第5話 初接触 (逃げれそうにない!)
凛はその場に恐怖で縮こまった。
どう見てもその金属光沢のキラキラと光り輝く楕円形の物体は、UFOである。
「やっぱりUFOだよな。」
「どうしよう・・・逃げなきゃ。」
「でも下手に動いたら殺されるかもしれない。」
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「て言うか、あれ? 腰に力が入らない。」
凛は生まれて初めて腰が抜けた。
力を入れようにもどうにも入らない。
そんな状況で一人苦しんでいる凛だったが、
船の中では・・・
「あいつ何してるの?」
「しゃがみ込んだまま動かなくなっちゃたぞ?」
「リセ わかる?」
「はいロル。この生き物は一旦心拍数が急上昇し、その後に急下降しました。」
「それから推測すると、驚きと恐怖で軽いショック状態に陥ったと考えられます。」
「何なんだもー 情けないな。」
ロルはあまりの冴えない話に軽くうなだれた。
「こいつに頼んで大丈夫かな・・?」
「まあいい!」
ちょっと力が抜けたロルだったが時間も無いし、とりあえず行動を開始した。
「思い切って話しかけよう。」
「そしてお願いしてこっちに来てもらう。」
「リセ。準備はいいか?」
「はいロル。大丈夫です。」
ロルの声を届けるため、凛だけに届くよう意志伝達装置が向けられた。
ハァー フゥーーッ ロルは軽く深呼吸をした。
「あ あ あー ゴホン」
「えー そこにいる生き物くん。ちょっと君にお願いがあるんだが。」
「いいかな?」
「なにもしないから、ちょっとこっちに来てくれる?」
「・・・・・」(ちょっとした感動を味わうロル)
「よしっ!」
「よしっ!!」
「よしっ!!!」
ロルは生まれて初めて他惑星の生物と接触しとても喜んだ。
「さすがです。ロル。」
リセも思わず声を掛けた。
「ありがとう! リセ。」
いろいろとロル達は罪を犯してここまで来たが、『他惑星の生命体とはいかなる理由があっても接触をしてはならない。』という法律だけは守っていた。
他惑星の生物には迷惑を掛けたくないという、ロルの想いがあったからだ。
しかし今回やむを得ず接触したとはいえ、意志を伝えられた事に嬉しさが湧き上がった。
船の中では大活躍のロルがリセと一緒にはしゃいでいた。
それとは逆に、外ではまた腰を抜かしそうになっている凛がいた。
「話しかけられた!!」
「こっちに来てくれだって?」
「UFOに?」
「見つかってたんだ・・・」
「どうしよう。」
凛は動揺しながらも考えた。
大学では工学部を専攻しており、技術に関して少しは詳しいつもりだ。
少なくともモノを見てどんな技術かを感じ取れる素養は持っていた。
「こんなに激しく衝突しているのに、船体に傷が一つも無い。しかも埃すらも付いていないんじゃないか?」
「それにこの光沢の綺麗さと船体形状の美しさは異常だ。」
「んーー。見れば見る程に凄さしか伝わってこない。」
「数マイクロメータの誤差さえも無い完璧なもののように感じる。」
「ていうか、入り口や窓は?」
「どうなってんだ?」
現在の地球上での科学技術では太刀打ち出来ない恐ろしさを感じた。
「どう考えても逃げれそうにない。」
「相手が僕を殺そうと思っているなら、今直ぐにでも簡単に実行出来るだろう。」
少し冷静さを取り戻した凛は、言う通りにした方が助かる確率は高いと考えた。
覚悟を決めた。
「よし。言う通りにしよう。」
凛は震える足を押さえながらクレータの淵に立った。
そしてクレータの中央部に突き刺さっている宇宙船に向かってゆっくりと慎重に降りて行った。