水が流れて石鹸が溶ける
目の前で舌を伸ばす女は興味を表面に出しながら待ちくたびれたと態度で訴えている。
その興味に舌を重ねて答えた。そこに所謂マシュマロのような柔らかさはなかった。
気が付けばこの女とはよく遊ぶ。容姿はいいが、それ以外に魅力というものはないし好みじゃない。ただ横を見るとこの女がいる。
何時しかその好みではない存在が添い遂げる者を決めるような親の顔を風船に詰め込んだみたいな物になって、蜿々握っていないといけないあの鬱陶しさが放せた時には極々何かが軽くなるだろうというあの名前の付けられない感情と混ざり合って厭悪のような見えないものに染まった。
一方がリードするわけでもなく進展させる気もないまま机の上に2年前に女に渡されたカレンダーを見つけて久々に電子機器で手紙を打とうとする。迷った挙句に書いたものが「最近元気してる?」なんてその歳でアイデンティティのかけらもない文章である。
始まったやりとりが気付けば約束の破棄になる。硬い結びでなかったのが幸いで、蝶々結びのように片方が逃げれば解けるほどのものだった。
やっとの思いで吹いても軽くならない風船に針を通してみる。そのモノは膨らんだ後割れたガムみたいに張り付いてくる。興味本位で中に入っていた飴を舐めてみたものの味と匂いが一致していない料理を食べる残念感に襲われて終わった。