第36話 青木氏
凛とユナは約束の時間10分前に青木の事務所の前に来た。
「結構立派な事務所だな・・・」
西新宿のオフィス街にある新しいビルの1階で、東京都庁の建屋上部も見える立地で雰囲気も中々良いところだ。
「凛、事務所に入る前に注意事項があります。」
「青木氏へ聞かれたくないことは、心の中で話かけて下さい。」
「凛と私の意識をリンクしましたのでお互い思った事が直接伝わります。」
(どうですか?)
(おっスゲー ユナの声が頭の中で聞こえた!)
(大丈夫みたいね。)
「それと、青木氏は事務所に隠しビデオカメラ3台を稼働させて私たちを待ち構えていますが、どうしますか?」
「えっ!そこまでしてるの?」
「取りあえず気が付かないふりをしておこう。」
「記録データはいつもの感じで消去しといて。」
「じゃあ行こうか」
事務員の女性に挨拶すると奥の会議室に通され、直ぐに青木氏も現れた。
「今日は突然にもかかわらず、お忙しいところお時間を作って頂きありがとうございました。」
「西野と申します。」
「彼女は僕の協力者でユナと言います。」
「ユナと申します。」
「よろしくお願いします。」
「青木と申します。今日はよろしく。」
「しかしユナさんはびっくりするくらい綺麗な子だね。」
「おじさん驚いちゃったよ!」
「俺もあと20歳くらい若けりゃねー ハハハハ」
おやじギャグなのか良く分からないものをいきなりかまされてしまった。
凛とユナが返答に困っていると、青木が話を進めだした。
「冗談はこの辺にして早速本題に入ろうか。」
「相談したい事って何?」
さっきまで目を丸くしてユナばかり見てた単なるエロおやじが、急に真剣な顔付になって聞いてきた。
「あっ はい。」
「今、X国とY国との問題にどう対応したら良いのか当事者として悩んでいます。」
「その事について青木さんにいろいろと教えて頂きたいと思ってここに来ました・・・。」
「・・・・・。」
「まず、悪いけど君たちが本当に今回の当事者だと言うことを私は信じられない。」
「見たところ単なる学生のカップルにしか見えないんだけど。」
「そんな若い君たち二人が大国のY国軍隊を退けたなんて話を誰が信じると思う?」
当然と言えば当然で、青木氏は凛とユナが若過ぎて信じられないでいた。
「この重要な国家間の問題に若い2人が真剣に何とかしたいという考えは素晴らしいし、私個人としても嬉しく思う。」
「ただ、戦争に発展する可能性が大きいこの問題に当事者として悩んでいるなんて思い上がった言動や行動は止めて欲しい。」
「いったい君たちは何がしたいんだ?」
「ただ正義感にかられているだけなのか?」
「それとも本当に何か情報を持っているんだったら話してみてくれ。」
大人の悪いところが出てしまった。
凛とユナがあまりにも若かったのでどうしても信じられず、青木氏は悪戯だと決めつけてしまった。
物事を何でも直ぐに決めつけてしまう事は、とても良くないと青木も良く分かっていたが今は気が付かなかった。
(どうしよう。ユナ)
(今から戦闘機を見せようか。)
(ええ、それしかないみたいね。)
「青木さん」
「信じられないのは僕たちも分かります。」
「だから今から戦闘機をお見せしますので、もう少しお時間を貰えますか。」
「本当に戦闘機があるのか?」
「ええ、あります。」
「そしてその戦闘機確認を通して、様々なテクノロジーをお見せする事になると思います。」
「現在の科学技術では考えられないそのテクノロジーを感じて頂いた後で、僕たちの話の信憑性を判断して頂けたらと思います。」
「・・・わかった。」
凛のあまりの自信のある言動に青木は圧倒されてしまった。
ユナがどこからともなくアイマスクを取り出してきた。
「青木さん このアイマスクを付けて頂けますか。」
「今からご案内致します。」
「ここでアイマスクを?」
「それから青木さん。」
「隠しカメラ3台のデータを消去させて貰いました。」
「申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」
「えっ!?」
アイマスクをした青木が驚いたのと同時に、3人はユナの転送で事務所から消えた。




