第13話 水心 後編
[ど、どうしよう…本当に嫌われちゃった…ああ…やっと話せそうだったのに…]
第13話 水心 後編
「…で?どうすんだよ。このまま嫌われたまんまで良いのか?」
[よくは無いよ…でも…もう駄目だ…あんな顔させちゃった…確かに困った顔が良いな、とは…思っちゃったけど…でも…]
「あー!もうめんどくせー‼︎ごちゃごちゃ御託はいいんだよ‼︎仲直りしてえのか?それともこのまま解体されてえのか?どっちなんだよ⁉︎そんな簡単に諦めちまう程度の感情だったのかよ?お前の想いは‼︎」
美月の涙を見てしまったアクアは、大変落ち込んでしまっていた。そして全てを諦めそうになっていたが、それはこの物語の主人公が許さなかった。そんな輝を見て雷葉は(こう言うとこは響子ママに似てるんだね)と思ったが、言ったらまためんどくさい感じになりそうだったので、ぐっと抑えた。
[よくない…よくないよ‼︎でもどうしたらいいのかわからない…そんな事教わってない!…ねえお兄さん…僕はどうしたらいいかな…それだけ言うなら教えてよ…]
「んなもん、一つしかねえだろ?謝りゃいいんだよ」
輝は至極簡単な…しかしいざやろうとするととても難しい答えを出してきた。
[謝るって…そんなの…]
「…うん。それしか無いと思うよ。何でこんな事になってるのかはわからないけど…でも悪い事しちゃったって…それがわかってるなら、謝っちゃうのが一番早いよ」
「お前、美月が好きなんだろ?それこそ困った顔が見たくなっちまうくらいに…その好きって気持ちを全部あいつにぶつけて見ろ…自分の事そんだけ好きって言われて悪い気する奴なんざそうはいねえからよ…そっから、全力で謝れ…困った顔見たくて無視するよりかはずっと良い印章が出来るぜ…まあこんだけ言ったんだ…俺も付いてって…」
そこまで言った輝の胸にいるフレイから、慌てた様子の楓から通信がきた。
『輝くん!それに雷葉ちゃんもそこにいるわね!魔獣が再び出現したわ!状況を話したいから直ぐに司令室にきて‼︎』
「了解!直ぐに行きます。…悪いな、謝んのは後で必ず付き合ってやる。大丈夫だ速攻で終わらせてくっからちっと待ってろ。行くぞ、雷葉!」
「待ってよ、兄ちゃん!それじゃ行ってきま〜す‼︎」
2人は真剣な表情で研究室を後にした。
「行ってらっしゃい…さて、どうするのかなアクア…この場で私に解体される?それとも…私と一緒に美月ちゃんに謝りに行く?」
[!お母様…うん…わかったよ…僕も覚悟を決める…!ありがとうお兄さん…僕も戦ってくるね‼︎]
そして1人と1機は美月の魔力反応を辿りそして、1人で泣きじゃくっている美月を見つけるのであった。
「ぐすっ…アクアの馬鹿…もう知らないんだから…」
「可愛い顔が台無しだよ?お嬢さん。ほらアクア…言いたい事…あるんだよね…?」
「…蓮さん…なんですか?私と話したくも無い意地悪デバイスさん?」
蓮の事に気付いた美月は、アクアもそこにいる事も把握し、少し拗ねた様に尋ねた。
[うぅ…えっと…えっと………ごめんなさい…]
「…アクア…なんで、今まで喋ってくれなかったの?…すごく…辛かったんだから…」
かなりどもりながらも、謝ってきたアクアに対し、まだ少し怒りながらもなぜこの様な事をしたのか…そして自分がどうな気持ちだったのかを美月は伝えた。
そんな美月にアクアは、まだおどおどしながらも答えはじめた。
[…えっと…一目惚れだった…こんな娘と一緒に入れるんだって…嬉しくなって……初めて話しかけてくれた時…その…恥ずかしくなっちゃって…なんも言葉が出てこなくって…その時の美月ちゃんの…顔が…また可愛くて…どんどん好きになっちゃって…また恥ずかしくなっちゃって…そんな事している内に…話せなくなっちゃって…どうしたらいいのかわかんなくなっちゃって…本当にごめんなさい…許せないよね?安心して、このままお母様に分解して貰うから…でも…わかって欲しかった…だから…]
「…許さない」
アクアの話を聞いた美月は一言そう言った。
それを聞いたアクアは、諦めた様にしかしどこかスッキリした様に呟いた。
[…そっか…そうだよね…わかった…お母様…いこ]
「許さない。まだ何も話してない…まだ何もわかってない!なのに分解される…?馬鹿な事言わないで‼︎そんなの絶対許さない…ねえアクア…私ね…嬉しかったんだよ…私だけの相棒が出来るって…なのになかなか話してくれなかった…それがやっと話してくれたのに…今度は分解される…ふざけないでよ‼︎私だってアクアの事もっと知りたい!好きになりたいの!だから…そんな簡単に諦めないでよ…馬鹿…」
アクアの諦めに対し、美月はさっきよりも怒っていた。そして泣いていた。
美月にとって初めてだっのだ。自分だけのデバイスは。開発が決定した頃からずっと待ちわびていた。その間にフレイやボルトとも仲良くなったが、それでも自分だけの相棒を心待ちにしていたのだ。それが分解されるなど絶対に許せる事では無かった。
「…アクア…誰が君を分解するって…うん似たような事は言ったね…でも、美月ちゃんの気持ち…伝わったよね…?伝わってないって言うなら話は別だけど…」
「ま、待って下さい‼︎ほらアクア!伝わったよね⁉︎お願い伝わったって言って〜‼︎」
[…良いの?僕を…使ってくれるの…?許してくれるの?僕と…一緒にいてくれるの?]
慌てて蓮からアクアをひったくり、自らの想いを伝わったと言えと強要する美月に、アクアは戸惑う様に尋ねた。
「…二つ…お願いがあるかな…もう絶対無視しない事‼︎すっごく辛かったんだからね?もう一つは…私といっぱい話す事‼︎それが出来るのなら…今回は許してあげる‼︎」
[…‼︎うんっ、絶対に守るよ‼︎だから…これからよろしくお願いし]
『美月ちゃん⁉︎ちょっと大変な事になってるんだけど…こっちにこれる⁉︎』
アクアの台詞に重ねる様に慌てた様子の楓から通信がきた。
「わかりました、直ぐに向かいます。…それじゃ行こうか。私の相棒さん?」
[…うん‼︎行こう、美月ちゃん!]
「行ってらっしゃい…怪我しない様に…ね?」
はいっ‼︎と、元気よく走り去っていく美月を見送り、帰ってきたら美味しいコーヒーを淹れてあげようと思いながら、蓮はその場を後にした。
今、ここに新たなる魔法少女のコンビが誕生したのであった……
ようやくアクアと和解した美月であったが初陣から苦戦を強いられてしまうのであった…
次回 「相棒」
相棒を信じ、自分も信じろ‼︎




