第20話 召使いへの戦闘命令 (ワインレッドの戦闘色)
X国の暴走で始まったミサイル危機だったがA国と日本が共同で応戦したことで無事に解決したかに見えた。しかし目まぐるしく変動する国際情勢の中、今度はY国が参戦しミサイル発射準備を始めた。
今やY国は超軍事大国でX国とは比べようもない程の兵器を保有しており、第一次攻撃で一気に片を付けようと2000発もの弾道ミサイルを日本全土に発射させるべく準備に入っていた。
この状況に再度日本政府は大混乱状態となり、A国は自軍の回避行動を取ることで精一杯であった。
目の前に迫りくる大きな危機的状況に対し凛は戸惑い立ち尽くした。
そんな凛にロルはこの危機を回避出来るのはお前だけだと迫った。
呆然としている凛に対し、改めてロルが呼びかけた。
「リン。ユナがお前の命令を待っているぞ。」
「ユナは独自の判断では動かないんだ・・・。」
「しかし、・・・・・・」
凛は迷っていた。
(責任が大きすぎる。)
(しかも俺の命令で、もしかしたら誰かが死んでしまうかもしれない。)
(大体、何で俺がやらなくてはいけないのだろうか?)
(俺がやらなくても誰かが上手くやってくれるんじゃないか?)
(それに、こんなに可憐なユナが戦うなんで出来るのだろうか・・・・)
(・・・・・・・。)
凛は心の中で、たくさんの言い訳を考えた。
本当は自分がやらなければいけない事は良く分かっていたのに。
しかし、何か恐ろしい事を決断するのが怖かったのだ。
何となく、ユナの顔を恐る恐る見た。
「凛。悩まないで。」
「私はあなたとあなたが大切にしているものを守るためなら、いつでも戦います。」
ユナの真っ直ぐで力強い言葉だった。
(ユナ・・・・・)
(大人しい子だとばかり思ってたが、結構強いんだな・・・)
男として少しだけ恥ずかしくなった。
(俺はユナと二人でどんな困難な事も一緒に進んで行くと決めてたじゃないか。)
何だか頭の中がスーッと晴れたような気がした。
その時にリセから報告が入った。
「たった今、2000発の攻撃兵器が発射されました。」
「今回も10分たらずで着弾します。」
この件に介入出来ないロルが不安そうに問いかけた。
「リン・・どうするんだ?」
(そうだ!やるしかないんだ!)
「はい。僕とユナで何とかします!」
決断をした凛に対しロルはとても嬉しく思った。
そして、日本の事をとても気に入っているロルはホッと胸を撫で下ろした。
「良く決心したな。」
「お前とユナの戦いぶりを、ここでゆっくり味噌汁を飲みながら見させてもらうよ。」
今度は凛が力強くユナに命令した。
「ユナ。あのふざけた数のミサイルを全部破壊しに行こう!」
「かしこまりました!」
ユナも即座に返答した。
シューーー・・・
すると戦闘態勢の印なのか、ユナの体にワインレッド色をした幾何学模様が浮かび上がってきた。同時にバリアと思われる球状の光輝く膜に覆われた。
「ユナ!! 俺も一緒に連れててくれ!」
凛もその光輝く膜の中に入った。
「よし行こうか!」
「被害が極力少なくなるように、ミサイルは一番高い所に来たところで破壊しよう。」
「了解です。凛。」
凛とユナは地上から上空約300kmの大気圏外へ飛んだ。
そこは地球が丸く見える程高くて頭上には漆黒の宇宙空間が広がっていた。
そして眼下には、夥しい数のミサイルが大気圏を突破し怒涛の勢いで上昇していた。
「すごい数だ!!」
「ユナ大丈夫か?」
「問題ありません。」
ミサイルはさらに上昇し、今度は弾頭部を下げ始めた。
「ユナ!ここが頂点だ!」
と言うとユナは両手の手のひらをミサイルの方向に向け、一杯に指を広げた。
何かを軽く叫んだと思った瞬間に、無数の光の矢が手から飛び出しミサイルを一気に貫いた。
(おおーーーーーっつ!!)
(すごい!!!!!)
矢の強烈な圧力で2000発ものミサイルが、一斉にグシャリと変形したかと思うと瞬く間に爆裂し大気圏に巨大な炎が走った。
ユナの背中越しに見える非現実的とも思える巨大な爆炎の帯は恐ろし過ぎる程の光景だった。
そしてだんだんと収まる爆炎とは別に、今度は逆にユナの後ろ姿がとても恐ろしいもののように感じた。
それは俺にとって、もう戻ることは絶対に許されない世界に足を踏み入れてしまった事を教えてくれていた。




