第13話 水心 前編
「今日もお仕事と行きますかね…変…身!…行くぞ雷葉!」
「了解!アッキー兄ちゃん!…電着!」
第13話 水心 前編
輝がM.G.S.Cに入り、既に1ヶ月が経とうとしていた。
この1ヶ月間で、輝は20体以上、雷葉も8体程の魔獣を討滅していた。しかし…
「…今日も目覚めないのね…アクア…」
二人が出撃していく所を見送った美月は、水色のデバイスに悔しそうに語りかけていた。
(アクアが完成して、私に渡されてから既に2週間…か。でも、何故かアクアは一切の言葉を発しなかった。不具合かと思って蓮さんに何度も調べて貰ったけど…結局、異常は見つからなかった。アクアが私を認めれば自然と目覚めるらしいけど…)
「でも…どうすれば認めてくれるの…アクア?」
美月は恨めしくアクアを見つめている内に、今回の戦闘が終わって2人が帰ってきた事に気付き、暗い顔を隠して出迎える事にした。
「2人共お疲れ様。怪我とかしてない?」
「ふぃ〜…お、美月じゃねぇか。とりあえず2人共怪我はねぇよ。ま、こいつはちっと危なかったけどな」
「む〜…兄ちゃんがあたしの邪魔したから悪いんだよ!聞いてよみづきち〜兄ちゃんったらね〜?」
「わかったわかった、後でゆっくり聞くから…ほら楓さんに報告とかしてきたら?輝さんも、蓮さんが呼んでいましたよ」
2人の事を飽くまでも明るく出迎えた美月であったが、その心はとても暗かった。
(ダメだなぁ…こんな気持ちは…2人は命懸けの戦いをしてきたんだから…羨ましいなんて思ってちゃダメだよね…)
「ほら、楓さんがあそこで恐い顔で待ってるよ雷葉?輝さんも後でそちらに行くって蓮さんに伝えておいて下さい」
「ん?おう、わかった。ほれ雷葉、美人のお姉さんとトークしてこいよ。俺は美人で優しいお姉さんとトークしてくるからよ…じゃーなー」
「あっ…兄ちゃん出来ればあたしも…」
「何処に行こうってのかな〜?ら・い・は・ちゃん?」
「ひぃっ…」
何故だか凄く怒っている楓に、雷葉はまるで子猫の様に首根っこ掴まれて連れ去られてしまった。その後ろ姿に手を合わせた後、美月は蓮の研究室に向かった。
研究室の前まで着いた美月はノックして入ろうとするのだが…
ーーいや…だめですよ…そんなーー
ーー大丈夫だよ…お姉さんに任せてーー
「な、ナニしてんですかー⁉︎」
「…かけ過ぎですって…ん?美月か。どうしたそんなに慌てて」
「…これくらいかけた方が絶対美味しいから…ね?…って美月ちゃん?いらっしゃい。今コーヒー淹れるね」
ドアを開けて美月が見たものは…クッキーに大量のジャムをかけようとしている蓮と、それを止めようとしている輝であった。
「……何でもないです。忘れて下さいっ…」
「ん〜?気になるな…まあいいか…ほれ、クッキーと新作のイチゴジャム。程よくかけると凄え美味いぞ。…かけ過ぎ注意な」
「あっ…頂きます…ん〜おいしー♪この甘酸っぱい感じずっと食べられちゃいそう…ってそうじゃ無くてですね…」
「はい、美月ちゃんのコーヒー。あらかじめミルクと砂糖入れといたから…もっと入れた方が美味しいとは思うけど…入れ過ぎると…その子に怒られるから…」
「あ…ありがとうございます。ずずっ…はぁ〜ちょうど良いですよ…ってそうでも無くて‼︎蓮さん、輝さんにお話って何だったんですか?後、アクアの方を少しだけ見てもらいたいんですけど…」
「ああ…輝くんへの話?大した事じゃ無いよ。ただジャムが美味しく出来たから食べて欲しかっただけで…そろそろ楓の話も終わった頃だろうし、悪いけどコーヒーを飲み終わってからで良いから雷葉ちゃんも呼んできてくれるかな?後これ、司令室の皆に食べて貰って…アクアの方はすぐ見ちゃうから今預かっちゃうね」
蓮は、美月にクッキーとジャムが入ったバスケットを渡した。美月は快く了解し、コーヒーを飲み干しアクアを渡してから研究室を後にした。
「…ふぅ…誤魔化すのもなかなか疲れるね…さて…輝くんに話したい事なんだけど…」
「…あいつの事っすよね…何と無くわかってます…なんか無理してんなって…あいつのデバイスって完成してるんですよね?蓮さんが言うんなら間違い無いと思うんですが…」
「うん。間違い無く完成はしている。ただ…何故だかわからないけど美月ちゃんの方が…その…アクアを無意識の内に拒絶しているみたいなんだよね…ね、アクア?」
[…うん…何だか僕の事、嫌がってるみたい…僕そんなに駄目なのかな…?]
蓮に尋ねられたアクアは、落ち込んだ様子で喋り始めた。
「おまっ…喋れたのか…なんで今まで喋んなかったんだ?」
[いや、喋ろうとしたんだよ?でもね、あの子を前にすると何も言えなくなる。大切な言葉、大切だと思う言葉を言いたいのに…もっと仲良くなりたいのに…]
「いや、何急に詩的になってんだよ…それってただお前が照れてるだけなんじゃねぇの?」
[そ、そんな事…無いよ!べ、別にすっごく可愛くて、優しそうで、ちょっと困った顔もなんか良いな…とか思ってなんかいないよ‼︎」
「いや、お前やっぱり照れてるだけじゃねぇか‼︎てか美月の事好き過ぎだろ‼︎なんだ困った顔もなんか良いって…困らせてるだけじゃねぇか!小学生か、お前は‼︎」
「…ありがとうね、輝くん。やっとアクアの本心がわかったよ……さて、アクア?どう言う事かな…返答次第では…ねぇ?」
[えっと…あの…お母様?なんだかとってもお顔が恐いですわよ?あ、やめてやめて‼︎分解しないで!ごめんなさい!ちゃんと話すから!だからそのドライバーから手を離して!やめてよしてやめて〜‼︎]
「だからナニしてんですかー⁉︎」
雷葉とゆっくり談笑しながら研究室まで戻ってきた美月は、再びノックしてから入ろうとしたら中から女の子の嫌がる声が聞こえてきた為、慌ててドアを開けて入った。
「…えーと、この状況は…?」
「どうしたの、みづきち?急に…なにこれ」
2人の目に入ってきたのは、ハイライトを失った目で水色のデバイスを解体しようとしている蓮と、それを合掌しながら見ている輝の姿であった。
「…さようならアクアくん。君の勇姿は忘れない…」
[ちょっと…諦めないで、たすけてよ!お姉様も、お母様に何とか言って〜!]
[まさか、貴方がここまで愚かだとは…我が妹ながら恥ずかしい限りですよ…少し痛い思いをして反省しなさい…]
「アクア〜?そんな嘘つきな悪い娘として作っていないんだけどな〜?どこが悪いのかな〜?頭かな〜?馬鹿なのかな〜?壊れてるのかな〜?」
「…あんなに怒ってる蓮さん初めて見たよ…ってか、みづきち!早く行かないとアクア解体されちゃうよ⁉︎」
「……喋れたんだね…アクア…」
このままではアクアが解体されると思い、美月に止めに行く様に言った雷葉だったが、美月の目からもハイライトが消えている事に気付き、もうだめだなって思った。
[えっ…あ、美月…ちゃん…えっと…その…]
「…もう…良いよ‼︎」
美月は相当頭にきたのか、勢いよく飛び出して行ってしまった。その目には涙が浮かんでいた…
後編に続く




