第32話 嬉しい提案
昨日の大きな事件が何となく非現実的で夢だったような感覚の凛であったが、ロルの何気ない質問に事の重大さと責任を正面から感じた。
(どうしよう・・・)
「僕としては・・・・」
「おいおい」
「どうしたんだ。リン」
「昨日一日でいきり立った好戦的な周辺国を黙らした男とは思えない狼狽えぶりだな。」
急に挙動が不審になった凛にロルはたまらず茶々を入れてきた。
「それは・・・」
「・・・・・・。」
「ロル。あまりリンを責めては可愛そうですよ。」
「えっ? 責めてるつもりは全然ないんだけど。」
「リン、責めてないよなー」
「えぇ・・・はい・・・」
全く元気が無くなった凛にロルも少し慌てた。
「ちょとー」
「そんな雰囲気やめてよー」
見かねたユナが凛に寄り添ってくれた。
「凛、大丈夫です。」
「ロルは責めてはいませんから安心して下さい。」
そして優しく抱きしめてくれた。
(ユナ・・・)
(ああ・・柔らかくていい匂いだ・・)
「ありがとう。ユナ・・・」
「おい!コラ!」
「やめろやめろ!」
「ユナ。ちょっとリンを甘やかし過ぎじゃないのか。」
そういうところは意外と厳しいロルであった。
「リン。」
「お前に期待して聞いてるんだ。」
「昨日リンが何もしなければ、この国の人達は3万人以上犠牲になってただろう。」
「突然の出来事ではあったが、リンはユナを使いこの危機を回避した。」
「立派だよ」
急にロルが褒めてくれたので凛は今度は驚いてどう返事して良いのか分からなかったが、そのまま黙って話の続きを聞いた。
「多分、私だったら逃げてたと思う。」
「私は自分の星から脱出し、気の遠くなる程の時間をずっと逃亡してきたんだ。」
「どうしてもその習性がこびり付いたようで、直ぐに逃げる事を考えてしまっていたんだ。」
「ずっと自分の判断は正しいと思っていた。」
「そういう考えが駄目だということは当たり前のように理解できるが、長い長い時間が私を狂わしていたようだ。」
「自分で自分にゾッとしたよ。」
自信満々だったロルが弱気な話をしだしたので、驚きそして少しいたたまれなくなってしまった。
「ロル・・」
凛は驚いたがロルの人間的なところを見れて嬉しい気持ちになった。
(ロルを励ましてあげなきゃ。)
「だから私は今日から考えを変える事にした。」
「リン。お前に影響を受けたからだ。」
「だから協力してくれ。」
「まずはこの太陽系に私の拠点を作る。」
凛はまたまた驚いてしまった。
「!!?」
「ということは、宇宙船が完成しても地球にいるの?」
「まっ、そういう事になるかな。」
「拠点拡大と安定のために、太陽系外にもちょくちょく行く事にはなるけどね。」
「やったー」
「ロル。本当に嬉しいよ。」
「俺、一生懸命に協力するよ。」
「リン!」
「そんなに喜んでくれるのか?」
「可愛い奴だなーお前は。」
感激した凛とロルはお互い駆け寄って抱き合いながら喜んだ。
凛がロル達と遭遇してまだわずか7日目の朝であった。
「よーし!」
「取りあえず凛にはもう一人召使いを用意しようじゃないか。」
「今度のも可愛い娘にしてあげよう!」
「お前が活躍してくれたら、まだまだ召使いを褒美として与えるから頼むぞリン!」
「ガハハハハ」
「本当に!!」
「ロル。ありがとー」
2人は大いに盛り上がり喜びを分かち合った。
「ガハハハハ」
「ワハハハハ」
「!!?」
その時、ユナの突き刺さるような視線を凛は背中に感じた。




