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第9話 苦戦

「くっ…ちょっくらしんどいな…」

[マスター、やはり無理を…一時撤退して雷葉と共に行きましょう?]

「あぁ大丈夫、大丈夫…本当にちょっとだからよ…さて、気合入れて行くか…‼︎」


第9話 苦戦


輝は司令室にある転送ゲートに乗って、魔界フィールドに入り込み魔獣を目指して走り始めていた。しかし…


(くそっ…さっきから眠気がひでぇな…こりゃ速攻で終わらせねぇとやべぇな…)


輝は初めての戦闘後の、あの眠気を思い出していた。実はこの眠気こそがバーニングハートの弱点である事に、輝はまだ気付かずにいた。


[マスター…無理をしないで下さい。貴方は今、強い眠気に襲われていませんか?もしそうならば早く本部に戻って、変身を解除して下さい。このままではマスターは…]

「わかっている…良くねぇ事が起こんのはな…でも今更引くわけにはいかねぇんだよ…そぉら…奴さんが見えてきたぜ…!」


そう言って輝は足を止めた。その目には、芋虫のような形の魔獣が映っていた。


「なんだ…大した事無さそうじゃねぇか…さぁて…一撃で終わらせてやるよぉっ‼︎」

[マスター⁉︎まだ相手の分析が完全ではありません!焦らずに慎重に…]

「悪りぃがそんな暇はねぇ‼︎喰らえっ必殺!バァーニングッインパクトォォッ」


フレイの警告を無視して、輝は全力の必殺技を魔獣に撃ち込もうとするのだが…

ヒュンッ


「なっ…ど、どこ行きやがった⁉︎」

[だから焦らないでと…っ‼︎後ろから来ます!回避を!]

「え?っ⁉︎グァァァァァッ」


バーニングインパクトを躱された上に姿も見失ってしまった輝は、背後からの魔獣の突撃により吹っ飛ばされてしまった。


「い、いっつー!野郎…やりやがったな!」

[落ち着いて下さい、マスター。現在の戦力分析では…残念ながらこちらが不利です。恐らくあの魔獣は高速移動が得意と想定されます。そもそも相性が悪い相手の上に体力も万全ではありません。やはり一度撤退しましょう?]

「それは出来ねぇな…」

[何故ですか?何故そこまで頑なに撤退しないのですか?このままではマスターは…]

「だってカッコ悪りぃだろっと」


そう言いながらまたもや突撃してきた魔獣を紙一重で躱した。


[カッコ悪いって…なに馬鹿な事言ってるんですか⁉︎死んでしまうかも知れないんですよ⁉︎つまらない意地で命を賭けてそれで本当に死んでしまったらそれこそカッコ悪いですよ…]

「わーってるっての。俺は死なねぇよ。何故ならお前が付いてるかんな。頼れる相棒が付いてんだ…だから俺はぜってぇ負けねぇ‼︎それによ…俺は男だぜ。男がカッコつけて何が悪いってんだ?」

[全く…その頼れる相棒の言う事ぐらい聞いて下さいよ…今回だけですよ。こんな無茶をするのは、私の面倒なマスターさん‼︎]

「面倒って…良くわかってんじゃねぇかよ‼︎まぁお前も大概だけどなっと!そろそろ対抗策ぐらい見つけたんじゃねぇか?面倒な相棒さんよぉっ‼︎」


再び魔獣の突撃を躱した輝は、フレイに対抗策を訪ねるのであった。


[そうですね…この状況を打破する策は現在3つ程考えました。その内最も確実なのは本部に戻り雷葉と共に来ると言う事ですが…どうせこれは聞かないでしょうからね…]

「わかってんならっ言わなくてっ良いからなっと…あぁもぅ‼︎しつけえなあの野郎‼︎何とか動きを止められりゃこっちのもんなんだがな…」

[はい。それが3つの策の内の1つです。ただ…この策を使うにはタイミングが重要なのですが…]

「タイミングっ?と、どう言う意味だ。それ?」


魔獣からの突撃を躱し、一旦距離を取った輝の質問にフレイは若干早めの口調で答えた。


[まず魔力の制御を私に全て渡して下さい。後は私が魔獣の動きを止めるのでその瞬間に一撃で仕留めて下さい。ただ今のマスターの体力を考慮すると5秒間止めるのが限界です、その5秒で必ず決めて下さい]

「5秒か…充分だな‼︎そんじゃ頼むぜ、相棒‼︎」

[了解!…魔力制御の譲渡を確認…拘束魔法‼︎発動‼︎]


フレイが固有魔法の1つである、拘束魔法を発動し魔獣の動きを止めた‼︎


《ッ⁉︎》

「これでぇ…終わりだぁぁあ‼︎バーニングッインパクトォォォ‼︎‼︎」


その一瞬の隙を逃さずに、輝は再びバーニングインパクトを撃ち込んだ。


《ッ‼︎‼︎⁉︎》


今度は命中した拳は、炎と共に魔獣を跡形もなく消し去った。今度こそ勝負は決まったかに見えたが…


《キシャァァァ‼︎》

《グルルルル…》

「おいおい…何の冗談だ…これはよ…」

[流石にこれは想定外でしたね…まさか]

「[新しい魔獣が出てくるなんて(な)…]」


新しい魔獣…しかも2体も同時に現れた事により、驚きよりも先に諦めが来てしまっていた。それ程までに絶望的な状況だった…


「まさかここまでとはな…なぁフレイ?確か俺の魔力って高いからあいつら取り込もうとしないんだよな?」

[そうですね…取り込みはしないでしょうね…ただ既に脅威と見なされてますから、確実に襲いかかってくるでしょうね…]

「そうか…襲われねぇ内にちっとでも体力を回復させようと思ったんだがな…」

[まだ戦う気でしたか…でもそんなマスターの事、結構好きでしたよ…もっと早く出会いたかったですね…]

「フレイ…俺もお前の事嫌いじゃなかったぜ。本当にもっと早く会いたかったぜ…で、そろそろこのつまんねぇコントは終わりでいいか?どうせ全然諦めてねぇだろ?」

[あらっ、バレちゃいました?実はさっき言っていた3つの策の最後の1つを使おうと思うのですが…いかが致しますか?]

「…答えなんて1つしかねぇだろ?ってかなんて言うのかどーせわかってんなら一々聞くんじゃねぇよ。めんどくせぇ」

[やはりそうですか…私には3つのリミッターがかけられています。それを1つ解除して一気に魔獣を殲滅します。しかし、現状のマスターの体力ではもって1分が限界でしょう…それでも良いですね?]


フレイの最後の確認に輝は、ニヤリと笑いながら答えた。


「いいに決まってんだろ‼︎行くぜ相棒‼︎モードチェンジ‼︎リミッターバースト‼︎」

[了解っ‼︎ファーストリミッター解除‼︎mode-limit burst‼︎]


リミッターバーストの掛け声と共に輝は凄まじい光を発しながら姿を変えていった。

その余りの魔力に2体の魔獣は、怯える様に後ずさった。

光が収まるとそこには先程よりも少し大人びた輝の…バーニングハートの姿があった。


「さぁ…終わりにしようか…」


輝は短く魔獣に言い放つと、一気に魔獣に飛びかかった。


「オラァ!まず一匹ぃっ‼︎」

《ギャァァァァ…》

「そして…もう一匹ぃっ‼︎これでぇ終いだぁ‼︎バースト…ブレイザー‼︎」

《グルルルァァァ…》


2体の魔獣は特に何も出来ないまま、一瞬で消し飛ばされてしまった。


「はぁっどんなも…ん…よ…」


ぱたりっ 再び軽い音を立てて、輝は倒れ込んだ。しかしその表情は達成感で満たされていた。


[お疲れ様です、マスター。恐らくそろそろ迎えがくると思うのですが…あっ!来ましたよマスター!]

「お〜い!アッキー兄ちゃ〜ん‼︎だ、大丈夫⁉︎なんだかすっごくボロボロだけど…」


迎えに来たのは、戦闘が終わった事で変身許可を貰えた雷葉であった。


「あぁ…雷葉か…あんだけカッコ付けたのに悪りぃな…カッコ悪いとこ見せちまって…」

「ん〜ん!そんな事ないっ‼︎すっごくかっこ良かったよ‼︎だからそんな事言わないで‼︎」

[あら?たしかモニターは壊れていた筈ですが…何故こちらの状況が分かっているのですか?]

「ん〜?あ〜それはね〜別に用意した小型のモニターでそっちの戦いを観ていたよ?響子ママもちゃ〜んとアッキー兄ちゃんの大活躍見てたから、きっと褒めてくれるよっ!やったね兄ちゃん‼︎」

「いや…そんな事より…早く…帰ら…せ…て……く…れ」


この言葉を最後に輝は意識を失った。

雷葉は自分より少し大きな少女を背負い、急ぎ足で本部へと足を運び始めた。そんな雷葉はこれから始まる新しい家族との生活に胸を弾ませているのであった。


(安心してね…パパ、ママ…あたしは新しい家族と、楽しく暮らすから…天国から見守っててね…あたしの大好きなパパとママ…)


そう心で思い浮かべた雷葉の背後から、黒い影が誰にも悟られずに抜け落ちていったのであった…

度重なる魔獣との戦いに疲れ果てて沈む輝にようやく休息の時が訪れるのであった。


次回 「休息」


束の間の休息を満喫出来るのだろうか?

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