表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

第11話 選択

「お待たせ…ごめんね?ちょっと時間がかかっちゃったね…」

「あぁ蓮が謝らなくていいのよ!…えーと、そのごめんなさいね?ほら…ここちょっと分かりづらい所にあるから…お詫びにおにぎり買って来たわ!お腹空いてるでしょ?はい、どー」

「あ、いま甘いの食べてるんで大丈夫です」


第11話 選択


蓮が楓を迎えに行ってから30分程経っていた。すっかりコーヒーも空になり、残っているクッキーを摘みながら携帯をいじっていた輝は楓のお詫びを軽くあしらった。


「あ、あら?そう……まあ後で食べればいいわね!ってそれ美味しいのよね〜私も昔っから大好きで…私も一つ貰うわね…ん〜おいし〜あ、コーヒー飲みたくなっちゃった…れん〜お願いして良いかしら〜?」

「全く…少しは反省とか…まぁ良いか。輝くんもお代わりいる?直ぐに淹れるよ?」

「あ…じゃあお願いします。それにしても…南条さんあんたここの司令じゃないんすか?迷うって…まぁそんな事より…話してもらいますよ…M.G.S.Cについて…それと俺への報告について」


輝は先程までの気の抜けた表情から、一変して真剣な顔になった。その顔をみて(恐っ!)と思った楓だったが、言ったらまた拗ねそうなので言わない事にした。


「…そうね…まずは名前の由来から説明して行きましょうか。Magical.Girl.Support.Committee…直訳すると魔法少女支援委員会よ。ちなみに私が司令で創設者でもあるのよ?そこの所よろしくね」

(創設者って…えぇこの人が?大丈夫かこの組織…)「へ、へぇ〜そうなんすか〜…あ、コーヒーありがとうございます…わざわざすいませんね。大体どれくらい前からある組織なんすかね?」

「そうねぇ…まず初めて魔獣が出現したのが15年前…そして魔法少女の変身システムが出来たのがそれから5年後…あ、ちなみにそのシステムを開発したのは、今コーヒー淹れてくれたお姉さんよ。何時もありがとね…って熱っ‼︎ちょっと熱くしすぎじゃないの⁉︎」

「ふふっ…ちょっとしたお仕置きだよ。そしてそのシステムで変身して戦ってたのが、そこに居る猫舌のお姉さんだよ」

「えっ⁉︎南条さんも魔法少女だったんですか⁉︎ってかそんな前から魔獣って居たんですね…全然知りませんでしたよ…」

「ふーっふーっ…ずずっ…あちっまだ駄目ね…そうよ先輩よ〜?もっと敬いなさい。何でか知らないけどさっきから露骨に私への態度が違うんだから…後、なんかその南条さんって堅苦しいわね…楓でいいわよ。ほら読んでみて?か・え・でって」

「魔法少女の時ってどんな感じだったんすか?南条さん」

「無視ですか、そうですか…まぁ良いわ…うーん…まぁ普通よ、普通。ありふれた魔法少女だったわよ…ね、蓮?」


そう言って楓は、助けを求めるような目で蓮を見た。


「普通…ね…それよりM.G.S.Cの創設の事を聞きたいんだよね?」

(露骨に話題そらしたな…あんま聞かれたくないのかもな…)「そうっすね…それじゃ東条さん、お願いします」

「ん、了解。…何だ聞いてたよりも、ずっと礼儀正しいね。もっと荒々しい子かと思ってたんだけど…あと、私の事は蓮で良いよ。他の子達もそう呼んでるから」

「わかりました…蓮さん。なんか照れますね…あんま年上の女の人とこうして話すのって無かったんで…」

「……何だろう…泣いて良いかな?」

[すぐ泣くのは貴女の悪い癖ですよ?南条さん?]

「うわーん!どいつもこいつも馬鹿にしてー!私は司令なんだぞー!このばーか!」


フレイにまで弄られた楓は泣きながら研究室から出て行った。


「もうフレイ?あんまり楓をいじめちゃ駄目だよ?ああ見えてすぐ泣いちゃうんだから…輝くんも、もうちょっとだけ優しくしてあげて…ね?」

[申し訳ありませんお母様…少しマスターにつられてしまいました…]

「すんません…俺も反応が面白くてつい…まぁあの人も俺の事お嬢ちゃんとか何とか言ってたんでちょっとした仕返しです。…そろそろ本題に戻りましょうか」

「うん、そうだね。10年前に私が開発したシステムは今見たいに小型のデバイスでは無くて、大型の機械を使って変身していたんだ。これは女性なら誰でも変身出来るけど身体への負担が強くてね…その5年後に楓は身体を壊しちゃったんだ…」

「身体を壊す…?あんだけ元気そうなのに…それに女性しか使えないってのは、何でですか?」

「そうだね…基本的に男性の肉体は魔力を行使するのに向いてないみたいなんだ。何故なのかはまだ研究中でね…仮説でも良ければ話すけど…聞きたい?」

「うーん…今はいい…ですかね。それはまたの機会にお願いします。それより南条さんが身体を壊した後なんですよね…多分この組織が出来たのって…」

「うん、まぁ話の流れからすればその通りだよ。でも5年前の楓はね、それでも戦おうとした…私以外にいないからって…候補自体は何人か居た…でも魔法少女は楓一人だった…当然だよね。命懸けの戦いだから…誰もやりたがらなかった…私もやろうとしたけど、魔力が低すぎてね…結局、戦える人がいなくって…どうしようも無くなって行った…」

「…なんで南条さんはそうまでして戦っていたんでしょうかね…」

「それはね…人が大好きだからだよ」


そう言いながら再び入ってきたのは、情けない顔をしながら出て行ったポンコツお姉さんでは無かった。M.G.S.Cの司令、南条楓であった。


「私はね…変かもしれないけど、人が大好きだった。どんな人でも傷付く所なんて見たく無かった。たとえそれが悪人だったとしても…救いたかった。守りたかったの…本当なら今だって私が戦いたい…貴方にだって戦って欲しくない…でも、それは出来ない…だから作ったの。魔法少女を…人を助ける為の組織を……お父さんに頼んで…」

「え、お父さん?もしかして南条さんの父さんって…」

「うん、すっごく偉い人だよ。南条椿さん…聞いた事ないかな?」

「えーっと…すんません。あんまそういうのは詳しく無くて…」

「知らなくても無理ないわ。お父さんを知っているの、極一部のトップぐらいだし…ただかなりの発言力を持っててね。頼んだらすぐ作ってくれてね。組織の名前はお前が決めろってだけ言われて、M.G.Sって所まではすんなり決まったんだけど、このままじゃ魔法少女支援ってなんか変じゃない?でなんかいいの無いかな〜て調べて委員会とか、なんと無く良いなって。で、委員会は英語でCommittee…それで頭文字を並べてM.G.S.C

ってわけ。わかった?」


かなり長々と説明された輝は、ようやくわかってきたこの組織について突っ込んだ。


「いや委員会ってなんと無くかよ!ってか長えよ!5年前に南条さんが怪我したから代わりの魔法少女を探すのとその支援、運用を目的とした組織…ほらっ!これだけで良いじゃねぇか!大体わかるわ!いや色々聞いたのも悪かったけどよ…いやそれにしても長えわ…」

「な、何よそれ〜⁉︎れ、蓮だって長く説明してたじゃ無いっ!なんで私にだけそんなに強く言うのよ〜⁉︎私だってねぇ〜わかりやすい様に一生懸命に説明したんだからね〜!…れ〜ん〜女男がいぢめるよ〜!」

「楓ったら少し落ち着いて…輝くんも、言い過ぎだよ?いくら年上でも、女の子には優しくしないと…ね?」


そう言って蓮は楓をなだめながら、輝を優しく注意した。そんな蓮に対し輝は(この人にはちゃんと従おう)と思ったのであった。


「ほら、楓?輝くんに大事な報告があるんでしょ?M.G.S.Cの事はちゃんと伝わったから、今度はその説明をしてあげて…ほら鼻水拭いて…よし…綺麗になったね」

「ぐすっ…れんありがとね……こほんっ、それでは…火野輝くん。取り敢えずこの書類をよく見て頂戴」


楓は、再び真面目な顔に戻り、一枚の書類を輝に渡した。


「これは…契約書?」

「ええ、私達にとって輝くんの才能は、正直に言って喉から手が出るほど欲しいわ。でもそれと、輝くん自身の人生は何も関係がない…魔獣との戦いは死の危険と隣り合わせよ。報酬はきちんと用意するけど、それでも割に合わないかもしれない。それでもやってくれると言うのなら…」

「ここにサインすりゃ良いんすよね?あ、なんか書く物あります?ちょっとペンとか忘れちゃって…」

「あ…これ使って、まだ新品だから書きやすいと思うよ」

「…慎重に考えて……って、何普通に進んでるの⁉︎もっと慎重になって…ほら、なんかやりたい事とか…夢とか無いの?」


楓の話を途中で聞くのをやめた輝は、蓮からペンを受け取り、契約書に迷わずにサインしてこう言った。


「さっき言いましたよね…俺には夢が無いって、あれは冗談とかそんなんじゃ無いんですよ。…本当に俺にはなんも無かった。まぁ人よりちっとだけ腕っ節が強かったんですけど、そんなん何の役にも立ちませんからね…そんな俺でも誰かの為に戦えるって…役に立てるって…おまけに金まで貰えるってんなら断る理由なんざこれっぽっちもないっすよ」

「…そう。ただし一つだけ絶対に守って貰いたい事があるわ。それはね…」

[大方、無理するなとか、絶対生きて帰ってこいとかですよね。楓、安心して下さい。私がいる限り、マスターには無茶はさせません。それに美月や雷葉もいます。きっと大丈夫ですよ]

「…何故貴方達は人の話を遮るのかしらね…まあ良いわ。それでは…本日付けでうちの…M.G.S.C所属の魔法少女バーニングハートとして、じゃんじゃん働いてもらうから、覚悟しといてね?輝くん」

「こちらこそ、世話になりますよ…楓さん」


そう言って二人は笑顔を浮かべながら握手を交わした。

ふたりのやり取りを見て、蓮は笑顔になりながら自分のコーヒーに砂糖とミルクを大量に入れて飲み干した。


「はぁ…やっぱり締めはこれだよね…」

「「いや、入れ過ぎだろ‼︎」」


二人の突っ込みがシンクロした。

この日、M.G.S.C所属の魔法少女となった輝はようやく、新しい職に就いたのであった。


蓮の家に泊まる事になった輝は、そこで魔界フィールドとはなにか、何故魔獣は生まれたのかを聞かされる。だがその内容は悲しみに溢れた物であった。

一方、初めての帰宅に緊張する雷葉は久しく忘れていた温もりを思い出すのであった…


次回 「追憶」


これは…一人の哀れな男の物語…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ