第4話 発見 (功名心がメラメラと)
近場の山での山登りを楽しんでいた青年、名前は西野凛。
急な地響きにビックリしたものの温泉が湧き出したと勘違いし、第一発見者になるため安っぽい功名心がメラメラと湧き上がり脇目も振らず一生懸命に現場へと直行している最中であった。
「この辺だと思ったけど・・・」
「温泉湧いてないな・・・。」
一方、船内ではスクリーンで青年 凛 を確認しているロルとリセ。
「あっ、二足歩行してる。」
「我々の先祖と同じような体格だね。 へぇー」
「思ったよりは知的レベルは高そうだな・・・。」
と、ちょっと興味が出てきたロルはリセに話しかけた。
「はいロル。この惑星が偶然にも我々の星とほぼ同じサイズで似た環境のためだと考えられます。」
「その為に我々とは違う種族の哺乳類型ではありますが、知能を持った進化の過程は結果的に体格等も含め似たのもとなったと思われます。」
「へぇー 出発は全然違っていても、最終的には近いものになっていくなんて面白いね。」
「そうですね。ロル。」
大変な状況の船内ではあったが、ほのぼのとした観察時間が流れていった。
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「ところで、どうしますか。ロル。」
スクリーンを見ながら感心しているロルにリセが話しかけた。
「どうするって・・・どうやって接触していいのかわからないよ。」
「大丈夫ですロセ。この生物の脳はスキャンし確認は済んでいます。」
「言語翻訳は問題ありません。」
「ロル。早く接触を開始して下さい。」
「そんな簡単に言うなよ・・・」
「リセって結構人使い荒いなー」
淡々と指図するリセにちょっと呆れてしまうロルだった。
「リセ。やっぱりこの生物を捕獲して、コントロール出来るように細工した方が早いんじゃない?」
「そうしようよー」
少し怖気づいたロルはリセに提案しました。
「ロル。非常に残念ですが今はこの生物と接触し、こちらからお願いするしか選択肢がありません。」
「なんで?」
「それくらい簡単に出来ないの?」
「ロル。先ほども説明しましたが内部システムの71.2%、さらに現時点では72.6%が機能停止しており殆どの装置が使用することが出来ません。現状維持が精一杯です。」
「状況は刻一刻と悪化しているのです。」
「当然、召使達も起動できない状況です。早くロル自ら頑張ってもらうしかないのです。」
「えーー」
いつもリセに頼り切っていたロルは1000年ぶりくらいに泣きそうになってしまった。
でも楽天的でもあるロルは一瞬で気持ちを切り替えてみせた。
「よし! わかったよリセ。やろう!」
そうとなったらやる気満々のロル。
急に気合を入れた。
「さすがロル。 だてに2000年は生きてないですね。」
「えへへへ。 でもほとんどが長期睡眠装置の中なんだけどね。」
久々に褒められて照れてしまったロルだった。
そんな感じで、ロルとリセが右往左往している間に青年 凛 は船体から遠ざかろうとしていた。
「まずいんじゃないかリセ。あの生物離れていくぞ。」
「どうしますかロル。」
「ほとんどの装置が機能停止している今、単独で船外を離れるのは危険だし自信もない。」
「なるべく近くで済ませたい。」
「あの生物を船の近くに誘き寄せよう。」
「とりあえず、不干渉モードをあの生物のみに対し解除できないか?」
「はいロル。それは可能です。」
「でも船体をさらして大丈夫でしょうか。」
「そうだね。 最悪の事態も考え稼働可能な武器の起動を頼む。」
「残念ながら武器起動は現在出来ませんが、調査用レーザーが使用可能です。」
「あの生物でしたら極小出力でも問題なく処分出来ます。」
「よし。 十分だ。」
「リセ。不干渉モードの解除だ!」
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ブーーン (不干渉モード解除音 凛のみ)
ん・・?
ちょっとした異変に気が付いた凛。
振り返ってみると煙が上がっていた。
「やったー」
「やっぱり温泉が湧いたんだ!」
不干渉モードが解除されたため、衝突による煙や臭いを感じることが出来るようになった凛はそれを温泉だと疑わなかった。
近づくにつれ、辺りの異変がより大きくなった。
凛は土砂が大きく盛り上がったところを見つけた。
「あそこだ!」
「見つけたぞ!!!」
けっこう急な山肌だったが、凛は勢いで滑るように登って行った。
ハァハァハァ
そして盛り上がった土に手を掛け端っこから顔を覗かせた。
「えっっ?」
・
・?
「何だこれーーー!?」
それは隕石が衝突したような大きなクレータだった。
その中心には、金属光沢をした楕円形の大きなものが突き刺さっている。
どう考えてもただ事ではない。
しかも、そのキラキラと光り輝く楕円形のものが地球上のものではない事も直感的に感じた。
温泉などではなかったその異様な光景に凛は恐怖を覚えた。