異世界猫又転生記
もふもふ、ニャーニャー
話しをしよう。あれは今から1年……いや、2年前だったか。
気付けば俺は獣に生まれ変わっていた。
何を言ってるかわからねぇ? 安心しろ。最初は俺もそうだった。その内慣れるさ。
前世の俺は、獣に生まれ変わらせられる程の悪事を働いた記憶はない。もちろん、全く悪い事をしたことがないとは言えない。
子供の頃に壁に落書きをしたりとか、立ち入り禁止の場所に入り込んでみたりとか、可愛いらしいものだと思う。壁の落書きは後でバレて、メチャクチャじいちゃんに怒られた。涙と鼻水垂らしながら一生懸命消すはめになったけどさ。
その後も、まぁ、高校生の時にこっそりタバコを吸ったりとか、酒を飲んでみたらとかはあるが。少なくともバイクを盗んで走り出したりとかはしていない。窃盗ダメ、絶対。
大人になってからは飲み会とかで上司の悪口を言いながらクダを巻いたり、コンビニのビニールのかかってる大人の雑誌を隙間から覗こうとしてみたり……わりとみんなやってるんじゃないだろうか。やってるよね? え、やってないの??
ん、ゴホン。ま、まぁ人様から後ろ指を指されるような事はやっていないはずだ。ご近所のおばさま方に「あの方ってお付き合いしてるお相手いないのかしらー? 休みの日なのにいつもお一人で」「まぁ、奥さん知らないの?先日振られたそうよ」とかヒソヒソされた事くらいはあったが。なんで知ってるんだよ?! うるせぇ、ほっとけ。頼むから……ほっといてくれ……。
仕事が忙しい間に同期の別の男に乗り換えられたんだよ、言わせんなチクショウ。鬱だ死のう。あ、1度死んだわ俺。
そんな極普通の俺ではあったのだが、生まれ変わってみたら獣になっていたという。なんでや工藤。
死んだ時の事はハッキリとは覚えていない。
数日前から、仕事中ちょっと変だなー? とは思っていたのが、朝出社しようとしたらいきなり倒れた。えぇぇぇぇ、と呻き声を上げながらも体温計を探し、熱を計ってみた。ら、見事に40度の大台を叩き出していた。
それまで平気なのに表示を見ると一気に弱るの、アレ何でだろうな?
まぁ、そんな訳で会社には休みの連絡を入れ、アパートの大家さんに理由を話して病院までの送り迎えをしてもらった。大家さんが良い人すぎる。時々お惣菜も分けてくれるという、今時却って珍しいんじゃないだろうか?
おっと、話しがズレた。どこまで話したんだったっけな……あぁ、そうだ、送り迎えをしてもらったところまでか。
点滴を受けて、病院から帰って来た俺は薬を飲んでベッドに潜り込んだ。
枕元のサイドテーブルに大家さんが差し入れてくれたスポーツドリンクと、水の入ったペットボトルと桃の果肉入りゼリー、病院で貰った薬を置いて、熱でボーっとしながらただぼんやりと天井を眺めていた。
少しウトウトとしては目を覚まし、を繰り返していたら具合が悪くても生理現象は起こるわけで。つまり催した。ヨロヨロとベッドから立ち上がった俺は、壁に手を付きながらトイレに行こうとして……そのまま倒れ込んだんだ。
頭痛いわ、目が回るわで動けなくなって、そうこうしている内に段々意識も遠くなってきて。ドアを叩く音が最後に聞こえたような気がするけど、アレ大家さんだったのかな。……だとしたら悪い事したな。
海外にいる孫と同い年だからと俺の事をよく気にかけてくれていたから。あのまま死んでたのなら、大家さんが第一発見者になるのかな。最期まで迷惑かけちゃったなぁ……。
あれ、以外とハッキリ覚えてたな?
まぁ、そんな経緯を経て獣になった今の俺がいるわけだ。異世界で猫又になった俺が、な!!
***
俺が猫生を受けたのは2年前の強い風の吹く秋の最中だった。
いや、驚いたぜ?倒れて、気が付いたと思ったらなんかヌットヌトのベットベトになってるんだもんよ。
体の周りでピーピーミャーミャー鳴き声も聞こえてるしさ。猫好きの俺としては鳴き声が耳に入った瞬間、目ん玉かっぴらいたね。くわっっ! てな勢いで。
まぁ、今となってはそれも原因の1つだったんだろうな。
目を開けた俺を見つめてたのは1匹の猫だった。いわゆるキジトラと呼ばれる毛並みの1匹の雌猫。今世の母だ。
それが、そいつも目ん玉かっぴらいて、挙句尻尾まで全力で膨らませてるもんだから「あ、やべ。やらかした」って本能的に思ったわ。
そしたら案の定、同時に産まれた俺の兄弟猫達は甲斐甲斐しく舐めて、綺麗にして、母乳までやってるってのに俺放ったらかし。寒いわ、腹減ったわで「俺にも! 乳、寄ぉ越ぉせー!」って叫ぶも聞こえるのは「ミャー!」だし。
こっちは必死で叫んでるってのに、母猫は見向きもしねぇ。
生まれ変わって早々お陀仏かよ、とヤサグレかけたら母猫が近付いて来てさ。ガブッと首元をくわえるわけよ。よっしゃ、俺の番! って思うじゃん? 残念そんな甘くねぇ。
首元くわえられて、プラーンと吊り下げられた俺を母猫……あんなの母とは認めねぇ。雌猫で十分だろ。
雌猫はトットコ歩き出すと、壊れかけた廃屋を抜け出て、大通りを抜け、でっかい壁に空いた穴をくぐり抜けて森へとやって来た。
もう、嫌な予感しかしねぇよな? 正解だよ。そのまんま首を振って、思いっきり俺を投げ捨てやがった。あの雌猫許さねぇ。
地面に叩きつけられた俺は痛いわ、寒いわでピーピー鳴くわけだ。けど、雌猫はそんな俺に目もくれずさっさと町中に戻っていった。
生まれたばかりの、ろくに動けない仔猫だぞ? 寒空の下放っぽり出して生きていけると思うか? 普通無理に決まってんだろ。
俺もそう思った。結局死ぬのか、と思ったらもう鳴く気力もなくなってさ。茫然としたまま死を待つばかりだった。
どれだけ時間が経ったか、ふと顔を上げた俺を見下ろしてたのは1匹の野良犬で。「あ、食われる」としか思えなかった。寒さと恐怖でピルピル震える俺を見て、その犬は大きく口を開いた……
そのまま気絶してたんだろうな。気付いたらモッフモフした何かに包まれていて、自分もフワフワになっていて。でっかいモフモフと、小さいモフモフ。キューキュークークー聞こえる中で、もぞもぞ動きだした俺に気付いたでかいモフモフが「はよ食らいつけ」と言わんばかりにゴロンと腹をさらけ出した。
例え猫に生まれ変わったとしても、中身人間ぞ? 犬のオッパイなんて飲めるか! と思ってたはずが、気付けばジウジウ音を立てながら貪り飲んでいた。
いーやぁー、美味かったね。あれは。
夏場にキンッキンに冷えたビールを飲んだ時の感動に匹敵すると思うのだよ。ん、何? ビールなんて不味くて飲めない? ハゲろ。ハゲ散らかせ。
***
ゴホン。まぁそんなわけで、俺は生を繋いだってこった。今では体もスラリと伸びて、2本に分かれた尻尾もスラリ……って、そういえばこっちの説明まだだったな。
おぅ。俺は実は猫又だったんだわ。知ってる? 何でだよ。まぁ、いい。
そんな俺の見た目は、うん、控えめに言っても美猫だな。
ツヤツヤとした滑らかな被毛は全身真っ黒で、ピンと長く伸びた尻尾はしなやかで優美。目に至っては青と金のオッドアイだぜ? 恐れ入るだろ??
人間だった頃の俺が、今の俺を見たらお持ち帰り待ったなしだな。その位美猫ってわけだ。まぁ、見た目についての説明はそんなところか。
次に説明するのは俺の能力だな。猫又としての。
んー、これに関しては俺も色々と試行錯誤中なんだけどな。今のところ分かっているのは、尻尾の先に火を灯せる(熱くはない)こと、ちなみにこの火は普通に燃える。
それと、地面に穴を掘ったりも出来るな。
それからいわゆる回復魔法的な、怪我を治すことが出来るってのとか。狩りにまだ慣れていない頃ハイイロがザックリ脇腹をやっちまってさ、全員で舐めたり励ましたりしてたんだけど傷口がホワッと光ったと思ったら綺麗に治ってた。その時はすんげぇ、安心したけどな。
ちなみに、俺の回復魔法ってばハイイロにしか使ってない。理由は分かるだろ?
んで、最後の1つは幻術だ。自分の体にかけて尻尾を1本に見せるってだけなんだけどな。これを使えば、俺だけならば町中で暮らす事も可能だろう。が、それをする気はないね。あのクソ雌猫もいるんだろうし。兄弟達と離れる気はない。
っていうかさ、俺が捨てられたのって猫又だったっていうのも理由の1つだったらしい。これは俺を育ててくれた狼に聞いた。犬だと思ったけど狼だったんだよな。今じゃ母さんと呼んで慕ってる。拾われた時周りにいたちっこい仔狼達もいまじゃすっかりデカくなって
「ぐぇふぅっ!」
「ウォフ、ウォウ!(何してんだよ黒いの! 早く狩り行こうぜ!)」
いきなり吹っ飛ばされたよチクショウ。こいつは俺の乳兄弟、母さんのホントの息子の1頭だな。名前はハイイロ。ネーミングセンスない? 分かりやすくて良いだろ。
見ての通りのデカい図体のわりに中身は子供のままで、ぐふっ!
「グルルゥ! ウォフ!!(早くー! 狩り、狩りー!!)」
だから! 俺の上に乗るんじゃねぇよ、爪刺さってんだよ。潰れるって言ってんだろうが!!
「キシャー!(いってぇわ! ドアホ!!)」
ビシッと爪をお見舞いしてやる。
「キャイン!」
キャインじゃねぇよ。図体差考えろってんだよ。俺潰されるわ。猫又頑丈だから早々死なねぇけど。
「フキュー、ヒャン……(黒いのひでぇ……)」
「ゥルナーォ。フンッ(毎回飛びつくなって言ってんだろうが。自業自得だボケ)」
「ヒャ「ウォフッ(……何してんだ?)」ウォン(だってさー。あ、チャイロー)」
新しく現れたこいつはチャイロ。名前の如く茶色い狼だ。ネーミングセンスに関してはもう触ンジャネ。
「グルゥ(どうせ、ハイイロがまた馬鹿やったんじゃねーの?)」
さらにもう1頭。名前はハイシロ。足先と腹周りとタテガミが白いからな。分かりやすいだろ?
この3頭が俺の兄弟達だ。あん? 本来の兄弟達はって? ハッ、知らね。興味ねーわ。
本当はもう1頭いたんだけどな。全身灰色で、タテガミだけが黒い俺の姉さんだった。……死んだわけじゃねぇよ?単に発情期で知らないオスにくっ付いて行っただけのことだ。うん。俺あのオス嫌い。俺の事食おうとしたし。
ちなみに俺は黒いのって呼ばれてる。体毛真っ黒だしな。呼び始めたのは母さんだから、俺のネーミングセンスの無さは母さん譲りだ。
ブルルッ(うわ、寒気が!?)
「キュン? (何してんだ?黒いの?)」
「マゥ、ンナァー(いや、何でもねぇ。狩り行くのか?)」
感じた寒気は気のせいだ、きっと。忘れよう。
「ウォフー、ゥォフ。キャン(あ、そうだった。黒いの狩り行こう。狩りー)」
「ウォゥ。グル(お前はちょっと落ち着け)」
なんともまぁ、賑やかなことだ。狼3頭と、猫又1匹集まって、話してる内容はコレだぜ? 和むわー。
「ンナーゥ。ニャーン(ま、良いわ。さっさと行こうぜ。何狩るんだ?)」
「ウォウ!(鹿!)」
「ニ(了解)」
「ゥフッ(……黒いの、乗れ)」
グッ、と体を屈めるチャイロの背中に飛び乗ると全員で駆け出した。俺は乗ってるだけだがな。楽とか言うなよ。爪を立てずに掴まるって、結構コツがいるんだぜ?
「ニャウ、ニャー(見つけたぞ。もう少し左だ)」
「ガゥッ!(了解!スピード上げるぜ!)」
「ウォーン!(しっか肉ぅー!)……キャイン!!」
アホめ。無駄に遠吠えなんぞするから痛い目を見るのだ。ハイシログッジョブ。
「グルゥ、ガゥッ(……オレたちは先に行く。回り込め)」
「「ウォウッ(了解!)」」
二手に分かれて駆け出した俺達は鹿の風下へと先回りする。チャイロが藪の中に隠れると、背から降りた俺は木の上に駆け上がった。そのままじっと待つ。
『ウォーン(あとちょっとー)』
遠くからハイイロの声が聞こえてくる。相変わらず気が抜けるなこいつは。静かに、時を待つ。
ピクッ
獣が息を荒げる音と、激しくざわめく藪を駆け抜ける音。地面の振動が段々大きくなってきて……
今だ!
口から泡を吹きながら勢い良く飛び出て来た鹿の、足元の地面が突然ゴッソリとなくなった。
「!?」
急に開いた穴に足を取られた鹿は、もんどりうって倒れこむ。藪から飛び出したチャイロが、角を警戒しながら全力で首元に喰らいつく!
直後、追い付いたハイシロが鹿の尻に。ハイイロが鹿の脚に噛みつこうとして蹴り飛ばされ、転がって行く。(ハァ、あのアホ)
地面に倒れ込んだまま暴れ回ろうとするも、押さえ付けられた体はもう、どうすることもできない。そのまま時間が経つと、鹿はビクッと時々痙攣するばかりとなった。
「ウォーンッ!(鹿獲ったぞー!)」
「ニャ(獲ったぞー、じゃねぇよ。馬鹿たれ)」
「ワフッ(どしたの?黒いの??)」
「ナゥ、ニャー(鼻から血出てんぞお前)」
「フキュ?(あ、ほんとだ。美味い)」
美味いじゃねーよ、アホ。スタッと木から華麗に飛び降りると、2本の尻尾をくねらせてハイイロに近付く。フンフン、と匂いを嗅いで確認してからダリダリ血を垂れ流すチャイロの鼻先にチョンッと鼻先をくっ付ける。
ホワッと一瞬柔らかく光ってすぐに消えた。
「ニャー(治したぞ)」
「グゥ、ワフッ!(美味いの止まった。ありがとー!)」
だから、美味いじゃねーっての。相変わらずのハイイロに脱力していると、完全に鹿の息の根を止めたハイシロとチャイロが立ち上がった。
「ワフッ、グルルゥ。ゥォフ(黒いのありがとな。お前が来てくれると狩りも楽だわ)」
「ウォゥ(……今回も大物だな。食べ甲斐がありそうだ)」
「グルル、ゥナーン(どーいたしまして。俺1匹じゃそもそも狩れないしさ)」
これは事実だ。俺の猫又としての能力はまだまだ弱い。穴掘ったり位ならできるけどな。トドメを刺すのは無理なんだ。将来的には1匹でも狩れるようになりたいけどさ。オトコとしての沽券というか、ロマンというか。
さて、んじゃ帰るかー。
「ゥー、ワフッ!(黒いの、おれに乗れよ!!)」
「ニ(だが断る)」
尻尾ブンブン振りながらこっちを見てくるハイイロを尻目に、チャイロの背中にさっさと飛び乗る。あ、ハイイロの尻尾が垂れ下がった。
「キュー……(チャイロばっかりズルイ……)」
「ウォフッ、グルゥ(諦めろ、お前落とすだろ)」
過去に落とされたしな。ネコが乗ってること忘れんじゃねぇ、とハイイロには言いたい。背中に乗ったと思ったら、その瞬間走り出しやがって。掴まる暇もありゃしねぇ。ポーンって飛んだぞ。ポーンって。
それ以来、俺は絶対にハイイロには乗らないと決心したんだ。ハイシロならたまーに乗るけどな、タテガミモフモフで掴まりやすいし。
けど、チャイロが一番安定感がある。
ギャウギャウ、ガウガウ喚くハイイロとハイシロを放置して
「グフッ(……帰るか)」
だな。
「ギャイン!?((待って!?))」
***
あー、鹿肉美味ー。
汚れた口元をペロペロ。ついでに顔も洗って。うむ。満足。
横を見ると、すでに食べ終わってゆったりと毛繕いをするチャイロと、今まさに食べ終わったハイシロ。
意地汚くガジガジと骨に食らいついているハイイロがいた。尻尾の振りが激しいな、おい。
そういえばさっきから鹿、鹿って言ってるけど。俺はこいつが鹿だとは認めない。パッと見は確かに鹿っぽい。けどな。
脚が6本あって、鋭い牙を持ってて、トドメに角で簡単に木を切り倒すこいつを俺は鹿とは認 め な い 。
ま、美味いから食うけどな。さらに言うとだな、こいつら人間も食うんだぜ? ドン引きだろ。
他にも角の生えたウサギやら、空を飛ぶ狐やら、雷で全身ビリビリさせたリスがいる位だ。この世界が異世界なんだと認めるには十分すぎるほどの衝撃だった。初めて見た時は腰抜かしたわ、ボケ。
当然俺の兄弟達も普通じゃないと思うだろ? 残念。普通なんだな。こいつらは空も飛ばねぇし、火も吹かねぇ。その普通さが心地よい。安心するわー。
本来なら普通の獣の俺達(あ、俺は猫又だったわ)が、今までムシャムシャしてた鹿みたいなデタラメ生物を狩るのは命懸けなんだけどな。そこは俺の猫又魔法でチョチョィっとな。慢心はしない。死にたくねぇし。
ちなみに母さんはここにはいない。あ、やっぱり死んだわけじゃねぇよ? 単に次の子供を産んでそっちの子育てで忙しいんだ。俺達は巣立ちした群れだからな。
ここは俺達1匹と3頭で暮らしてる巣穴だ。さらに言うならこの巣穴は俺が作った。(ドヤァ……)
「グルゥ?(何変な顔してんだ?黒いの)」
「……ニ(何でもねぇ……)」
見られてたのか。恥ずかしい。尻尾がグネグネ動く。
「グー、ワフッ(黒いの遊ぶ?)」
遊ぶ? じゃねぇよ。遊ばねぇよ。
それより俺は眠い。腹いっぱいになったからな。
くぁっ、と大口を開けてアクビをする。あー、目がショボショボするー。
「ウォフ(……眠いのか?)」
「ニ(おぅ)」
そう答えるとチャイロはノッソリと立ち上がって俺の方に歩いて来た。そのまま体を横たえると、鼻先で押して俺を抱え込む。
「グルゥ(……寝ろ)」
おぅ。ねみぃ。もう1度くぁっ、とアクビをすると大人しくチャイロの腹に寄り掛かった。
「ガヴッ、ゥオン(えー、遊ばないのー?)」
「グゥ、ガフ(ワガママ言うな)」
ハイイロを窘めるとハイシロも近寄って来た。俺の横にゴロッと寝転ぶ。お前も寝るの?
「ガウガウ、ワフッ!(えー。何だよ、もー! つまんなーい!!)」
腹を見せながらゴロゴロ転げ回ってたハイイロがこっちに来る。ちょっと待て。こっち来ンナ。
「「ガゥッ!!(汚ねぇ!)」」
「キャインッ!?(ひでぇ!?)」
ブルブルブルッと体を振って、再度近付いて来るハイイロ。……まぁ、仕方ねぇか。ほらこっち来いよ、ってぐぇぇぇぇ……!!
俺を! 踏むんじゃ! ねぇ!!!
「ワフ(あ、ごめん)」
ごめんじゃねぇよ…。グデッとしたままの俺をチャイロが気の毒そうに見ている気がする。いや、助けてくれよ。ハイシロからも呆れてるような気配がする。
何で気がする、とか気配がとか言ってるのかって??
そんなの
俺の上にハイイロがいるからだよ!
あー、もう。どいてくれよー。重テェよー。
とは思うものの。猫の習性からか、この狭さと暖かさが気持ち良い。
グッタリしたまま、段々力が抜けていく。
「グルゥ?(……寝たのか?)」
寝てねーよ。
そうは思いながらも意識が遠くなっていく。スゥッと落ちていく感じがした。
「ウォフッ(……よく寝て早く大きくなれよ)」
もう立派な大人だわ!まさかの天然かよ!?
性懲りもなく2作目でございます。
今度は高機能執筆機能を使ってみましたが、いかがでしたでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございました。
3兄弟+猫又、作者一同揃って心より御礼申し上げます。