第17話 二人っきりの夜 (危機勃発前夜)
自らを地球の哺乳類ヒト科で日本人をベースにした身体に変換したロル。
お供のために宇宙船の人工意識リセも、女性の生身の体に乗り移り現実社会に現れた。
ロルとリセは地球の食事、特に日本での食事をとても気に入ってくれた。
「リン、本当にこの国は素晴らしいよ!」
今日で宇宙船が不時着してから4日間が経っていた。
ロルとリセに付き合い、凛とユナもこの数日間いろいろな料理を食べて食べて食べまくった。
本当に気に入って喜んでいるロルに対し、凛はとても感動した。
「ありがとうございます!」
「ロルとリセがそんなに喜んで満足してくれるとは思いませんでした。」
「僕も本当に嬉しいです!」
「リン。宇宙広しと言えど、こんなに食が美味しい惑星は他にないと思うぞ。」
「それはこの惑星。いや、この国が素晴らしいからだろうな。」
「私は本当にここが気に入った。」
あまりにベタ褒めしてくるロルに少し気恥ずかしくなってきた。
「それは褒め過ぎだと思いますけど・・・」
「そうか? 一つの大きな共同体でこんなにも礼儀正しく、他人の事を繊細に思いやりながら真面目に暮らしている知的生命体はこの広い宇宙においても本当に少ないぞ。」
「私が本国惑星連邦からの指名手配を受けていなければ、君たちを一級宇宙市民として推薦したいぐらいだ。」
「えっ? ロルって指名手配受けてるの?」
そのことに凛は驚いた。
「ああ・・。 いろいろと訳があってな・・」
ロルが絶対に悪い人では無いと思っていた凛であったが、その内容を聞くのは取りあえず遠慮した。
「ロル。そろそろ次の予定を実行しましょうか。」
リセが次の予定を促してきた。
「おおっ!そうだそうだ!」
「それじゃぁ、早速、味噌の買い入れに行こうか?」
(味噌・・??)
「みそって、食べる味噌ですか?」
「そうです。食べる味噌ですよ。」
「この数日間の食事でロルが一番気に入ったのは味噌汁だそうです。」
「凛、味噌は最高だな!」
「お前たちは本当に素晴らしいものを発明したよ!」
「味噌を入れるとどんな食材でも、何でも美味しくなる。」
「いやーー 本当に素晴らしい。」
なんでも、美味しい味噌を求めて日本中を買い歩くらしい。
(ちょっと・・付き合うの厳しそうだな・・・)
お腹いっぱいで少し休みたいとも思っていた凛は別行動を申し出た。
「ああ。リンの好きにしていいぞ。」
「私とリセは明日まで帰って来ないと思うけど、何かあったらユナを通して連絡してくれ。」
「じゃぁな!」
と言うと、多分どこかの味噌蔵に瞬間移動して行ってしまった。
凛はこの4日間ずっとロル達に付き合っていたので、大学にも行っていなかった。
(研究の準備をしないといけないけど、取りあえず今日は研究室に顔だけでも出しとかなくちゃな・・・。)
(あっ!そうだ!)
(研究室のみんなにユナを自慢しちゃおうかな。・・うふっ)
とユナに目をやると凛はいやらしく微笑んだ。
「ユナ。今から僕と一緒に大学の研究室に行ってくれないか。」
「はい。それでは私の側まで来てください。転送します。」
「ああ。頼むね。」
と言って、ユナの肩に手を掛けたと思ったら研究室近くの給湯室に瞬間移動した。
「おおっ。相変わらず凄いね。」
「ユナ。いいかな・・・。」
「取りあえず今日のユナは、僕の幼馴染という設定で話を合わせてくれる?」
「かしこまりました。」
一抹の不安も少し感じつつも、二人で研究室に向かった。
(真面目にやってるかな・・・)
凛はドアの小窓から確認した。
(あれ?なんだ2人だけか。)
凛も入れて全員で10人いるのだが、今日は少なかった。
(まっ 仕方ないか・・)
「お疲れー!」
と元気よく研究室に入った
「おっ!西野(凛)」
「何がお疲れ―だ。」
「数日どうしてたんだ? お前、携帯も電源切ったままだろ?」
同級生の佐藤が驚いた感じで話しかけてきた。
(あっ! いろいろあり過ぎて携帯の事とかすっかり忘れてた。)
「ちよっと休み過ぎじゃないか? 死んだかと思ったぞ!」
「大袈裟な・・ ハハハハ」
すると1学年先輩の中島さんが話しかけてきた。
「西野。おまえ先生に言われた実験の準備を早く進めとかないと間に合わなくなるぞ。」
「はい・・。 すみません・・・。」
凛はいきなり怒られてしまった。
この雰囲気の中でユナを紹介しにくくなった凛だった。
しかし廊下で待たせる訳にもいかないので、思い切って紹介することにした。
「ちょっといろいろありまして・・・」
「幼馴染を紹介したいんですが、いいですか?」
「ん? 幼馴染?」
「別に大丈夫だけど・・・」
「ユナ、部屋に入って来ていいよ。」
凛はユナを研究室に招き入れた。
「おおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
たった2人しかいなかった研究室が大きくざわめいた。
「すげーーーーーーぇ 可愛い!!!!」
「ユナと申します。」
「凛がいつもお世話になってます。」
「どうぞよろしくお願いします。」
「こちらこそお願いします!!!!」
先輩と佐藤が駆け寄ってきた。
2人は何だか一生懸命にユナに話しかけていた。
(おいおいおい。触ったりしたら駄目だからな。)
すると佐藤が俺のところに駆け寄ってきた。
「ちょっとこっち来いよ。」
強引に引っ張られた。
「何?」
「お前、幼馴染ってもしかして彼女なのか?」
「そんなんじゃないけど・・。」
「なんだ、その余裕を感じる喋り方は!」
「本当に彼女じゃないのか?」
「ああ・・・」
「あの子、一人で来てるのか?」
「うん、そうだけど。」
「なに~!!!」
「お前、この数日間ずっと2人で一緒にいたのか?」
「ああ、そうだけど。」
「夜もか?」
「そりゃそうだろう。」
「きさまーーーっ」
「おまえユナちゃんに何か悪い事しただろう!!!」
「してねーよ。」
「ウソつくなよ!!!」
「正直に言えよ!」
「ホントだって!!」
「どうやったらもっと仲良くなれるのか、俺もずーーっと今悩んでんだよ!!」
「・・・もう悩まなくていい!!」
「お前はもうこれ以上ユナちゃんの事は考えるな!!」
「俺に任せてくれ!!!」
「はぁ?」
と言うと佐藤がユナに走って近づいた。
「ユナさん!! 僕と付き合って下さい!!!!」
「一目惚れしました!!」
「お願いします!!!!」
「はぁぁぁぁぁ?」
俺と先輩は呆れてビックリした。
するとユナが即答した。
「ゴメンなさい!」
「ギャハハハハ!!!」
俺と先輩はお腹から笑った!
そして4人で結構楽しく雑談をした。
ユナはこの状況に上手く対応してくれた。
でも、これでいいんだと俺は思った。
きっとこうやって少しずつ少しずつユナと近づいて行くんだと。
「単なる自慢のつもりだったが、先輩と佐藤に助けられたな・・・。」
あっという間に外が暗くなってたので、今日は帰ることにした。
悪いと思ったがさっきユナにこっそり頼んで、実験準備も終わらせてもらった。
(次回からは真面目にやりますから、今回はすみません・・・)
転送してアパートに帰り着いたが、夕食の事をすっかり忘れていた。
(あれ?ロルがいないと召使い達もいなくなっちゃったぞ?)
(夕食頼もうと思ったんだけどな・・・)
ユナに頼めば良いのに、何故か思い付かない凛であった。
仕方ないので、玄関にある戸棚に隠し置いてあったカップラーメンをユナと二人で食べることにした。
たぶん、一番おいしいカップメンだったと思う。
そしてお風呂に入ると、疲れてた事もあり今日は早く寝ることにした。
当然、お風呂はユナとは別々だ。
「おやすみ。ユナ」
「おやすみなさい。凛」
真っ暗になった。
(良く考えたら、今日は初めてユナと二人っきりの夜になるんだ!)
(ユナが直ぐそばにいてくれている・・・。)
(眠れない・・・)
(どうしよう・・・・ いやいや・・・いけないいけない!)
(何考えてるんだ俺は! ううーー・・・・・)
何だかムラムラして、よく眠れない夜を過ごした凛であった。
そしてとうとう明日は、日本最大の危機が勃発する日でもあった。




