち‼︎…」


2人は意識を集中し、心と力を合わせた。


〔なニをしテも無駄ダ…死ネェェェエ‼︎〕

「「リミッターバースト‼︎」」

[[mode-dualburst‼︎]]


美月に吹っ飛ばされていたツヴァイは、2人に襲いかかろうとしたが、それは叶わなかった。2人のいた地点から高出力の魔力弾がツヴァイを再び吹き飛ばしたからである。


「これが…バーストモード…」

「…ちょっと期待したけど大きくはならないんだね…でも、チカラが漲る…これなら負ける気がしない‼︎」


2人は自分達の力に驚きながらも、勝利を確信した。する事が出来た。それほどまでの力が漲っていた。


[…油断はするな。現状から5分が限界だ。その間に決着をつけろ]

「5分…充分‼︎…それでは、反撃開始‼︎」

「いっくよ〜‼︎」


2人は同時に飛び立ち、ツヴァイに攻撃を仕掛けた。まずは雷葉が固有魔法、超高速化を発動しさっきのお返しと言わんばかりの連打連撃を加え、思い切り打ち上げた。それを待っていたと、美月はリボルバースピアから魔力光線を打ち出し、ツヴァイを撃ち抜いた。


〔がァ…何故ダ、こレほどの力ハ、データに無イ…ボくが負ケる要素ナド、無カった筈ナのニ…〕

「その慢心が…貴方の敗因だよ‼︎雷葉、トドメを刺すよ‼︎」

「了解、みづきち‼︎…それじゃ雷光‼︎」

「!そういう事だね…マジカル‼︎」


2人は息を合わせて叫んだ。今、最も救いたい男の、最初の必殺技を


「「バァーニング…インパクトォォォ‼︎」」


想いと意地を乗せて放った必殺技は、ツヴァイの身体を真っ二つにした。


〔…ソんな…こノ僕ガ…〕

『ツヴァイ…帰還しろ…お前はまだ…必要だ…』

〔おトうサま…了解……覚エていロ…魔法少女どモ…次はかナらず…殺ス…転移魔法…発動…〕


下半身の爆発に紛れてツヴァイは転移魔法によって姿を消した。そうとは知らずに2人は自分達の勝利を確認してから通常形態に戻った。


「ふぅ〜何とかなったね〜…みづきちって相変わらずマジカルって使ってたんだね〜」

「っ…べべ別にいいじゃ無い!必殺技くらい好きな名前つけたって…雷葉だって雷光何とかってつけてるじゃ無い‼︎」

[…2人共、早くマスターを運んで下さい…このままだと本当に死んでしまいます…]


主人の事をすっかり忘れて言い争いをする馬鹿娘達に、呆れた様子で頼んだ。


「はっ…すっかり忘れてた!急いで運ばないと…よいしょっと、それじゃあ帰ろっか」

「うん、急いで帰ろ‼︎…兄ちゃん死んじゃ駄目だかんね‼︎」


多分、輝の意識があったらさっきまで忘れてたくせに…とか言いそうだったが意識はないので全く問題はなかった。あえて問題があるとすれば…本当に輝が死にそうであった事であろうか。


ーーーーーー


何とか無事に本部まで帰ってきた美月達であったが、そこからがまた大変であった。

まず輝の容体だが、こちらはかなり危なかった。全身の筋肉が断裂しており、骨も何本か折れていた。内臓も何個か穴が空いており、生きているのが奇跡と言える程の重傷だった。が、そこは魔法少女システムなんて物を開発した蓮が何とかしてくれていた。こんな事もあろうかと、全身のありとあらゆる傷を、魔法の力で強引に治してしまう装置を即席で作っていた。それを使う事で、本来ならもうニ度と立ち上がれなくなっていたかもしれない輝の身体は綺麗に治っていた。しかし即席の装置であったため、使用後に直ぐ壊れてしまい急いで作った為か設計図すらないのでニ度と作れなくなってしまったが、そんな事はあまり問題ではなかった。とにかく輝は無事であり、今は安らかに寝息を立てていた。

一方、そんな輝を救ってきた魔法少女達はと言うと…


「あ〜…痛いな〜…あの装置使いたかったな〜…」

「しょうがないよ…いててっ…たかが筋肉痛くらいで…つぅ…やっぱり使いたかったかも…でも、輝さんが無事で本当に良かった…」

「…うん…本当に…危なかったんだね…」


2人は無理矢理バーストモードを使用した事による反動で、全身筋肉痛になっていた。

しかし、輝が無事だった事で2人の表情は終始穏やかであった。


帰還当初は、輝の状態を把握しきれておらず直ぐに集中治療室に運ばれていった輝を見て事の重大さに気付いた2人は、雷葉はまた家族を失うと思い泣きじゃくり美月も、もっと早くに倒せていればと自分を責めながら悔し涙を流していた。そんな所に汗だくの蓮が登場し、輝を連れ去り自分が作った装置に放り込んで治してしまった。あんまりにも突然過ぎて、何があったのかわからない2人であったが、蓮から


「もう大丈夫。だから泣かないで…ね?」


と、言われた事で全部解決した事を悟り安心しきった所を、筋肉痛と言う魔獣に襲われ今に至った。


「…今は、休んでもいいよね…あたし達、頑張ったもんね…」

「うん…今だけは…休もうか…明日から…また頑張る…か…ら…」


疲れによる眠気が限界に達した2人は、ゆっくりと瞼を閉じて眠りに落ちた。

今だけは魔獣が出ない事を祈りながら……

「朝起きて、おはようって言ってくれる人が居るって…いいよね…」

「…何、突然語ってんだよ…ってか俺まじで出番無かったんだけど⁉︎」

[次回、家族。マスター、無理ばかりするからこうなるんですよ?]

「…それあたしが言いたかったな〜…」

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